表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強未満、最高以上。  作者: りょ
テンプレを壊す遊び方
19/23

018 共鳴する創造、揺らぎ出す定義

「……これが、“お前にはない力”だよ」


魔力が重なった。


創零が展開した〈灯環構造式:エーテルリンク〉は、

自分の魔力を“仲間の操作と同期”させる、いわば魔術的なリンクシステム。


今、シュウユの中には“二人分”の魔力が流れていた。


「うぉ……っ、なんだこれ。身体が軽い……?」


反応速度が上がる。神経伝達が鋭くなる。

思考が冴え、距離感が一層クリアになる。


(これは……完全に“創零との同調”で動けてる)


そのとき――


スキル獲得:

〈共鳴動作:デュアルスティング〉Lv.1

スキル効果:共鳴中、同調対象と連携した高速双打攻撃を使用可能


魔式獲得:

〈転移魔式・断絶斬界〉Lv.1

魔式効果:指定範囲を空間ごと切り離し、内部の対象に“座標誤認”を発生させる


(……二つ同時!?)


それは、ただの火力や回避力ではなかった。

“遊び”の幅を広げる、創造性そのものだった。


「創零、いくぞ!」


「……いっしょに、いこう」


ふたりが同時に走り出す。


零影の目が、かすかに揺れる。

目の前の存在は、もはや「模倣の先」を行こうとしていた。


「警告:行動パターン整合率低下。構造予測、不能。

 対応中枢の指令一致率……31%」


「そこだッ!」


まずは〈デュアルスティング〉。


転移→加速→双打。

だが一撃目は“囮”。シュウユの剣がわざと空を斬るように滑る。


「……クラッチ・引導」


創零の鎖が、斜め後方から飛び出し、零影をそのまま空中へと持ち上げる。


「その位置、固定!」


瞬間、〈断絶斬界〉が発動。

空間にバチバチと雷じみた“亀裂”が走り、零影の周囲を包囲する。


その内部では、上下左右すべての“座標認識”がズレる。


「認識誤差……照準不能。転移ロジック破損。

 再構築要求……失敗。処理遅延!」


「おらぁああっ!」


シュウユが一気に跳躍。


〈空中歩行〉→〈疾翔〉の複合発動。

目に見えぬ足場を連続で踏み、空中で軌道を歪めながら落下――


「“俺のやり方”で、遊ばせてもらうぜっ!!」


剣が、斜めから零影の肩口を穿つ。


爆音と共に、断絶領域が砕けた。


零影の身体が弾け、草地を転がる。


しかし。


「……破損度:12%。制御限界未到。戦闘継続……」


シュウユは苦笑する。


「マジか……このレベルでも、まだ終わらねぇのかよ」


だが、今までとは違っていた。


創零の表情に、迷いがなかった。


シュウユと創零の立ち位置が揃う。


魔力の波が共鳴し、空気が脈打つ。


「次で決めるぞ。俺と、お前で」


「……うん。いまの、ぼくたちなら、いける」


草原が脈動していた。

創零とシュウユの魔力がリンクし、空気の密度そのものが変わっていく。


だが、零影もまた“学習”していた。


「適応完了。共鳴魔力反応に対する遮断処理……開始」


空中に、黒い断層のような魔力の幕が現れる。


(今度は“共鳴干渉”そのものを無効化してくる……!)


「創零、ちょっとイレギュラーな組み方、できるか?」


「……できる。いまのぼくなら、“あわせられる”」


二人が目を合わせる。

構成、展開速度、持続時間――一瞬で互いの魔力パターンを読んで、魔式を組み直す。


「やるぞ。二段目から、“喰らわせる”」


まずは1段目。

シュウユの〈ファントムクラッチ〉が正面に伸びる。

あえて零影に届かない距離で“見せ技”として展開。


次に、創零が同時に〈反響断層〉を発動。

空気と熱、そして音の反射を遮ることで、敵の感知を一瞬遮断。


そこに重ねる。


「偽蛇王転位陣、起動」


〈偽蛇王転位陣〉――

擬似八岐大蛇から取得した特殊魔式。

複数の転移座標を“外から”結び、対象を強制的に座標転移のループに閉じ込める構造式。


「……まずは、“閉じ込める”」


零影の足元に、六角形の転移魔方陣が展開される。

通常の座標移動とは異なり、“逃げ場のない”転移迷路。


「異常座標転移検知。構造環の認識不全……

 誤差修正試行……失敗」


(よし……座標ずらしが効いてる!)


だが零影の対応は早い。


黒い光が身体を包み、幻影のように五体へと“分解転移”しはじめる。


「来るぞ、創零!」


「……まって、まだ。“揃ってない”」


シュウユの視界に、〈偽蛇王転位陣〉の中核点が一瞬チラついた。


(……揃ってない? そうか、“座標”じゃなくて“発動条件”だ)


「五体が、同時に“攻撃モーション”を取った瞬間がトリガー……!」


シュウユがわざと前に出て、剣を構える。


零影の五体が、同時に反応。

それぞれ違う角度からの一斉攻撃。


――その瞬間。


創零が静かに手を上げた。


「いま、“揃った”。」


地面が開く。

五つの影が、突然発生した転移の吸引力に巻き込まれる。


座標が反転し、ループし、方向性の概念を失った空間に落ちる。


シュウユが飛び込んだ。


「行くぞ、“決める”!」


〈疾翔〉+〈空中歩行〉+〈ファントムクラッチ〉を同時展開。

飛びかかるように零影の“本体”を掴み上げ――


「今度は、こっちの“読み”で終わらせる!」


〈短距離転移〉→〈断絶斬界〉→〈双打〉。


剣が光を弾き、魔力が爆ぜる。

斬撃の起点は、完全に“創零と作った空間”だった。


零影のボディに、ひびが走る。


「……構造崩壊率:83%。

 最終選択:自動評価領域へ移行」


彼の姿が霧散しかけたそのとき――


「……おまえの、なまえ。おしえて」


創零の言葉が、空気を切った。


零影は、わずかに動きを止めた。


だが、答えは返ってこなかった。


彼の輪郭が崩れ、空間の底へと沈む。


一切の声も、痕跡も残さず。


静寂が戻る。


「……これで、ほんとに終わったのか……?」


「……わからない。でも、いまは“いない”」


二人の魔力リンクが解け、光の輪が草の上に消えていった。


そして空に、かすかに新しい“色”が浮かび上がった。

お読み頂き誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ