二本松②
「小学生...ですか...」
葵は拍子抜けたのか、かすれるように呟いた。
いままでずっと口を開かなかった将胤がここにきてケタケタ笑いながら口を開いた。
「小学校とは驚愕だぜ。初だな。うん初。でも葵さんは体型なら小学生って言っても通じちゃう...」
不意に将胤の左頬に葵の右ストレートが深々とめり込んだ。太田はちょっと驚きながら二人の間に割って入った。
「お二人とも落ち着いてください。今回は小学校のクラスですので転校生ではありません。特例ですが臨時のクラスチューターとしての赴任となります。こちらの担任の先生の授業サポートをお願いします」
葵はむくれてながら、そういうのは早くいってほしかったですと太田に腹立ちまぎれに少しきつく返した。太田はすみませんと頭を下げた。
3人でどうこうしている内に、教室の扉が開き、担任の先生らしき人がガラガラと出てきた。なんか騒がしいですが入るなら入ってくださいとせかされ、葵と将胤は教室へと先生に導かれた。
―放課後 学園内カフェー
カフェの1テーブルに将胤と葵と太田が座って各々が注文したドリンクを飲んでいた。太田が葵にどうでしたかと声を掛けた。
「あの子達と年齢が何歳か離れてますけど、ああも違うんですね。私も小学生の頃はあんなんだったのかな」
僅か2時限ほど小学生のチューターをしていただけだが葵はへとへとになっていた。
「葵さんも当時はあんな感じではしゃぎまくってたのかもですね。小学生のエネルギーは計り知れないですよ」
太田は笑いながら返した。葵は隣の将胤を見ながら、違和感なく溶け込んでいた人もいましたけどねとうすら笑いを浮かべた。
「葵さん、将胤さん。お二人とも本日は遠いところからお越しになった中、即任務開始していただきありがとうございます。こんな感じでしばらくチューターとして勤務をお願いいたします」
葵はチューターとしての勤務は初ですが頑張りますと返すも太田に質問をした。
「今回のターゲットはあのクラスにいる小学生という事でいいんですよね」
「そうです。この一週間の不穏な事象にはあのクラスの子達がかかわっている節があります」
「子達というと一人ではないんですか」
「ええ、少なくとも4名以上かと」
「4名って相当な数ですよ。聞いたことないです。一体不穏な事象ってなんですか」
「実はですね。深夜にクラスの子達が集まって学園内をさ迷っているですよ。集団で」
「集団でなにをしているのですか」
「敵はどこだとか、逃げろとか、叫びのような嗚咽のような声を出しながら」
「それって、もしかして」
「彼らはいくさを続けているんじゃないかと。ずっと幕末の二本松攻略を夜な夜な続けているんです。当時のままで」
「じゃあ、死んだとか怨霊になってさ迷っているとか感じずにってことですよね」
「そうです。彼らはずっと生き続けているんです。そして毎日を繰り返しているのです」
葵は呆然として手で口を覆った。とっさに将胤が藪から棒に割って入ってきた。
「じゃあ、あれだ。今回はその怨霊たちを捕らえるというより救ってやるって話ってことだな」