大阪人JKがお嬢様言葉に挑戦する
「あんな、お嬢様言葉やってみたいんやけど、どう思う?」
「どうとは?」
妙に真面目な様子で言ってくるものだから、突っ込むべきかの判断に迷う。
とりあえず、様子を見よう。
「うちら、偶にお嬢様言葉出るやろ?」
「出ないが?」
「ほら、『ですわ』とか」
「よしんばあったとして、イントネーションが違うんよ」
「他にも『お花を毟りに行きますわ』とか、言ってるやろ?」
「普段言ってないことが一発でわかる」
それに表現が野蛮すぎる。お嬢様はお嬢様でも、復讐のために剣を手に取るほうのお嬢様だろ、それは。
「じゃあやってみるな」
「今の流れのどこに『じゃあ』が挟まるん?」
「ワタクシは小野妹子でしてよ」
「すっと始めるんじゃ……いや待て、小野妹子はやめろ、遣隋使で頭がいっぱいになる」
小野小町と言いたかったのだろうが、その言い間違いをされると、お嬢様言葉どころじゃなくなる。第一、小野妹子はお嬢様じゃない。
「だったら、こほん、ワタクシの趣味はお花摘みでしてよ」
「やめろ、意味が違うから」
「じゃあ、ワタクシの」
「待て待て、怒涛のボケでツッコめなかったけど、その歪な『私』は何? イントネーションが完全に『ペテン師』じゃん」
しかもこいつ、ツッコまれない限り直そうとしねぇ。
「えー、渾身の『私』だったのに」
「このタイミングで完璧なヤツ出されるの、釈然としない」
それを最初からやってくれれば……いや、そもそも何でお嬢様言葉をしようと思ったんだよ。
「びーてぃーだぶりゅー」
「急にどうした」
「お嬢様って横文字使いこなせるイメージあるやろ」
「確かに、語学に堪能なイメージはあるな。だからこそ、無闇に横文字は使わないし、ましてやBy The Wayの略記をそのまま口に出すイメージはないな」
それに、どういう意図で話を転換したかったのかもわからん。
「あんな、帰国子女の話し方やってみたいんやけど、どう思う?」
「天丼になるからやめろ」