神様からの授かりもの2
そして、待望の女の子が生まれた時の雄叫びは、男の子が産まれた時の比ではなかった。
「ちょっと皆さんお静かにして下さい。こちらは病院ですよ。嬉しいのは分かりますが程々にして下さい。」
いい年した大人が全員看護婦さんに嗜められる始末である。そこまでに神山家にとって、女の子が生まれた事実は大きかったんだ。
父さんは
「神様ありがとうございます。神様の授かりものをありがとうございます。」
父さんは一人っ子ではあるけれども、実は3人兄弟の3番目だったんだそうな。一番上は、流産してしまい。命が失われたそうだ。一番下は、生まれたは良かったものの、生後の肥立ちが悪く、産まれてまもなくなくなったそうだ。
医療設備が整っていない60年も前の話である。その時代は、生まれてきた子は神様からの授かりものだったそうだ。なくなる子供の方が多かった時代特有の言い回しだ。
実を言うと僕の一番下の弟も、時代悪ければ亡くなっていた子供である。出産日よりも一ヶ月も早く産まれてきたんだ。保育器の中に入れられ、しばらくの間は抱くことも許されずずっと保育器の中で、チューブで栄養を取り、小さな命をこの世に抱きとどめていたんだ。
我が弟ながら、どの弟が産まれた時よりも小さくそして儚い命った。でも今では、こうやって大人になって、結婚して子供もいる。いい時代に生まれてこれたと思っている。
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「ヤマト、その手に抱えている子は……。」
「うん、俊次兄さんとこの、愛美ちゃんだよ。あの事故の中で奇跡的に傷ひとつなく助かったんだって。お母さんの愛姉さんが身体を張って守ってくれたんだって。事故の衝撃は愛姉さんが全部吸収してくれたみたい。」
「そうか。不幸中の幸いではあるけど愛美ちゃんには辛いことだな。」
僕と兄弟達は、愛美ちゃんを連れて一旦父と母が住んでいる実家に戻って今後の話をした。
「それで学兄さん。愛美ちゃんはどうしよう?愛さんのご両親は早いうちになくなっていていないし、が兄弟もいない。親戚は神山家だけだ。うちは、2才と3才の子がいて、嫁さんがてんてこまいになっているからちょっと厳しいんだ。他の兄さん達も同じくらいの子ばかりだから、一緒に育つのはいいけど、奥さん達の負担が半端なくなると思う………。だから……。」
「おい、ヤマトそれ以上は言葉にするなよ。仕方ないこととはいえ、それ以外口にするのは神山家長男の僕が許さん。」
「なら.どうするって言うのさ。父さんと母さんはもう60過ぎているし、流石に今から愛美ちゃんを成人するまでは面倒見られないよ。それに成人するまでにいくらかかると思ってるの。大学まで行くとなると、2千万は軽くかかるんだよ。俊次兄さんの保険金があるとはいえ、それでも僅か一千万だよ。父さん、母さんが少ない年金で暮らしていくだけでも大変なのにその上、愛美ちゃんの育児なんて出来ないよ。」