第53話 決戦(3)
紅い燐光を纏ったおじさんは、最早用務員おじさんではないのかも知れない。何故ならこんな用務員おじさんを俺は前世も含めて一度も見たことがないからだ。
二刀の光焔刀を腐ダマにかます、ヤツは今度は合成混魔を身体からモリモリ出してこちらの攻撃を阻害してくる。
それ魔法陣いらないんかい! そのモリモリ魔物を切りまくりながら思う事があった。
そもそもこの『炎心神威』って魔法には碌な思い出がない。何故なら発動条件が俺の瀕死状態である、覚える為に俺は師匠にボコボコにされたからだ。
弟子をボコボコにして笑顔の師匠、マジで頭がおかしいと思った、子供もボコるなんてとんだ変態ですな全く。
封印してやろう云々はなんだったんだって話である、そもそもが師匠がまいた種じゃないか。
この魔法を使った事で、俺の心のトラウマが再発した気分だ。よくよく考えてみると『あれっ俺なんも悪くなくね?』っと言う気持ちがフツフツと湧いてくる。
そんな理不尽への怒りも炎に変えて~~。
「叩き切る!」
『ぐぅああああーーーーーーーーーーッ!』
合成混魔を全て切り倒すと同時に光焔刀の焔で焼き払った、その熱気だけで腐ダマは熱くて苦悶の声を上げる。
「……凄い、ラベル様。 貴方のその力と姿は一体?」
火事場の馬鹿力である、何ともならん事を何とかしょうとおじさんが足掻いてるだけだよ。
おじさんが赤い燐光を纏って身体に赤いラインをドンッとかファンタジー全開で戦う姿とか、酒の席で話題に上げられてたら恥ずかしくて退席したくなるのでどうかこの場で忘れてもらいたい。
しかしリエールだけでなく、ディアナやラビスにシフォンやデュミナとアルティエ。それと地面にうずくまりながらもこちらを見てるエコーやラナミスまでが呆然と赤き用務員おじさんを見ていた。
そしてそれは他のベルフォード学園の教師や学生、それにドニードさんとその部下の船員達までも同じである。
本当にセーフティポイントにいた人々をみんなこっちに転移しやがって腐ダマめ、お陰で魔法を使える事を秘密にしながらダンジョンから生還するってミッションがパーである。
このムカつきも炎に変えとこう、燃え盛る用務員おじさんもまた理不尽な存在なのだよ。
『あっああああ! 死ね死ね死ね死ねしねーーーーーーーーーーーーーーーッ!』
イヤで~す、用務員おじさんは死にません。
「断罪一刀・火刑狂炎」
数度、腐ダマを斬り付ける。その傷跡から炎が吹き出てヤツの身体を這い回りはじめる。
どうせステータスヤバすぎるんだろうと『解析』の魔法すら使わなかった相手の身体がメラメラと燃えだした。
『くっ何故だ、たかが炎で何故熱いと感じる!? 傷跡など一瞬で消える筈なのに、痛みも熱も、人間の攻撃で感じる筈がないのに!』
「そんなん知らん、リエール!」
「はいっ!」
着物メイドが刀を手に腐ダマの首を狙う、それを紙一重で躱して今度は連続で攻撃魔法を放ってきた。接近戦ではこちら側押しはじめた証拠だ。
おそらく超級かそれ以上のレベルのイカレた魔法である。極大の雷や暴風の嵐に氷山みたいな氷の塊や大岩の土石流、とにかくやたらと規模がデカイ魔法ばかりを使って来やがった。
こっちには直ぐ隣リエールがいるし、背後にはみんながいる。仕方ないので用務員おじさんが全て受け持つ事にした。
「………絶火一刀・死火焼尽」
光焔刀を左右で一度ずつ振るう、放たれた炎がヤツの攻撃魔法を全て焼き尽くした。
『有り得ない! このボクの魔法を、幾らこの身体が─』
「お喋りはここまでです」
ベラベラと喋りながも次の魔法の発動をしようとしている腐ダマ、その魔法『転移』だろ。流石にソイツは使わせないよ。
いよいよ敵さんも逃げる事を考えだした、つまりは……ここが攻め時って事さ。




