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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-27 ふたりの子ども②(舞踏会)

 ライアンがヒーラーだと分かった1週間後。目立たぬよう質素なドレスに身を包んだルイーズは、王家主催の舞踏会の会場に向かうところだ。


 今までにないほど緊張しているルイーズの体は、馬車から降り、王宮の入り口までの移動でさえ、おかしな動きをしている。

 エドワードが放っておくと、ルイーズの右手と右足が同時に前へ出ているのだ。額に手を当てるエドワードは全てを悟った。


「ルイーズ、今日は何もせずにもう帰ろう」

 真面目な顔でエドワードが切り出した。


「大丈夫よ、わたし家の中のことを隠すのは自信があるもん。練習だっていっぱいしたし、ねっ!」


「自信があるもんじゃない。駄目だ、ルイーズが変な自信を持っているときほど、危険だと言う記憶しかない」

「はぁぁーっ」


「ルイーズが完璧なのは、誰も把握していない立食のメニューだけだろう。残念だが、余計な時間はない。食べられないのは俺のせいじゃないからな!」


「はぁぁーっ、違うし。わたしのために、陛下が日程を変えてくれたのよ。行かない、なんてできないでしょう」


 外で向かい合って騒いでいる2人へ、パトリシア侯爵令嬢が声を掛けてきた。


「相変わらず仲が良いですね。お2人のお子さんは、男の子だと父から聞きました。ルイーズ様、今度屋敷へ会いに行ってもいいですか?」

 頬笑むパトリシアへ、目をぱちくりさせるルイーズ。

 友達のいないルイーズの発想には、屋敷を訪ねる申し出は、露ほどもない。

 目を泳がせたルイーズは、ハッと何かを(ひらめ)いた。



「あー、うちの子病気なので、会わせるのは……」

 その適当なウソに天を仰ぎ、驚愕(きょうがく)したエドワードは、すぐに正そうとした。

 けれど、それよりも先に()に落ちないパトリシア侯爵令嬢が問い掛けてくる。


「えっ⁉ エドワード様がいらっしゃるのに、どんな病気なのですか?」


 やってしまった、と言う顔をしたルイーズは、すーっとエドワードに視線を向ける。


 そんな視線には目をくれず、真剣な顔をしているエドワードは、パトリシアを真っすぐ見て、穏やかな口調で話し始めた。


「今朝、熱を出していたから、ルイーズは心配しているんだ。幼い子どもはすぐに体調を崩すからルイーズも敏感になっていて。何かある度に、ルイーズが動揺して王宮に駆け込んできても俺が困るから、人に会わせるのは控えたいから無理だな」


「あっ、そうですよね。図々(ずうずう)しいお願いをしてしまい申し訳ありません」


 そう言って、王宮へ向かっていくパトリシア。

 その背中を見送るルイーズは遠い目をして、現実から逃避した。


「あほ! 俺の横で適当に病気だとか言うな。ウソにしか聞こえないだろう」

「今のはね、練習していない質問だったから、ちょっと失敗しただけよ」


アラン()と部屋に置いてきた、ライアンも気になるから早々に帰るぞ」

「分かっているけど、ミトンを贈ってくれた人たちにお礼をいわなきゃ」

「あのなぁ、そんな奴らなんて、ルイーズが礼を伝える必要はないんだぞ」


「そんなの失礼じゃない。ちゃんとお礼をしたいのよ。でも、名前は全部覚えて来たのに、顔は1人も分からないから困っているのよ」


「ああ、そうだろうな。取りあえず1人目が分かれば、あとは何とかなるだろう」


 会場の入り口に着いた2人は、互いに見つめ合うと、「うん」と力強くうなずき、気合いを入れて踏み出した。


「せっかく楽しみにしていたのに、知らない人と会話だけなんて詰まらないわ」


「それが社交界だろう……。いや、無駄な会話は全て割愛だ。俺が代わりに礼をしてやるから、ルイーズは大人しくしているんだな。俺が握手する以上の会話も時間も必要ない」


 ……会場内を静かに歩く2人。

「どうしよう、今日に限って誰も近くに来ないわね」


 当人たちの自覚はないが、緊張のあまりエドワードは鬼のような形相であり、ルイーズの表情はこわばっている。


 それに恐れをなした参加者たちは、2人へ視線を向けるものの、遠巻きに見るのが限界である。


「迂闊に動けないから様子を見ているんだろう。あの侯爵、前回大声で叫んでいたな、ルイーズ、届いたミトンを出せ。待っていられないから、こっちから声を掛けるぞ」


 早々に帰るためにルイーズとエドワードは、待つよりも直接その人物たちへ、声を掛けに向かった。


 ミトンを見せながら声を掛ければ、他に贈った心当たりのある人物がじわじわとルイーズに近づき、熱い視線を向けている。


 ……そのあとは、見つけるのは容易い話だ。

 視線に気付いたエドワードが、ルイーズを小突き合図を送り、次に移る。



「あと、何人残っているんだ……」

「うーん、途中から分からなくなったわ。皆、ミトンの話しじゃなくて、エドワードと握手しても良いかって聞いてくるんだもん。どうなっているのよ、もう疲れたわね。ひゃっ」

 

 言い終わると同時に、ルイーズはエドワードに横抱きにされた。


「その台詞(せりふ)、もっと早く聞きたかった。ほら、あそこにいる父にでも手を振れば帰るって分かるだろう。あの3人に近づけば(ろく)なことにならないからな、このまま立ち去る。明日、陛下が何か言ってくれば、妻が疲れたからだと説明するから問題はない。端からその約束だしな」


 急にエドワードに抱えられたルイーズは、渋い表情をしている。


「えーっ、宰相様にこんなところから手を振ったら怒られるわよ」


「怒られるために呼ばれたら好都合だ。もう2度と変な手紙を陛下から受け取るなと、ついでに伝えればいい。父のことだ、手を振ったところで、どうせ何も言ってこないさ」


 屋敷に残してきたライアンが気になるルイーズは、どうにでもなれと、エドワードに抱きかかえられたまま、満面の笑みで義父に手を振った。


 それに気付いた宰相は、無意識にルイーズへ手を振り返したが、共に笑っているエドワードに気付くと、青くなり、陛下の顔を覗き見た。まだ、開始から1時間も経過していない。


「上出来だ。でも、ルイーズが1人で怒られるのは、かわいそうだし、保険だ」

 横抱きにされているルイーズは、エドワードに触れるようなキスを落とされた。


「かわいい妻が疲れたのに、俺が放っておけるわけないからな」

「ふふっ、早く帰りたいのはエドワードでしょう」

 晴れやかな顔の2人は、会場の出口へと近づいていく。

 


 陛下は、遠くに見えるエドワードが帰ってしまうと察し、側近のブラウン公爵を彼らの元へ走らせた。

 ……けれど、1歩遅かった。




次回、最終話の投稿となります。

幸せな2人を見届けてくれると嬉しいです。

<(_ _)>

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