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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-25 ルイーズの元に届くミトン

応援ありがとうございます。

 祝賀会の翌朝、本来であれば、この時間にエドワードが王宮にいることはない。

 だが、よからぬ空気を感じ取ったエドワードは、早朝から動き出した。


 元々朝は機嫌の悪いエドワードが、陛下に疑いを持って来ているのだ。

 国王の執務室の前で待ち伏せするエドワードは、それはもう不愉快を露骨に表していた。


「うむ、エドワード様か。待っていたぞ」

 そんなエドワードを至って平然と受け入れる陛下は、付き合いの長い彼の考えは、おおよそ、理解しているようだ。


「ふん。朝から呼び鈴を鳴らされては、たまったもんじゃないからな」

 そう言ったエドワードも、陛下のことなら大抵分かっていた。

 気が立つエドワードは、陛下と共に執務室へ入ると、机に向かった陛下の前で仁王立ちをする。

 


 それに動じない強気の姿勢の陛下は、自分の手をすっとエドワードに差し出す。


 ムッとするエドワードは、あからさまな視線を陛下の手に向けた。だが、陛下が差し出す手を、無視することに(てっ)した。


「じじぃ、昨日の夜は何を勝手に公表した。さっさと撤回しろっ!」


 エドワードが机を強く叩いた音が、バンッと大きな音を鳴らし、部屋の中をこだました。

 だが、その音が消えると、次は低い笑い声が部屋に響く。


「ははは、バレていたか。次の舞踏会は、ルイーズ夫人の出産から2か月後へ延期すると発表した。定例の舞踏会は、同行者に制限はないからな。盛大に子どもの誕生を祝ってもらえるだろう」


「全くもって余計な気遣いだ。リンゴの収穫祭はどこへいったんだよ、ったく、伝統を変えるな。俺は、面倒事を引き受ける気は一切ない」


 エドワードは、国王がたった一晩で、これまで100年以上続く歴史を容易に変えたことに白い目を向けている。


 エドワードの言葉に、「うむ」と(うなず)いた陛下は、引き出しから重厚感漂う封書を取り出し、ゆっくりと机の上に置いた。


 自然とそれに視線が向いてしまうエドワード。

 彼が手紙に目をやれば、陛下の蜜蝋(みつろう)が間違いなく押された封がされている。

 そして、陛下は表と裏を返した。


 ……その瞬間。宛先を見て放心状態のエドワードは、陛下を黙って見つめるしかなかった。


「昨日のエドワード様を見て分かった。頑固な本人より、こっちのほうが、話が早いだろう。これから遣いを出してルイーズ夫人を呼び出す。国王の正式な呼び出しに応じなければ、どうなるか分かっているだろう」

 その言葉に絶句しているエドワード。


 昨晩、辛そうにしていたルイーズは、何度も目を覚ましてベッドを抜け出していたのだ。


 そして今朝、隣ですやすやと眠っていたルイーズを、起こさないようにと、静かにそっと部屋を出てきた。それなのに、ルイーズをたたき起こすなど言語道断。


 目を()り上げ怒るエドワードは、陛下の手を何も言わずに(つか)めば、そのまま少しの時間停止した。


 それから陛下の手をパッと突き放したエドワードは、そのまま机の上の親書を奪い取る。

 

「信じられないな……。俺の知らないところで勝手にルイーズを呼び出すな。そんなことをすれば、俺は2度と王宮へ来ることはない」


「悪い悪い、私が悪かった。そこまで怖い顔をしなくてもいいだろう。呼び出すのが駄目なら、親書は宰相に渡せば間違いなく届くだろう。王家の命令の意図は、十分に伝わるはずだ」


「そんなものは俺たちの知ったことではない」

「いや、何故かエドワード様ではなくルイーズ夫人に感謝する貴族たちが、夫人に祝いを伝えたいと言い出し、納得しなかったからな」


「はぁ……なんだよそれ」

「エドワード様が何かしたからだろう、私は知らん」


「ったく。勝手に舞踏会の日程を変えても、妻が疲れたと言えば、そのときは俺の意思で帰るからな」


「まぁ、それは仕方がない」

 エドワードは射抜く様な視線を向けると、何も言わずに踵を返す。


 そして、エドワードが去るのと同時、力任せに閉められた扉が、廊下の端まで大きな音を響かせた。

 



**

 

 屋敷では、ルイーズの元へ赤子用のミトンが次々と届き始め、それを見たマルロは、頬笑ましく思いながら、2人の部屋へ運び込んでいた。



 ルイーズはマルロから箱を受け取り机の上に置けば、眉をハの字にしながら、考えにふけっていた。


 丁度そこに、ガチャリと開いた扉から、目覚めたときには既にいなかったエドワードが帰ってきたのだ。


「あっ、ルイーズは起きて大丈夫なのか」

「今は、なんだかスッキリしているわ。でも良かった、今日は夜まで会えないかと思っていたのよ」

 ルイーズの明るい声に、ひとまず安堵の顔を見せるエドワードは、彼女の横に並んだ。

 

「ねぇねぇ、ヒーラー様の体質って、子どもにも受け継がれるの?」


「っなわけあるか、それなら父だってヒーラーだろう。俺の直系でも、知り得る範囲にヒーラーはいない。他のヒーラー2人の家系もそうだ。生まれてくる子どもが男子であっても関係はない。まぁ、世間の勝手な勘違いだな」


「ふーん、そうなのね。そうだ、陛下はお元気だったかしら」


「じじぃのことは、気にするな。大抵どうでもいいことで俺を頼っているからな。そういえばルイーズに会いたがっていたぞ」

「わたしには会う用事がないもん、結構だって言ってくれたかしら」


「当然。俺にルイーズの気持ちが分からないはずはないだろう。なんだか次の舞踏会、ルイーズは絶対参加と陛下の命令があった」


「はぁぁーっ、どう考えても正当な欠席理由があるでしょう」

 眉間にしわを寄せたルイーズは、エドワードの肩を掴み、ゆさゆさと揺すっている。


「これ……、陛下からルイーズ宛ての親書だ。舞踏会はルイーズが参加出来るまで延期するって。俺には命令できないから、俺の一番弱いところを突いてきた……」

 エドワードは、申し訳なさげにルイーズへ封筒を渡した。


「わたし、もしかして、エドワードを困らせているのかしら」

「まさか。ルイーズとの舞踏会は退屈しないからな」


「えー、わたしはエドワードと一緒だと、ご馳走(ちそう)を食べる時間じゃないから、舞踏会なんて詰まらないわ」


「問題はそこか? そもそも、あの舞踏会をそんな時間だと思って参加しているのは、ルイーズしかいないだろう、くくっ」


 陛下と宰相の思惑を全く気にしていないルイーズのことを、エドワードはくつくつと笑っていた。

 楽し気なエドワードは、少し前までの、いら立ちも、すっかり忘れているようだ。


「えー、じゃあ、リンゴを入れるのはやめてって陛下に頼んでみようかしら。だって、リンゴの収穫祭じゃないんだから良いわよね。そうしたら2人で食べられるもの、きっと楽しいわよ」


「それなら、じじぃに手紙を書けばいい。俺が届けてやる」

「そうね、そうするわ。それくらいお願いしても、バチは当たらないわよね」

 やる気満々に拳を握り、目をキラキラと輝かせるルイーズ。それを見たエドワードは、頬に力を入れ、笑いをこらえるのに必死だ。


「ルイーズは本当にかわいいな」


「ちょっと、どこがかわいいのかしら?」

「俺のために、あほな手紙で国王まで動かすところだよ」

「はぁーっ、あほじゃないもん。見てよこの顔、真剣でしょう」

「くくっ、ほんとだな。それは俺のことが好きなのか? それともご馳走のためなのか」


「それはもちろん、……ちょっと無理」

 

 そう言って、ルイーズは洗面所へ駆け込んでいった。

 そのルイーズの背中を目で追うと、額に手をやり、うつむくエドワード。


「いつになったら俺のこと、許してくれるんだ。俺が要らないことを伝えたから……。もう……ずっと聞かせてもらえないんだろうか」

 エドワードのかすれた独り言が、2人の部屋で静かに消えた。



 定例の王家主催の舞踏会は、日程未定で延期となり、令嬢たちに人気だった、伝統のリンゴの酒は廃止されることが決まった。

 ……けれど、不満を言う者は誰もいない。



最後までよろしくお願いします(◡‿◡ฺ✿)

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