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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-24 最愛の妻が、1番大切だから②

 ルイーズの様子にハラハラしているエドワードは、貴族たちの列が、ようやっと半分くらいの長さに減ったのを確認した。


 これまで挨拶した人物の中には、案の定、胡散臭(うさんくさ)い理由を並べる治療希望者がチラホラ紛れていた。

 ……けれど、つべこべ言う時間も惜しいエドワードは、「俺に治療する理由はないが、妻からチョコの礼をするように頼まれたからな」と、言いながら勢いよく彼らの手を握った。


 そして、エドワードがルイーズを見れば、微笑み返してくるのだが、少し前から言葉数が減ってきていた。

 それが気になり顔が強張るエドワードは、もう限界だった。

 自分の我慢がならないと、髪をかき上げたエドワードは、言葉より先に体が動く。


「ひゃっ」

 と声を上げたルイーズは、突然、エドワードに横抱きにされ、すっぽりと彼の腕に包まれた。


 顔色の悪いルイーズは、何も言えずにエドワードの服をぎゅぅっと(つか)んでしがみつく。


「悪いが、ルイーズが疲れているからもう帰る」

 エドワードは、列の一番前の人物へ、淡々とそれを伝えたのだ。

 それを聞いてぽかんと口を開ける人物は、嫌とも、分かったとも、言えずに聞き入れるしかなかった。


 そんな反応を見る前から、動きだすエドワード。 


 エドワードの背中が見えた列の後ろからは、「今日を心待ちにしていたのに!」と、泣き出す声が響く。


 だが、そんなことはどうでもいい。

 エドワードは耳を貸す気は一切なく、心配そうにルイーズの顔をひたすらのぞき込む。


 忍耐強いルイーズが無言になっているのだから、エドワードには焦りしかない。

(陛下と宰相の茶番に付き合ってやったんだ。これ以上、俺の知ったことではない)


 そう思うエドワードは、脇目も振らずに陛下の元へ向かう。

 そして到着した先には、楽し気な様子の陛下がおり、エドワードが、すっと視線を動かした先には、彼の父もいる。

 

 真剣な顔つきのエドワードは、交渉の余地を与えるつもりはないと、強い口調で国王に告げる。


「俺の終業時間だ、これで帰る」

「いやいや、まだこれから夜も長いだろう」

「ルイーズが、ドレスを苦しそうにしているから、もう無理だ」


「……まあ分かった。今日は2人の祝いの日だし、折れるとするか。次は例年の舞踏会か……」

「それは、欠席と決めている」


「いやいや、それだとエドワード様に会えると信じている者たちが納得しない、分かるだろう」

「無理だ。そのころはルイーズの出産と重なる。無駄なことでルイーズから離れる気はないからな」

 それを聞いた陛下は、しばしの間固まった。


 エドワードにしがみついているルイーズは、自分を最優先にしてくれるエドワードの言葉に、顔をぽっと赤くしていた。


 そして、おもむろに会話を続けた国王陛下。


「ならば、王宮の舞踏会の時期を変更するか」

「「はぁぁーっ」」

 流石にそれはおかしい。

 そう思ったルイーズは、エドワードと重なるように声を上げていた。


「あの舞踏会はリンゴの収穫祭が起源なんだろう。その時期に勝手にやってくれ。もう、俺たちはあの酒を振舞う舞踏会に参加する気はないからな」


「それなら、舞踏会の理由を別のものに変えればいいだけだ。ルイーズ夫人を労うでも、エドワード様に願いを述べるでも何でもいいな。ホイットマン子爵家の当主から、働き手が増えたと礼状が届いていたし、年に1回くらいいいだろう」


 鼻まで赤い陛下は、十分過ぎるほど酒が入り、気が大きくなっているようだ。


 このやり直しの舞踏会が、想定以上の大反響だった。

 エドワードから治療を受けた20人くらいが、陛下と宰相の元へ深々と礼を述べにくる。

 そのせいで国王陛下は、すっかり気分を良くしていたようだ。


「俺はよくないっ! あー、ここで話をしても(らち)があかない。ルイーズの体調が悪いんだ。早く楽にしてやりたいから、その話は後日だ」


 取りつく島のないエドワードの様子に、今、それを決めることを陛下は諦めた。

 だが、エドワードが帰ってしまう前にと、陛下は静かに手を差し出した。


 陛下の手の動きを見取ったエドワードは、意図を察する。


 ……だが、応じる様子はない。

 横抱きにしているルイーズの体に、エドワードの手が触れていた。

 躊躇(ためら)う隙もなくエドワードは答える。


「無理だ。ルイーズを抱えているから今はヒールを使えない。明日、訪ねるからそのときだ」


 エドワードの主張など、自分を床に立たせれば何の問題もない話である。自分の耳を疑うルイーズは、国王陛下の頼みを前にしても、聞き入れない彼の優先順位に驚きを隠せずにいた。



***


 帰りの馬車、ルイーズはエドワードの体に身をゆだねると、温かい彼の腕で、しっかりと抱きしめられていた。


「どうして陛下の前で、わたしを降ろさなかったの、そうすれば……」

「俺の中の1番がルイーズだから当然だ。俺の子を身ごもって体調が悪い妻のほかに、気にするものはない。一応、それが許される立場にあるからな」


「……、そんなに甘やかされたら、わたし、エドワードのこと……」

 話していたルイーズは、声を詰まらせる。


「気にするな。それに、元気に小さな心臓が動いているのが、はっきり分かったのを早く伝えたかった。ルイーズが辛そうなのに、俺は何度かにやけてしまって、……情けない」


「楽しそうだなぁ、とは思ったけど、そんなことだったの? でも良かったぁ。ほらね、やっぱり言ったとおりでしょう、エドワードにのぞかれると便利だもの」

 目を閉じたルイーズは、エドワードの胸に顔をうずめた。


「そう言ってくれるのは、ルイーズくらいだろうな」

「そうかなぁ。でもどうしよう。淑女らしくないって、明日、お母様から怒られないかしら」


「俺たちの結婚を遅らせた張本人が、今更怒るわけないだろう。だが……今から謝っておく。あの場にいた2人……。今ごろ会場で、とんでもないことを勝手に決めているはずだ。それで……、明日からはルイーズの元に、チョコレート以外のものが届くかもしれない」


「……ははは」

 乾いた笑い声を上げたルイーズは、既に今日の時点で妊娠が知れ渡るのだと察した。


「なあルイーズ。あ……いや、何でもない……」

 寂しそうな顔で何かを言いかけては、続けるのをやめたエドワード。


「どうかしたの?」


「俺が余計なことを伝えたせいだ。明日なんとかするから」

 弱々しくエドワードがつぶやくと、2人の会話を終えた。

 

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