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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-21 不穏な空気④

 エドワードにとって全く予期していなかった、「結婚はやめましょう」の言葉。


 その場に崩れ落ちかけるほどに青ざめ、判断が遅れたエドワードだが、扉に向かうルイーズの背中を慌てて抱き止めた。


「待て。その理由では、ルイーズを手放せるわけがないだろう」


「……そう、また……嫌われたのね」


「何を言ってるんだよ。ルイーズ以外に(いと)しい人はいない。これから他に現れても、一番はルイーズって決まっているからな」


「信じられない……。エドワードは愛人を作る前提なの……。ひどいわ、わたしなら、何も言わない……。ううん、言えないと思っているのね……」

 絞り出すような震える声。言い終えたルイーズは思わず唇をかむ。


「違うから、落ち着けって」

 突飛な方向へ話しが進み、ルイーズと対面するように向かい合ったエドワードは、ルイーズの肩を揺すった。


「無理よ。姉だって……何年も昔に、わたしに甘いもの禁じてから、色んなことが始まったもの。ここでも、そうなると分かって、見て見ぬふりで結婚すれば後悔するもの」


「っ……」

 エドワードの目には、今ではすっかり健康的で、出会ったころの面影のないルイーズが映っていた。


 そのせいで、エドワードの中で薄れかけていた、かつてのルイーズの境遇。

 自分の気遣いが裏目に出たことが分り、言葉を詰まらせた。


 そして、ゆっくりと申しわけなさ気に話し始める。


「悪い……、おなかに子どもがいるときに、チョコレートは食べ過ぎると良くないと聞いたからそれで、つい止めただけだ」


「ふーん、そう……。はぁぁーっ! ……って、どういうことっ!」


 初めは他人事のように、無表情で話を聞いていたルイーズだった。

 ……けれど、エドワードの言うおなかは、自分の体を指すと気付いた途端、ルイーズは目を丸くした。


「前に言っただろう。俺は(のぞ)く気はなくても、素手で触れれば、相手の体の外側も内側も分かる。いつだったか、その前の夜は感じなかったのに、朝になったらルイーズの中に何かがあって、少し考えてから意味が分かった」


「どうして言ってくれないのよ」


「俺が先に知っているのは順番が逆だろうし、まだ、心臓の拍動もはっきり感じる前だからルイーズには黙っていた」


「じゃあ、エドワードは、ほかに好きな人ができたんじゃないの?」

 首をかしげるルイーズは、きょとんとしている。


「っな、わけあるかよ……、俺はルイーズしか心が()かれないし興味はない。だけどルイーズが、俺みたいな特異な男が怖くて嫌になれば……、そのときは止めないが」


 真面目な顔でエドワードは話しているが、目をぱちくりさせるルイーズは、全く腑に落ちていない。

 まさかの妊娠。……当人である自分には、一切の自覚がないのだ。



「おなかに子どもって、全くそんな感じがしないわ。普通、分かるものじゃないの」


「間違いない……。そのうち何か感じるんだろう。ルイーズが自分で気付くのを待っていたんだが、話がややこしくなって、申し訳ない」


 エドワードは、頭をポリポリかいて、決まりが悪そうにしている。

 ここ最近のエドワードが、うれしそうにしていた理由が2人の子ども。

 ルイーズは、それなら早く言うべきだ。悩んでいた時間を返して欲しいとエドワードを責め立てる。


「もう! わたしに思ったまんまのことを伝えるのがエドワードでしょう。突然、隠しごとをするから、おかしくなるのよ」


「ルイーズが俺のことをデリカシーがないって言うからだろう。自分の口から俺に報告したいんじゃないかと思って、気を遣っただけだ」

 強気な口調で、はっきりと言い切ったエドワード。


 それを聞いたルイーズは、エドワードの不可解な態度の理由が分かりホッとし、張り詰めていた力が抜けた。


「なんだ……良かった。エドワードのために何もできないから、嫌われたのかと思った……」


 エドワードは全身でルイーズを包み込み、優しくそっと抱きしめる。


「俺の気持ちを疑うなんて、ルイーズは馬鹿だな……。俺とルイーズは一緒だろう」


「……何が」


「2人が入れ替わっていたときに、大嫌いだった俺を、『むしろ好き』になってくれたのは、宰相の息子でも、ヒーラ-でもない、何も持っていないルイーズになった、俺のことだろう」


 ルイーズは、こくんと小さくうなずいた。


「侯爵家の名前とヒーラーの2つがなければ、正直、俺なんかのどこが良いのか分からない。……逆に、何でも見透かす嫌な男じゃないかと、不安でたまらないんだ」


「自信たっぷりのエドワードが?」


「ああ。ルイーズは俺の肩書に興味はないだろう。俺の名前に群がっていた令嬢たちとは違うから。ルイーズに嫌われないために、俺だって必死なんだよ」


「エドワードでも、弱気なことを言うのね」


「まあな。ルイーズが好き過ぎてどうしようもないからな。よし、これで俺がルイーズに口走る不安もなくなったし、ルイーズが泣くほど俺を欲しがるから、もう一度ベッドへ戻るか。後で母には俺から伝えるから気にするな、時間はたっぷりある」


「はぁぁーっ! それどころじゃないくらい混乱しているのに、何する気よ、聞き捨てならないわ」

「くくっ、分かってる。横にいてやるから、ルイーズは眠った方がいいって話だ」


 真っ赤になったルイーズは、エドワードに抱きかかえられ、再び寝室へ消えていった。


 まだ、悪阻(つわり)のないルイーズは、何となく他人事のように、自分の妊娠を知らされた。


 いよいよ、2人の結婚式……。



いよいよ結婚式まで辿りつきました……。

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