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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-17 ルイーズに届くチョコレート

 舞踏会の翌朝。エドワードの腕の中で、ルイーズはゆっくりと目を開けた。


 ルイーズの隣で眠るエドワードは、まだ、深い眠りの中にいるようだ。

 その寝顔を見て、昨夜の熱い時間を思い出すルイーズは、頬を赤くしている。


 美しい鼻筋に、艶っぽく伏せた(まぶた)。わずかに笑みを浮かべるような口元。

 ルイーズは、「この人は、眠る顔さえ心をきゅんとさせるのか」と、しげしげと見入っている。


 覗かせる上半身。彼の寝姿に見惚(みほ)れ過ぎて、高まる鼓動に、きゅぅぅっと、うずく子宮。


 昨夜の幸せな時間に浸るルイーズは、次第に耳まで真っ赤になっていく。


 従者たちが既に働いているのだろう、部屋の外で、人が往来する音が微かに響いてきた。



 浴室へ向かおうとするルイーズは、絡みつくエドワードの腕を()がすと、彼の腕の中からスルリと抜け出た。

 ……だが、その直後、エドワードの腕が再びルイーズを逃がす気はないと、絡まってくる。

 

 ……もしかして既に目覚めているのだろうか。そう思って声を掛けてみる。

「ねぇエドワード、起きるよ」


「……」

 優しく声を掛けてみたものの、エドワードからの返答はない。


 彼はまだ寝ている……。

 そう思うルイーズは、もう一度同じことを繰り返した結果、直ぐにエドワードに捕獲されている。


 カチンときたルイーズは、エドワードをゆさゆさと揺すりながら、彼の名前を大きな声で呼び始めた。


「何なのよ。起きているんでしょう。ベッドから出るわよ、エドワード」


「くくっ、一生懸命動いてかわいいから、しばらく見ているつもりだった。まあ、午前中はルイーズとの時間って決まっていたし、ここから出る理由はないだろう」


 うれしそうな顔のエドワードが、ルイーズの髪をなでると、彼の唇がルイーズの首筋に近付いた。


「ちょ、ちょっと待って。朝から駄目よ。ふしだらだって、周りから笑われるわ」


「誰に笑われるのか知らないが、そんなこと、ふたりの秘密にしておけば誰にもバレないだろう」


「駄目よ。今日1日中わたしが、エドワードを思い出しちゃうもの、起きるわ」


 ふっと笑うエドワードが、ルイーズの下唇を甘噛みすると、彼女の耳元で優しくささやく。


「俺……、誰かと目覚める朝は、自分には無縁だと諦めていたから」

「……ぅ」

「こんな幸せな朝は初めてなんだ。だから、もっとこうしていたかったけど仕方ない。ルイーズを離す前に、キス……してもいいだろうか」


 そう言って甘えるエドワードに、ルイーズは小さくうなずいた。


 ……結果。

 火照りきった体のルイーズとエドワードは、王宮へ向かう時間がギリギリに迫っていた。


** 


 そんな2人は、王宮の中をぎゃぁーぎゃぁーと、騒ぎながらエドワードの部屋へ向かっている。


「エドワードのせいで、朝ごはんを食べ損ねたじゃない。明日からは駄目だからね」

「明日のことまで約束はしない。素直過ぎるルイーズが、かわいいから、おそらく無理だ。部屋に着いたら何か食べられるから機嫌を直せ」


 エドワードに宥められるルイーズが、エドワードの部屋へ入ると、机の上に小さな箱が山積みになっているのが目についた。


 それがいつものことなのか、そうではないのか判断のつかないルイーズは、静かにエドワードの顔を見つめる。


 すると、エドワードは、箱の山を睨みつけるように見ており、その表情を見たルイーズは、この光景が異常なことだと察知した。

 箱の山へゆっくりと近づく2人。


「ねぇ、この箱は何?」

「分からん……。だが、俺の部屋にあるのに、どの箱も『ルイーズ様へ』となっているな……」

「なら、遠慮は要らないわね、開けてみるわ……」


 ルイーズは、エドワードの了解を得て直ぐに、そのうちの1つを確認した。


 重厚な箱の蓋を開ければ、光沢のある美しいチョコレートが、行儀よく箱に収まっているのだ。


 目を見開いて驚きつつも、ルイーズはにんまりと、既にそれをつまみ上げようとしている。


「ルイーズ! むやみに食べるなよ。何が入っているか分からないだろう」

「えーっ、駄目なの……」


 チョコレートを見て、ゴクリと唾をのんだルイーズの喜びは、慌てたエドワードにかき消されてしまう。


 顔を引きつらせるエドワードは、その箱を不信そうな様子で手に取った。

 そしてハッとした彼は、次から次へと箱の送り主の名前を確認し、ある心当たりに辿(たど)り着けば、額に手を当て考え込んでいる。


「どうかしたの?」

「この箱の送り主は、以前、救護室で治療を求めていた貴族たちだな。受付係が書き溜めている記録に残っていたはずだ。昨日のモーガンを見て、次に会うときまでにルイーズに恩を売りたいんだろう。チョコレート自体に問題はないはずだが、念のため、俺が隣にいるときしか食べるのはやめておけ」


「わたしに恩なんて売っても、どうにもならないのに。どうしてエドワードへ贈らないのかしら?」


「俺に恩を売れるなら、そもそも正規の料金を払って治療を受けているだろう」

「えー、どういうこと」


「ルイーズと違って、付け入る隙なんてものは、俺にはないからな」

「はぁーっ。失礼しちゃうわね」


「何が失礼だ。カーティスのチョコを、どうせ大喜びしてたんだろう」

 ことある度に出てくるカーティスに、拗ねたエドワードは唇を尖らせていた。


「どうだったかな、喜んでいたのはアランだもん」


「俺に隠れて持ってきたハンカチに、クマの刺繍を描くなよ。ハンカチはそのために、わざと手間をかけているんだからな」


「えー、そんな……。じゃあ、チョコを食べるしかないかぁ」

 そう言ったルイーズは、チョコレートの山を見て目を輝かせている。


「ルイーズ、頼むからチョコレートぐらいで騙されるなよ」

「もちろんよ。こう見えてもしっかりしているんだから」


「……俺とのデート、宝石店よりも、チョコのケーキを一番うれしそうだったくせに、大丈夫か」


「まぁ、そういうこともあるわよ。じゃぁ、今は食べても良いわね。きっと、今回は美味しいはずだもの」

 そう言って、チョコレートをぱくっと食べ、ルイーズは顔を(ほころ)ばす。そんな彼女を、エドワードは複雑そうな表情で見守る。

 

 少しして、ビリング侯爵が食事を運んできたが、エドワードから顔を背けており、妙によそよそしいのだ。


「ビリング侯爵、昨日の舞踏会、あれから何があった?」

「いえ、特に変わったことはありませんよ」


(っなわけがないだろう。あの後に変わったことが無い方がよっぽどおかしいだろう)


 額に汗を流すエドワードは、ルイーズとの食事が終わるや否や立ち上がった。


「ルイーズ、悪い。俺、じじぃの所へ行ってくる」

「分かったわ」

「あっ……ちょっと待って。エドワードがいないとチョコレートは……」


 ルイーズがそう言ったときには、エドワードは既に、走っていなくなった後だった。


 暇つぶしもなくなり、独りポツンと残されたルイーズが、チョコレートの箱を改めて見てみると、手紙が付いているのに気がついた。


 添えられた手紙を読み込むルイーズは、祝福の言葉ばかりの内容に、ほっこり温かい気持ちになり、何度も読み返している。



 社交に無縁なルイーズにとって、()びを売るべき対象を、正確に理解した貴族たちの心情など、知る由もない。


規約上、ギリギリな描写がどこか分からず、苦戦しました…。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 気がついたら朝チュンという、日本形式の素晴らしさよ… 読み飛ばしたかと思ったけど「R指定」を思い出したw 少女漫画にもある手法ですから(`・ω・´)キリッ
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