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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-11 大波乱の舞踏会⑧

応援ありがとうございます(◡‿◡ฺ✿)


 ミラベルには目もくれず、ルイーズばかりを見ているエドワード。

 その様子を目の当たりにした衛兵は、この件にエドワードは関係ないと判断し、宰相へ問題の品を手渡した。


 すると、それを受け取った宰相の体が大きく飛び跳ねた。

 ミラベルから外された、大きなサファイアが付いたネックレス。

 それは、宰相が一目見ても、ハッと身じろぐほどの高価な物であり、間違いなく侯爵家の家紋が入っている。


 もちろん、スペンサー侯爵家の当主には全く見覚えはない。

 おそらくエドワードだろうと、当主は息子に、じーっと強い視線を向けている。


 本当のところ宰相は、「ミラベルへ、さっさと何か言え」と物申したい。

 だがしかし、少し前にエドワード様から仕事中だと言われたばかりである。

 ルイーズが絡むと様子が変わるエドワードへ、安易なことを言わないように、口を(つぐ)むことに徹する。


 静まり返るこの場で、ミラベルが口を開いた。

「ルイーズ、それはあなたが貸してくれたものでしょう。忘れたの?」

 首を左右に振るルイーズは、震えながら答えた。

「……知らない」


 ムッとするミラベルは、エドワードに向かって訴え始めた。

「エドワード様。それはルイーズが貸してくれたものです。その子は狡いから、2か月前に受け取った宝石が届いていないって言えば、また買ってもらえると思っているんです」


「そんなのウソよ。わたしは本当に知らないもの」


 慌てたルイーズは、ミラベルとエドワードの会話を遮るように訴えた。


「お前は馬鹿か。俺が騙せると思っているのか?」


 ルイーズが気になって仕方ないエドワード。彼の顔はルイーズへ向けたままであるが、思ったことを口にした。


「エドワード……、わたし……、知らないもの」

 か細い声で、ルイーズは震えながら答えると、はしゃぐミラベルが、したり顔を見せる。


「どちらが正しいか分かってくれたんですね。私、エドワード様が、卑怯なルイーズに騙されているのを心配していたんです」


「はぁーっ? お前は何を言っているんだ。ルイーズのどこが卑怯なんだよ。こんなに信用できる存在は他にいないだろう。俺にはルイーズの横以上に安心して癒される場所はないんだ。余計なことをルイーズへ聞かせるな」


「えっ、癒されるって」

 ルイーズを嘲笑っていたミラベルだが、エドワードがルイーズへ心酔しているのを感じ取ると、途端に表情が消え失せ、真顔に変わる。


「エドワード、でも……、わたし、本当に知らなくて。でも、姉が侯爵家の屋敷まで詰め掛けて、迷惑をかけたみたいで、ごめんなさい」


 ルイーズが訳の分からない事を言いだし、ミラベルに衝撃が走る。

「ちっ、違います、エドワード様! ねぇルイーズ、これは屋敷に届いた直後に貸してくれたものでしょう。あなたもあの日、『ネックレスに、イヤリング、指輪を買ってもらった』と、言っていたでしょう。それを借りているだけじゃない」

(そうだって言いなさいよ。あんたはわたしの妹でしょう。とぼけて「知らない」なんて言うんじゃないわよ)



「救いようのない馬鹿だな。妹がお前の代わりに謝っているのに、まだウソをつくのか……。ルイーズが、くだらないことで悩むだろうから俺が我慢しようと思ったが、無理だな」


 いら立ちを抑えながら、エドワードは低い声で話し始めるが、容赦する気配のない表情に、ミラベルはごくりと唾を飲む。


「そのネックレスは、2か月前にルイーズへ贈るために購入したものだ。それに、今、ミラベル嬢が身に着けている物、全てに見覚えがある。だが何故か、ルイーズが手にする前に忽然(こつぜん)と消えた」


 ネックレスを持ったままの当主は、だんまりを続けるが、突然、エドワードがネックレスについて証言を始めた。


「ということは、ミラベル嬢の装飾品は盗品で間違いないのでしょうか?」

 衛兵が事実を念押しする。


「ああ、そうだ。宝飾店の店主も俺が買ったことを覚えている。盗まれたから違うものを買いにきたと、先日話したばかりだから覚えているだろう。被害届は明日にでも提出するつもりだ」



「エドワード様、そんな……。ルイーズは確かに貸してくれたんです。証拠もないのに、あんまりです」


「まだ言うのか? 証拠も何も、俺には手に取るように分かるからな」

「ですから、ルイーズは忘れているんです」


「しつこい。ミラベル嬢が今着ているそのドレス。袖に我が家の家紋が一目では分からないように刺繍(ししゅう)されている。俺が明日取りに行く予定だったんだ。ルイーズの足が隠れる長さに仕立てたのに、誰が鋏を入れたんだ? お前が勝手に盗んで着ているのは明白だろう。この件、スペンサー侯爵家の当主はどう思う?」


「……ああ。ルイーズ嬢の黄色のドレスは家紋なしで、姉のドレスに刺繍されており、おかしいと思っていた。明日以降に着る予定で用意したものを、本人を差し置いて着用するとはな……。我が家を侮辱している。そうなれば、ルイーズ嬢が宝石を受け取る前に盗んだというのも納得できる話だ。牢に入れておけ」


 宰相の指示で、ミラベルは舞踏会の会場から連れ出されていった。

 その途中、衛兵に引かれ大興奮するミラベルが、ルイーズへ向け「ウソ言うんじゃないわよっ!」と大声で叫び散らした。


 ……そのせいで、会場中の視線が今、ルイーズに集まっている。

 盗人の妹である自分は、(きら)びやかな会場に、あまりにも相応(ふさわ)しくない。


 そう悩むルイーズは、彼と全く釣り合わないのが恥ずかしくなり、すっかり意気消沈している。


 だがエドワードは、こんなことは百も承知でルイーズへ求婚した。


 ルイーズは自分に相応しくないと、散々思い悩んでいたエドワードが、今更、気にするわけもない。

 その上今となっては、素の自分でいられる癒しの存在で、ルイーズの代わりはどこにもいないのだ。もう失う訳にはいかない。


 そんな彼は、会場中を見渡し顔を引きつらせた。


 それより、まずいのは……他にいる。

 初めから警戒していた人物が、ミラベルが騒いだせいで、完全にこちらを見ているのだ。エドワードは、冷たい視線を向ける人物と目が合い、こっちに向かって動きだしたのが見えてしまった。

 危機を感じるエドワードは、固まって動かないルイーズをぐいぐいと引っ張っている。


「ルイーズ、姉のことを気にしていないで、俺たちは帰るぞ」


「う、うん……」

 返事はしたものの、ルイーズはまだ悩んでいた。

(わたしエドワードと一緒にいていいの……。どうしてエドワードは何も気にしていないの?)


 そう思ったときだった。

 真っ赤になって激昂する1人の人物が、つかつかと目の前に現れたのだ。


 その人物が、この舞踏会に大波乱を巻き起こすことになる。



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