4-11 大波乱の舞踏会⑧
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ミラベルには目もくれず、ルイーズばかりを見ているエドワード。
その様子を目の当たりにした衛兵は、この件にエドワードは関係ないと判断し、宰相へ問題の品を手渡した。
すると、それを受け取った宰相の体が大きく飛び跳ねた。
ミラベルから外された、大きなサファイアが付いたネックレス。
それは、宰相が一目見ても、ハッと身じろぐほどの高価な物であり、間違いなく侯爵家の家紋が入っている。
もちろん、スペンサー侯爵家の当主には全く見覚えはない。
おそらくエドワードだろうと、当主は息子に、じーっと強い視線を向けている。
本当のところ宰相は、「ミラベルへ、さっさと何か言え」と物申したい。
だがしかし、少し前にエドワード様から仕事中だと言われたばかりである。
ルイーズが絡むと様子が変わるエドワードへ、安易なことを言わないように、口を噤むことに徹する。
静まり返るこの場で、ミラベルが口を開いた。
「ルイーズ、それはあなたが貸してくれたものでしょう。忘れたの?」
首を左右に振るルイーズは、震えながら答えた。
「……知らない」
ムッとするミラベルは、エドワードに向かって訴え始めた。
「エドワード様。それはルイーズが貸してくれたものです。その子は狡いから、2か月前に受け取った宝石が届いていないって言えば、また買ってもらえると思っているんです」
「そんなのウソよ。わたしは本当に知らないもの」
慌てたルイーズは、ミラベルとエドワードの会話を遮るように訴えた。
「お前は馬鹿か。俺が騙せると思っているのか?」
ルイーズが気になって仕方ないエドワード。彼の顔はルイーズへ向けたままであるが、思ったことを口にした。
「エドワード……、わたし……、知らないもの」
か細い声で、ルイーズは震えながら答えると、はしゃぐミラベルが、したり顔を見せる。
「どちらが正しいか分かってくれたんですね。私、エドワード様が、卑怯なルイーズに騙されているのを心配していたんです」
「はぁーっ? お前は何を言っているんだ。ルイーズのどこが卑怯なんだよ。こんなに信用できる存在は他にいないだろう。俺にはルイーズの横以上に安心して癒される場所はないんだ。余計なことをルイーズへ聞かせるな」
「えっ、癒されるって」
ルイーズを嘲笑っていたミラベルだが、エドワードがルイーズへ心酔しているのを感じ取ると、途端に表情が消え失せ、真顔に変わる。
「エドワード、でも……、わたし、本当に知らなくて。でも、姉が侯爵家の屋敷まで詰め掛けて、迷惑をかけたみたいで、ごめんなさい」
ルイーズが訳の分からない事を言いだし、ミラベルに衝撃が走る。
「ちっ、違います、エドワード様! ねぇルイーズ、これは屋敷に届いた直後に貸してくれたものでしょう。あなたもあの日、『ネックレスに、イヤリング、指輪を買ってもらった』と、言っていたでしょう。それを借りているだけじゃない」
(そうだって言いなさいよ。あんたはわたしの妹でしょう。とぼけて「知らない」なんて言うんじゃないわよ)
「救いようのない馬鹿だな。妹がお前の代わりに謝っているのに、まだウソをつくのか……。ルイーズが、くだらないことで悩むだろうから俺が我慢しようと思ったが、無理だな」
いら立ちを抑えながら、エドワードは低い声で話し始めるが、容赦する気配のない表情に、ミラベルはごくりと唾を飲む。
「そのネックレスは、2か月前にルイーズへ贈るために購入したものだ。それに、今、ミラベル嬢が身に着けている物、全てに見覚えがある。だが何故か、ルイーズが手にする前に忽然と消えた」
ネックレスを持ったままの当主は、だんまりを続けるが、突然、エドワードがネックレスについて証言を始めた。
「ということは、ミラベル嬢の装飾品は盗品で間違いないのでしょうか?」
衛兵が事実を念押しする。
「ああ、そうだ。宝飾店の店主も俺が買ったことを覚えている。盗まれたから違うものを買いにきたと、先日話したばかりだから覚えているだろう。被害届は明日にでも提出するつもりだ」
「エドワード様、そんな……。ルイーズは確かに貸してくれたんです。証拠もないのに、あんまりです」
「まだ言うのか? 証拠も何も、俺には手に取るように分かるからな」
「ですから、ルイーズは忘れているんです」
「しつこい。ミラベル嬢が今着ているそのドレス。袖に我が家の家紋が一目では分からないように刺繍されている。俺が明日取りに行く予定だったんだ。ルイーズの足が隠れる長さに仕立てたのに、誰が鋏を入れたんだ? お前が勝手に盗んで着ているのは明白だろう。この件、スペンサー侯爵家の当主はどう思う?」
「……ああ。ルイーズ嬢の黄色のドレスは家紋なしで、姉のドレスに刺繍されており、おかしいと思っていた。明日以降に着る予定で用意したものを、本人を差し置いて着用するとはな……。我が家を侮辱している。そうなれば、ルイーズ嬢が宝石を受け取る前に盗んだというのも納得できる話だ。牢に入れておけ」
宰相の指示で、ミラベルは舞踏会の会場から連れ出されていった。
その途中、衛兵に引かれ大興奮するミラベルが、ルイーズへ向け「ウソ言うんじゃないわよっ!」と大声で叫び散らした。
……そのせいで、会場中の視線が今、ルイーズに集まっている。
盗人の妹である自分は、煌びやかな会場に、あまりにも相応しくない。
そう悩むルイーズは、彼と全く釣り合わないのが恥ずかしくなり、すっかり意気消沈している。
だがエドワードは、こんなことは百も承知でルイーズへ求婚した。
ルイーズは自分に相応しくないと、散々思い悩んでいたエドワードが、今更、気にするわけもない。
その上今となっては、素の自分でいられる癒しの存在で、ルイーズの代わりはどこにもいないのだ。もう失う訳にはいかない。
そんな彼は、会場中を見渡し顔を引きつらせた。
それより、まずいのは……他にいる。
初めから警戒していた人物が、ミラベルが騒いだせいで、完全にこちらを見ているのだ。エドワードは、冷たい視線を向ける人物と目が合い、こっちに向かって動きだしたのが見えてしまった。
危機を感じるエドワードは、固まって動かないルイーズをぐいぐいと引っ張っている。
「ルイーズ、姉のことを気にしていないで、俺たちは帰るぞ」
「う、うん……」
返事はしたものの、ルイーズはまだ悩んでいた。
(わたしエドワードと一緒にいていいの……。どうしてエドワードは何も気にしていないの?)
そう思ったときだった。
真っ赤になって激昂する1人の人物が、つかつかと目の前に現れたのだ。
その人物が、この舞踏会に大波乱を巻き起こすことになる。
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