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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-10 大波乱の舞踏会⑦

朝から物騒なニュースが飛び込んできましたが、その後の情報も出たため、本日の投稿です。


 ミラベルが、スペンサー侯爵家の宝飾品を盗んだ容疑をかけられる、少し前のことだ。


 ルイーズへ声を掛けるつもりでいたモーガン(元婚約者)だが、ルイーズはエドワードと少しも離れる気配はない。

 先日、救護室でヒーラーへ非礼を働いた自分が、迂闊(うかつ)にエドワードへ近づけば斬首刑。

 ゾッッとしたモーガンは、ルイーズへの接触を泣く泣く諦め会場の外へと向かった。


 救護室でエドワードと出会って以降のモーガンは、醜い左目を見られるのが怖くなり、子爵家で隠れて過ごす日々に、すっかり様変わりしていた。


 変わり映えのしない毎日で、ふと思い出すのが、ルイーズの笑い声や、パタパタとうれしそうに駆け寄ってくる姿である。

 婚約当時、部屋を訪ねれば、ルイーズから安物の生地のハンカチを笑顔で渡されるのが滑稽でしかなく、彼女が健気に自分を慕う姿に、優越感を抱いていた。

 だが、いざ純真な彼女に会えなくなれば、心にぽっかりと穴が空いたような虚しさが押し寄せてくる。


 そして今に思うと、ルイーズと結婚すれば、どんな形であれ、2人で慎ましい平穏な幸せがあった気がしてならない。

 いつも弟を気に掛けるルイーズは、「お金がなくても、2人でいれば幸せだもの」と言っては笑っていたのだから。


 今日の舞踏会、優しいルイーズであれば自分を笑うことなくそばにいてくれる気がして、彼女がくるはずの立食ブースで待っていた。それに、ルイーズも独りで寂しいだろう、と気になってしまう。

 それなのに彼女は、あのエドワードと共に現れたのだ。


 どうしてこうなってしまったのか? 現実が理解できず、その場をしばらく動けずにいたが、ルイーズと、左目の光を失った元凶はミラベルで間違いない。



 肩を落としたモーガンが、ふと遠くを見れば、悠々と闊歩(かっぽ)するミラベルの姿が目に飛び込んだ。


 一言以上文句を付けなければ、感情の落とし所がない。そう思うモーガンが、ミラベルへ近づけば、高級なドレスを着て、大きな宝石の付いたネックレスを着けているではないか。


「おい、ミラベル! そのネックレスはどうしたんだよ。僕の慰謝料として、それを寄越せ」

 感情的になったモーガンは、対面するなり怒鳴りつけた。


 ミラベルのネックレスを売れば、ヒーラーへの報酬を払えると目論(もくろ)んでいた。


 だが、モーガンから不穏な空気を感じたミラベルは、返答より先に彼の左頬へ強烈な平手打ちをし、バシンッと大きな音を響かせた。

「誰が、あんたなんかにあげるのよ。これは私のものよ、ふんっ」


 モーガンが、痛む左頬に手の甲を当てれば血が付いたではないか。

 それは、叩かれたときにミラベルの爪が引っかかり、頬に傷が出来たのだ。

 それを見て更に怒ったモーガンと、ミラベルは会場の外で罵り合いを初めた。


「お前は相変わらず乱暴だな! 少しはルイーズを見習ったらどうだ!」


「なによ! あんたは元から最低男だったけど、その眼帯なによ、ぷっ。もっと酷くなったんじゃない、キャハハ」

 眼帯のモーガンを、大喜びで(けな)すミラベル。


「性格の悪いお前に引っかかったせいで、俺の幸せが……。んっ? お前、その宝石、ルイーズから盗んだのか?」


 モーガンがミラベルの両手を掴んだとき、青いドレスの刺繍(ししゅう)が目に入る。

 それは青いドレスと全く同じ色の糸で、花のモチーフと一緒に描かれたアゲハ(ちょう)の刺繍だ。


 モーガンは、それに見覚えがあった。

 以前、夜会でエドワードへ挨拶したときは、見逃してしまった。

 だが、救護室で外套(がいとう)を適当に羽織るエドワードから胸ぐらを掴まれた際に見えた黒いジャケット。それに、黒い糸の全く目立たない刺繍があり、違和感を覚えたのだから。


 

 

「そんなわけないでしょう。わたしのものよ!」  


 ……そのときだ。


 ミラベルを押さえつけるモーガンは、衛兵から声を掛けられた。


「おい。何をしている」


 すると、モーガンが、活き活きとした顔で報告を始める。ミラベルの宝石が(いわ)く付きであれば、手に入れるのは得策ではないと、モーガンの打算が働いたようだ。



「おっ、丁度いい。僕は彼女の部屋へ何度も行ったが、ミラベルが今着けているもの全てに見覚えがない。あの伯爵家のどこに、こんな高価なものを買える金があったのか疑問だ。おそらく盗品だろう」


「ちょ、ちょっと。そんなわけないでしょう。わたしの物よ」

 激しく動揺するミラベル。

 衛兵は、そのミラベルの様子に疑念を抱く。

 万が一にでも、会場内の事件となれば管理上大きな問題であるため、すかさずミラベルへ駆け寄った。


「ご令嬢。王宮内の出来事ですので、念のため確認致します。……失礼」

 と言って、衛兵が見たネックレスにアゲハ蝶の家紋が彫られている。


 それは間違いなく、最重要区域に部屋を持つ2人のブレザーの刺繍と同じもの。

 それを見た途端に目を丸くした衛兵が、「これはスペンサー侯爵家の家紋が入っていますが、何故、あなたが?」

 そうミラベルへ問えば、「妹のルイーズから借りた」と言いだした。


「さっきは自分のものと言い張っていたのにな。盗んだんだろう。それか、まあ、当主の愛人なら話は別か。お前なら、あり得るな」

 と、モーガンが真顔で言い放つ。


「私が愛人って馬鹿にしてるの! これはルイーズから借りたのよ!」

「家紋入りの高級品、どうしてお前に貸すんだ? おかしいだろう」


 止まらない言い争いに困り果てた衛兵は、スペンサー侯爵家の当主へ声を掛けに行ったわけだった。

 


 スペンサー侯爵家では代々、あらゆるものに家紋を入れており、それは、目利きのできる業者であれば、おおよそ知っていることだ。


 その家紋の入ったものを無暗に売りにいけば、一旦は店舗預かりとなり、スペンサー侯爵家へ一報が入る仕組みとなっている。


 入れ替わり中のエドワードがルイーズへ贈った装飾品。それらは、姉の言動を不審に思ったエドワードが、あえて侯爵家の家紋を入れていたのだ。


**


 そして、今。

 ミラベルは妹から宝石を借りたと言ったが、貸した側のルイーズは「知らない」と答えたのだ。


 だが、どう見てもスペンサー侯爵家の宝石であることは間違いない。


 衛兵はどうすべきかと、宰相とエドワードを交互に見る。


 この件の一部始終を知っているのは、エドワードだけで、毎日伯爵家を訪ねていた彼が、「ミラベルに貸した」と言えば話は終わるだろう。



 そのエドワードは、青ざめて震えるルイーズしか見ていない。

「……大丈夫かルイーズ」



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