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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第4章 祝福されるふたり

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4-7 大波乱の舞踏会④

 エドワードへ怪訝(けげん)な顔を向けるレベッカ王女は、ルイーズをちらちらと見ながら口を開く。


「悪いけど、エドワードには不釣り合いに思えるわ。どうしてエドワードは彼女と婚約したの? 何か困っているなら力になるけど」

 エドワードを「心配している」と伝えるために、とても穏やかな口調だ。


「俺が一方的にルイーズに()れて、彼女と一緒にいたいだけですよ。ルイーズ以上に気が合う女性は他にいませんから」


「……なんか、エドワードらしくないわね……。今日のファーストダンスの楽曲が始まるわ、一緒に踊りましょう」

 王女自ら、エドワードにエスコートを求める手を出した。


「申し訳ありません、王女。今日は、ルイーズとしか踊る気はないので遠慮いたします」

 表情をピクリとも変えずに言い終えたエドワード。


 だが王女は、エドワードから断られようが、少しも引く気はないようだ。


 エドワードの婚約者はレベッカ王女だと(もく)されていた。

 ……にもかかわらず、蓋を開ければ全くの別人で、どこの誰かも分からない令嬢だった。


 今も会場中で、その話題で盛り上がっている。

 王女のわたしが笑い者?

 ……そう思う王女は、エドワードに何か言われても、簡単に折れる気はなく、強引にでも連れ出すつもりだ。


 何年も思わせぶりに自分とだけ踊っていたエドワードが、突然浮上した伯爵令嬢へ、一方的に好意を寄せるのは納得がいかない。


 自分は、1年前にエドワードと結婚の話をした上、今日まで返答を聞かされていないのだから。


 王女のプライドが今の状況を許せず、2人の結婚に黒い噂をたてる気なのだ。


 舞踏会のファーストダンスを踊るのは相思相愛のレベッカ王女で、婚約者のルイーズではない。

 なぜなら、この婚約は何か裏があり、王女とエドワードの関係は、ルイーズの企てによって引き裂かれた。

 そんな印象を会場中に与えたい狙いがある。


 エドワードにしがみつくルイーズへ、いら立ちを隠せない王女。

 エドワードからルイーズを引き離そうと、鋭く(にら)みつけ、詰め寄ってきた。

 

「エドワードはこう言っているけど、別にあなたは構わないでしょう。エドワードが一方的にあなたが好きって、どういうことかしら? 彼に何をしたのか知らないけど、エドワードを借りるわよ」


 王女はエドワードの腕を、ルイーズから無理やり、引きはがそうとする。


「いや、駄目です! 今日はエドワードにそんな予定はないのでお断りします。エドワード、違うところへ行こう」

 

 それ以上王女に絡まれないようにと、ルイーズは彼の手を引っ張り、その場から退散した。


 少しすると、エドワードは、けらけらと笑いだした。彼は内心腹を抱えている。

 王族相手に正々堂々と喧嘩(けんか)を売ったルイーズが、おかしくてたまらないのだ。


 自分でさえ、侯爵家の息子でいるときは、角を立てないよう気を遣っている。

 今も、言葉を選びながらレベッカ王女を説得するつもりだった。


 こういう事態もあり得るだろうと、馬車の中で、あれほど何も(しゃべ)るなと(くぎ)を刺したにもかかわらず、王女相手に言い放ったのだから。


 自分を笑うエドワードに、ルイーズは嫌な予感がした。

「ねぇ、わたし何かまずいことをしちゃったかしら?」


「俺は問題ない。これからどこかへ嫁ぐ王女の力なんぞ、ご夫人とご令嬢たちへの影響くらいだろう。ルイーズが今後、茶会や夜会で王女の派閥から(いじ)められる、それだけだ。くくっ」


 それを聞いて、大事をやらかしたことが分りルイーズは青くなる。

 自分は手袋を持ってきていないエドワードを守っただけなのに、とんだ失敗だ。


「えー、エドワードは良くても、わたしには大問題じゃない」


 しゅんとするルイーズの横で、エドワードは遠くにいる国王陛下へ視線を向け、渋い顔をする。


「じゃあ、不満は直接陛下へ言えばいい。あのじじぃが、レベッカ王女に説明をしていなかったんだろう。今の曲の後に一曲踊ってから文句を言いに、じじぃの元へ行くぞ。隣に父もいるし丁度いいだろう」


 ルイーズは衝撃を受け、泣きそうな顔でエドワードを見つめる。


(ちょっと待ってよ……。どうしてエドワードから出てくる人物たちは、大物ばかりなのよ。

 しかも陛下を、「じじぃ」って呼んでいたわよね、エドワードと陛下って、どういう関係なの……。

 わたし、本当にとんでもない人と一緒にいるんじゃない……)



 舞踏会の会場に流れる音楽は、ルイーズが踊ろうとしたときから、テンポの速い曲調に変わっていた。

 ルイーズは至って楽し気に踊っているけれど、その様子をエドワードに笑われている。


「わたし、知らないうちに踊れているわね。もしかして、アランの練習を見ているだけで、素敵な令嬢は踊れるようになるのかしら」


 決してルイーズの踊りがうまくなったわけではない。それを、自信ありげに話している。

 本当のところは、頻回に足がもつれて転びそうなのを、エドワードに支えられているだけだ。


「っなわけあるか! 足がドレスで隠れて出鱈目(でたらめ)なステップが見えないだけで、俺にはバレバレだぞ。よく、そんなあほみたいなことが言えるな」


「違うわ、これは前向きって言うのよ。一度意識し始めたら、ますます分からなくなるでしょう。初心者が、こんな早いテンポで踊れるわけないのに、どうして今なのよ。誰も踊っていないでしょう」


「だからだよ。目立って丁度いいからな」



 音楽が早くなったことで、踊るのを諦めた参加者が多い。だが2人は、楽し気に会話をしながら、悠々と会場の中央で踊っていた。


 おかげ参加者の視線が自然と、ルイーズとエドワードへ集まっている。

 エドワードの狙いは、ここまで順調に進んでいた。


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