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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
第3章 離れたふたり

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3-7 エドワードとルイーズの元婚約者②

本日2話目の投稿です。

前話をお読みでなければ、そちらからお読みください。

「エドワード様。以前の夜会でご挨拶したことがあります」

生憎(あいにく)だが、お前のことは覚えていない」

「ホイットマン子爵家のモーガンです。見てのとおり、傷を負ってしまい、治療をお願いしたくて参りました」


「はっ、お前か!」

 エドワードは表情を一変させると、モーガンを問い詰めるように、彼の左胸あたりの服をガッと(つか)んだ。


「おい、誰にやられた。ルイーズに何をした……。彼女が来ないのは、お前のせいか……」

 青ざめたエドワード。ルイーズの身に、何かあったと怒りの感情を抱き、モーガンの服を握る手が、わなわなと震えている。


「フォスター伯爵家のミラベルにやられました。治療費はそちらから請求してください。お願いします、このままでは左目が」

「なんだ、そうか。それなら知らん」

 ミラベルの名を聞いた途端、エドワードの険しい表情は真顔に戻った。


 既に手袋をはめていないエドワードは、モーガンの顎をつかみ、ぐいっと下げる。


「あー、酷いな……。これは、失明だな。安心しろ、頭の傷はそんなに悪くない」

「失明……。お願いします、それだけはご勘弁ください。どうか治してください」

「報酬は、ヒーラーに依頼する者が払うのは常識だろう。お前の知っているところで、騎士半年分の給金ってところだな。払えなければすぐに立ち去れ」


「そんな薄情なことを言わないでください。どうかお願いします。知らない仲でもないですし」


「決まりは決まり、曲げることは一切ない。仕事以外でヒールは使わない主義だ」

「そこを何とかお願いします」

「無理だな。お前のことは卑劣(ひれつ)な男だと、よく知っている。俺がかわいがっているルイーズに何かしたら、この部屋でヒーラーを侮辱した件でお前を処刑する。嫌なら真面目に働け、馬鹿っ! 分かったなら、さっさとここから出てけ!」


「エドワード様がルイーズを……いや、そんなわけない、あんな……」 

 エドワードは獲物を見つけた獣のように、モーガンに鋭い視線を向ける。


「あんな……? その後に、何と言うつもりだ? あんなにかわいいとでも言うつもりか? ふん、お前に言われる筋合いはない」

「いえ、違います。あんな単じゅ……」


「おい。もし、ルイーズを侮辱するなら、このまま警備に報告だ。良かったな、失明した不便を感じることもなく、首をはねてもらえる。それに、俺がヒーラーだと余計なことを社交界で(しゃべ)られる前に、お前を処分できるな。俺にとっては、そっちの方が好都合だ。よし、そうするか。ビリング侯爵、こいつを警備へ連れて行け」


「いや違います。侮辱なんて滅相もありません。エドワード様のことは誰にも言いませんし、僕はすぐに立ち去りますから。申し訳ありませんでした」

 そう言い切ったモーガンは、入ってきた扉から、走って逃げ去っていった。


「エドワード様、あの男を連れ戻しますか?」

「いや、ほっとけ。あいつが何か喋ったところで、俺が否定すれば誰も信用しないだろう」


「まあ、あまり聞き慣れない子爵家の人間ですし、そうでしょうね。では、何かあれば、私もエドワード様に協力いたしますので、おっしゃってください」


「迷惑をかけるな」

「いや、そのおかげでこちらも助かっていますので」

「どういう意味だ」

「ははっ。エドワード様を求めて、面倒な令嬢が殺到しないって意味です。……ははっ」


 エドワードは頭に手をやると、わしゃわしゃとかき乱す。

「あぁー! それよりあいつのせいで、ルイーズのことを思い出しただろう。何で、来ないんだよ。イライラするな」


「ルイーズ嬢……。やはり恋人なのですか?」

 ビリング侯爵は、娘のパトリシアをエドワードの父へ頼んだことを、まずい、と顔に書いてある。


「はぁーっ! 違うに決まってるだろう。カーティスの婚約話を、喜ぶようなルイーズなんか、俺が相手にするかよ……。もしかして、あいつ戻って直ぐにカーティスと」


(さっき、ルイーズを好きなのかと思ったが、俺の思い過ごしだ。俺の横で、カーティスとの婚約をケラケラ笑ってたような尻軽だぞ。しばらくルイーズと一緒にいたせいで、情が湧いただけだろう)


 首を横に振ったエドワードはフードを被ると、救護室へ入っていった。

 ルイーズを訪ねた午前中のガランとした空間とは打って変わり、多くの人があふれる現状を確認し、彼は顔を引きつらせている。

 だが、文句も言わずに淡々とこなすだけだ。



 その一方。

(ルイーズの奴、エドワード様のお気に入りなのか……。

 単純なあいつを丸め込んで、あいつからエドワード様にお願いしてもらえば治してもらえる。

 このけがだって、あいつの姉のせいだ。そうだ、まだ何とかなる気がしてきた)


 寄生虫のようなモーガンは、そんなことを考えていた。


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