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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
2章 入れ替わりのふたり

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3-16 入れ替わりから戻れない

 執事に朝食だと呼ばれたエドワード(ルイーズの体)は、目に入った皿の数を見て、見間違いかと何度も目をこすった。

 昨日までは、パンとスープしかなかったメニューに、主菜と副菜がある。


 ムッとした顔のエドワード。スペンサー侯爵家の自分とルイーズの関係がチラついた途端、掌を返すフォスター伯爵家に腹立たしさを感じながら、エドワードは黙々と食事を摂って訓練に向かった。


 訓練開始時刻が近づけば、自然とルイーズの近くからは訓練生が消え、エドワードだけが残っていた。

「練習をしましょうか」

 そう言った、ルイーズ(エドワードの体)は訓練する気満々であり、騎士になるのを少しも諦めていない。


「お前の体で剣の訓練って、地獄だな」

「はぁぁーっ、言い方に、もっと気遣いや優しさはないわけ。昨日の夜、少しだけ見直したけど、やっぱりエドワードだわ」

「おっ、やっと俺のことを敬う気持ちになったか、遅いぞ」


 教官が、一向に練習を始めない2人を見ていた。それに気付いたのは、ルイーズ(エドワードの体)だった。

「はいはい、そういうことにしてあげるわよ。教官に(にら)まれたわ、練習するわよ」

「いや、剣を交えているフリだけにしてくれ」

「ふふっ、弱気でかわいいわね」


 笑っているのはルイーズ(エドワードの体)だけで、目の前には、引きつった表情のエドワード(自分)の顔がある。

 持ち上げた互いの剣をコツンとぶつけたまま、2人は、ただ会話をしていた。


「今日も、俺の屋敷へ行く」

「いいけど、こんなにわたしのことを屋敷へ連れていって、侯爵家は問題ないの?」

「父の耳に入っているか知らないが、もし、知っていても、俺が遊んでいるくらいにしか思っていないだろう。何も言われることはないから安心しろ」


**


 スペンサー侯爵家の、エドワードの部屋に着いた2人は、寄り添うようにソファーに座っていた。

「屋敷の中で、困っていることはないか?」

「今のところは大丈夫よ。でも昨日の夜考えていたんだけど、スペンサー侯爵家のお金をたくさん使っているようだったけど、わたし、お父様から怒られないかしら」

「そんなことを気にしていたのか? 大丈夫だ、あれは俺個人の金だ。侯爵家とは全く関係ないから問題はない」 

「どうしてそんなにお金が……」

「もう少し経っても体が戻らなければ、その理由を教えるが……」

 この話をしているときのエドワード(ルイーズの体)は、緊張でかすかに体がこわばる。

 

(俺が救護室の人間だと伝えていなことが、どうしてこんなに気が(とが)めるんだ? 別にだましていたわけではないが……。以前、ヒーラーの話をしたときに、適当に誤魔化したせいだろうか)


「ふふっ、デリカシーのないエドワードでも、悩むことはあるのね。大丈夫よ、困ったら直ぐに相談するわ」

「悪いな。入れ替わったのはおそらく俺のせいだ。原因が分からないから、戻り方も分からない。あれから何度も、心当たりを試したが無理だった。本当は、もうとっくに戻れると思っていた……」


「大丈夫、そんな不安そうな顔をしなくても、きっと戻れるわよ。ふふっ、それに、心配しなくても、エドワードの重要なものは勝手にいじらないから」

 あっけらかんと話すルイーズは、エドワード(ルイーズの体)の頭をなでた。


「手を握ってもいいか?」

「いいわよ」

 しばらく2人で手を握り合い、エドワード(ルイーズの体)が、ルイーズ(エドワードの体)に寄り掛かっていた。


(どうして戻れないんだ……。ルイーズに剣が向かっていたとき、俺がルイーズと替わりたいと思っていたのは間違いない。それなのに、あれから何度念じても戻ることはない。いよいよ、王宮の仕事をどうにかしないといけないか……)


 そう思っている彼の頭の中には、ある不安が過っていた。


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