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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
2章 入れ替わりのふたり

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2-9 気まずかったはずなのに、大爆笑

ブックマーク登録ありがとうございます。大変嬉しいです。

最後まで、よろしくお願いします。

 げっそりとしたルイーズ(エドワードの体)の視界に、プラチナブロンドの髪が飛び込んできた。


「あぁー、わたしの体は無事だわぁ。会いたかった」

 そう小さくつぶやきながら、エドワード(ルイーズの体)を目指して一目散に駆け寄っていく。


 そうして対面したルイーズとエドワード。

 2人とも早く会いたい気持ちは同じで、向かい合うまでは互いの顔を見て、安堵(あんど)していた。

 ……だが、互いに気まずい。

 双方に視線をずらし、もじもじとしている。

 不思議な緊張感に包まれた2人は、「そっちから何か言え」、と言いたげに目を泳がせる。


 いつだって「おはよう」の代わりは、エドワードが発していた「今日も来たのか! 来るなと言っているだろう」そんな会話から始まっていたのだ。

 会った直後から、普通の会話に行き詰ってしまった。


 そうは言っても、このまま休憩室にいられるわけもなく、訓練開始時刻が差し迫る。

 互いの空気を読みながら、じれじれの2人は剣を持って訓練場へ向かうことになった。

 そんなルイーズ(エドワードの体)は、剣を持った瞬間、おかしな感覚に見舞われる。

 ……そして、どうしてだろうと、こてんと首を(かし)げた。


「ねえ、今日の剣は何か違うのかしら? すごく軽いんだけど」


 ルイーズの発言にエドワード(ルイーズの体)は、口を開けて(あき)れている。だが、彼に笑う余裕はなく、むしろ、青い顔に冷や汗を流し焦っていた。


「……お前、本当にあほだな。それは俺の体だからだ。俺には、馬鹿みたいに重く感じる。よくこんなんで、お前は毎日訓練に来ていたな。悪いが今日は剣を振るな。ここに立っているだけで、やり過ごすぞ」


 弱気なエドワードの意見に従い、ルイーズは教官たちの目がある中、剣を下に向けたまま会話を始めた。



「体を動かしているなら、もっと食べろ。あの食事の量では筋肉が付くどころか、運動で消費したエネルギーが足りずに痩せるだけだ。3か月もたてばそろそろ体が仕上がってくる頃なのに、一向に細いのはそのせいだろう」


「エドワードは、いつでも悪口ばっかりね。どんな猫をかぶったら、パトリシア様が、あなたなんかを良いって言うのか、さっぱり分からないわ」


「はぁぁーっ、俺はいつだってこうだ。お前の方が猫をかぶっているだろう。さっき、カーティスからドレスを贈るから舞踏会のパートナーに誘われた。カーティスのために、しっかり断ってやったぞ」


 エドワードの勝手な行動に、ルイーズは耳を疑った。「ドレスを贈ってくれる!」そんなウソのような話は、まさに奇跡。


 それを断るとは、容認できない。

 エドワードにじれていた気持ちはどこかへ消え去り、彼に真っすぐ視線を向けた。


「はぁぁーっ、なんでそんな勝手なことをしているのよ。その日はわたしも出席する予定なのに、パートナーがいなくて困っていたんだから、カーティスと一緒に行くわよ。あー良かった、助かったわ」

 ルイーズ(エドワードの体)は、最近の大きな悩みだったドレス問題の解決に、うれしさのあまり小さく飛び跳ねていた。


「お前はどうしてそんなに尻軽なんだ?」

 エドワード(ルイーズの顔)は、ムッとしており、明らかに不機嫌である。

 

 一方のルイーズは、エドワードの発した「尻軽」。その単語から、何かを思い出したようで、エドワード(ルイーズの顔)を真剣に見つめていた。


「そんなんじゃないわよ。ねぇ、それよりわたし、昨日大事なことを伝え忘れていたの」

「ん? 何だ」


「わたしの体を必要以上に触らないでね。ただでさえ、関係のないエドワードに体を見られるのは恥ずかしいのに」

 虫の居所が悪くなったエドワードは、隠そうか悩んでいたはずのことを打ち明ければ、ルイーズがどんな反応をするのか楽しみになり、悪い顔をした。


「くくっ、こんな貧相な体の持ち主がよく言う。残念だったな、昨日のうちに細部まで全部確認した。頼むのが遅いから俺は悪くないぞ。だからのろまなんだ、お前は」


 焦るルイーズ(エドワードの体)は、エドワード(ルイーズの体)の両肩をグッとつかんで、言い寄った。


「ちょっ、ちょっ、ちょっと何を確認したのよ!」

「体の構造と感覚もろもろの確認だ。女の体について、よく分かって助かった。お前の体のお陰で、この先色々役に立つだろうな」

 乙女の体で何をしている! と、ルイーズ(エドワードの顔)は真っ赤になるのと同時に、あっけらかんと、悪びれる様子のないエドワードにブチ切れた。


「はぁぁーっ、何やってくれてんのよ」

「くくっ、まあ怒るなって。悩む俺への人助けだと思えよ」

「何が人助けよ! 結局わたしたち戻っていないでしょう。わたしの体に何をしたのよ!」


「何をしたか教えて欲しいなら、俺の部屋で見せてやる。今日は、俺の屋敷へ行った後、着替えてすぐに町へ出掛ける。お前も付き合え」

「見せるって! エドワードって、本当にデリカシーがないわ」


「はぁぁーっ、お前、何を想像しているんだよ、馬鹿」

「えっ、違うの。あ、いや」

「違わない。しない方がよっぽどおかしいだろう。くくっ」

 エドワードに見られた。いや、そもそも見るくらいは当たり前だ。自分だってエドワードの大事なところを……。

 

 ハッと何かを思い出したルイーズは、彼と帰るのを躊躇(ためら)った。

「わたし、救護室へ行きたいから、一緒に帰るのはちょっと困る……」


 耳を疑うエドワード。

 まさか、目の前のルイーズは、エドワードの体で救護室に入ろうとしている。

 ……それは、超絶まずい。


 ルイーズの発言に鳥肌が立つエドワード(ルイーズの体)。動揺しつつも、俺の体に何かあったのかと、心臓をバクバクさせながら詰め寄った。


(このあほが、のほほんと間違って救護室へ足を踏み入れれば、大ピンチだ)


「おいっ馬鹿! なんだって救護室へ行こうとしているんだ。絶対に駄目だ。何故行こうとしているか、言えっ」

 鬼気迫るエドワード(ルイーズの体)の様子に、ルイーズは観念したものの、ルイーズは、ボソボソと言いずらそうに話し始めるのがやっとだ。


「相談したいことがあって……。だって、病気かも知れないから」

「はぁぁーっ、どういうことだ! 俺の体に何をしたっ!」


「昨日、化粧室へ行くのを我慢していたら、今朝、エドワードの大事なところが大きく腫れていて……。どうしよう……」

「へっ?」

 拍子抜けした顔をするエドワード。だが、次の瞬間大きな声を上げる。


「あはははっ」


 ルイーズ(エドワードの顔)があまりに深刻な顔をしているから、おかしくなり、おなかを抱えて大笑いを始める。

 だが、きょとんとするルイーズは、何が何だか分かっていない。


 ……その後、エドワードから揶揄(からか)われるようにルイーズは理由を聞かされた。


 その瞬間、ボッと全身に火が付いたように熱くなる。あまりの熱気に、頭から湯気が出ているかもしれない。


 

 周囲の人物たちには、あのエドワードが耳まで真っ赤になり、ルイーズに何か強く訴えている姿が見えている。

 彼の瞳は潤んでいるが、それまでは見えていない。



 エドワードに熱烈な視線を送る令嬢たちに、どよめきが起きているのは、当の2人は知るわけもなく、エドワード(ルイーズの体)が笑い転げ、ぷりぷり怒るルイーズ(エドワードの体)の、2人きりの楽しい世界を作っているのだ。



 訓練の時間中、エドワードがルイーズの肩に手を置き、時々激しくルイーズの肩を揺さぶりながら会話をしたり、時々胸をボカボカと(たた)いたりていた。


 その姿を目撃したカーティスとパトリシアが、焦りを募らせている。



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