2-6 見えてくるルイーズの姿
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エドワードは、ルイーズが言っていたとおり、彼女の部屋で静かに過ごすつもりだ。
だが、そんな彼の気持ちを知らずに、姉がバタバタと部屋に突入してきた。
「何事だ?」と、考える時間もない。瞬く間の展開にエドワードは、「ひゃっ」とかわいい声を出して動揺する。
訳も分からず突然、ミラベルに腕を掴まれたエドワード。眉間にしわを寄せた姉から、射抜くような視線でにらまれる。
まるで鼻息でも聞こえそうな姉の気迫。エドワードでさえ圧倒され、口を固く結んで顔をこわばらせる。
何より、この状況が全く理解できない彼は、うかつに何も言えずにいた。
姉が強く掴んでいるルイーズの腕は、じんじんと鈍い痛みが襲う。その痛みで顔がゆがむエドワード。
日頃言い返さないルイーズには何をしても構わない。そう思っている姉は、いつも目いっぱいの力を込め、威圧的にルイーズの体を拘束しているのだ。
「あんた、もしかしてエドワード様を狙っているつもりじゃないでしょうね」
姉の口から自分の名前が出たエドワードは、目をパチクリさせる。
それでも平静を装う姿勢の彼は、間違って「俺」と言わないように細心の注意を払う。
だが、姉からにらみつけられる気迫に押され、何度か言い間違えながらの、たどたどしい口調だ。
「お、エドワードは、ルイーわたしに興味はない」
「当たり前でしょ。スペンサー侯爵家の嫡男が、あんたなんかに、なびくはずないんだから。それに、エドワード様を呼び捨てだなんて、失礼だわ。調子に乗らないで」
「いや、訓練の同期だ。この期間は別に」
「あんたもしかして、モーガンとわたしのことに気付いて、モーガンの誕生日だけ、訓練から早く帰ってきたんじゃないでしょうね! 分かっていて、わたしの部屋に入ってきたんでしょう! それで婚約者を押し付けて、エドワード様に乗り換えようとしていたんでしょう」
「はぁぁ? 何を言っている?」
「しらばっくれないでよ。わたしがモーガンの子を妊娠していなかったら、あんな取り柄のない男は返してあげるわ」
「なんだ、返すって? いくら馬鹿でも姉と婚約者がそんなことをしていると分かったら、だませないって分かるだろう」
彼にとっての「馬鹿」は、ルイーズを指す。けれど、姉にとってはモーガンだと理解し、にらみ合う2人の会話は、止まることなく続く。
「あんたが毎日わたしに泣いてすがってくるってモーガンに言えば、その気になるわよ。今だって、あんたの方が都合良いって、わたしに文句ばっかり言っているんだから。あんたが部屋に入ってきたせいで失敗したのよ。わたしをこんなに悩ませているんだから、その仕返しはさせてもらうわよ。彼をけしかけて、あんたの部屋に届けてあげるから。エドワード様を落とそうなんて考えないで」
姉の言動に驚愕しているエドワードは、掴まれていた手を振り払い、冷たい視線を向け言い放つ。
「お前、最低だな」
そう言うと、エドワードはミラベルの背中を強く押して部屋から追い出し、鍵を掛けた。
……突然のことに焦り、心臓がバクバクとうるさい。ただでさえしんどい体。耐えられず、エドワードはそのままへたり込んだ。
(断片的な情報と父の指示で、嫌々ルイーズに関っていたからか、彼女のことを勘違いしていたのか?
今更だが、彼女への態度を改める必要がありそうだ。何で、あいつはいつも怒っていたのに本当のことを言わなかったんだ……)
エドワードは少しずつ、ルイーズのことが気になり始めた。
乱れた呼吸を整えたエドワード。悶々としている彼は、何かがおかしいと部屋中を漁っていた。
クローゼットの中を開けると、サイズの小さなドレスが1着とワンピースが数枚掛かっているだけ。どれも新しいとは言えない。
慌てて机の上にあるノートを手当たり次第に見始めた。
中にはルイーズが付けていた帳簿もあった。
(あいつ、この屋敷でどんな暮らしを送っているんだ)
「ルイーズ様、夕食の時間です。食堂にお越しください」
「あ、ああ……」
ルイーズが話していたとおり、執事が扉の外から声を掛けてきた。
そうなれば違和感もなく、エドワードは執事の後ろを付いて食堂へ向かう。
彼が座るように誘導された席には、小さなパン1個と具無しスープのみだ。
それにハッと驚き彼は周囲をうかがうように見回す。
すると彼の目に映るのは、他の家族の食事と、自分の目の前に並べられているメニューが全く違っていたのだ。
案の定。ルイーズがいつも以上に、まじまじと主菜を見ていることは、あっと言う間に他の家族に気付かれてしまう。
「何かあったの?」
継母が不愉快そうに、エドワードに話し掛けてくる。
いつもの口調で口を開きかけたけれど、彼は、ぐっとこらえて口をつぐむことにした。
(そういえば、あいつは無言で食べろと言っていたか……。言っても無駄なんだろうし、ここは黙っておくか。
だが、このままでは駄目だな。こいつが細いままなのも、こんなに体が気だるいのも、こういうことか……。体が戻ったら、あいつを屋敷に連れてきて何か食わせてやるか)
そう思っていた彼は、何も言わずに出されたものを食べて、急いで部屋へ戻った。
この後、自分の体に戻る方法をルイーズの体を使い試行錯誤したエドワードは、深い罪悪感を抱くことになる。
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