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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
2章 入れ替わりのふたり

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2-6 見えてくるルイーズの姿

ブックマークや評価、いいね! ありがとうございます。

最後までよろしくお願いします。

 エドワード(ルイーズの体)は、ルイーズが言っていたとおり、彼女の部屋で静かに過ごすつもりだ。

 だが、そんな彼の気持ちを知らずに、姉がバタバタと部屋に突入してきた。


「何事だ?」と、考える時間もない。(またた)く間の展開にエドワードは、「ひゃっ」とかわいい声を出して動揺する。


 訳も分からず突然、ミラベルに腕を(つか)まれたエドワード。眉間にしわを寄せた姉から、射抜くような視線でにらまれる。

 まるで鼻息でも聞こえそうな姉の気迫。エドワードでさえ圧倒され、口を固く結んで顔をこわばらせる。

 何より、この状況が全く理解できない彼は、うかつに何も言えずにいた。


 姉が強く掴んでいるルイーズの腕は、じんじんと鈍い痛みが襲う。その痛みで顔がゆがむエドワード(ルイーズの顔)

 日頃言い返さないルイーズには何をしても構わない。そう思っている姉は、いつも目いっぱいの力を込め、威圧的にルイーズの体を拘束しているのだ。


「あんた、もしかしてエドワード様を狙っているつもりじゃないでしょうね」


 姉の口から自分の名前が出たエドワードは、目をパチクリさせる。

 それでも平静を装う姿勢の彼は、間違って「俺」と言わないように細心の注意を払う。


 だが、姉からにらみつけられる気迫に押され、何度か言い間違えながらの、たどたどしい口調だ。


「お、エドワードは、ルイーわたしに興味はない」

「当たり前でしょ。スペンサー侯爵家の嫡男が、あんたなんかに、なびくはずないんだから。それに、エドワード様を呼び捨てだなんて、失礼だわ。調子に乗らないで」

「いや、訓練の同期だ。この期間は別に」


「あんたもしかして、モーガンとわたしのことに気付いて、モーガンの誕生日だけ、訓練から早く帰ってきたんじゃないでしょうね! 分かっていて、わたしの部屋に入ってきたんでしょう! それで婚約者を押し付けて、エドワード様に乗り換えようとしていたんでしょう」


「はぁぁ? 何を言っている?」


「しらばっくれないでよ。わたしがモーガンの子を妊娠していなかったら、あんな取り柄のない男は返してあげるわ」


「なんだ、返すって? いくら馬鹿でも姉と婚約者がそんなことをしていると分かったら、だませないって分かるだろう」


 彼にとっての「馬鹿」は、ルイーズを指す。けれど、姉にとってはモーガンだと理解し、にらみ合う2人の会話は、止まることなく続く。


「あんたが毎日わたしに泣いてすがってくるってモーガンに言えば、その気になるわよ。今だって、あんたの方が都合良いって、わたしに文句ばっかり言っているんだから。あんたが部屋に入ってきたせいで失敗したのよ。わたしをこんなに悩ませているんだから、その仕返しはさせてもらうわよ。彼をけしかけて、あんたの部屋に届けてあげるから。エドワード様を落とそうなんて考えないで」

 

 姉の言動に驚愕(きょうがく)しているエドワード(ルイーズの体)は、掴まれていた手を振り払い、冷たい視線を向け言い放つ。


「お前、最低だな」

 そう言うと、エドワードはミラベルの背中を強く押して部屋から追い出し、鍵を掛けた。


 ……突然のことに焦り、心臓がバクバクとうるさい。ただでさえしんどい体。耐えられず、エドワードはそのままへたり込んだ。


(断片的な情報と父の指示で、嫌々ルイーズに関っていたからか、彼女のことを勘違いしていたのか? 

 今更だが、彼女への態度を改める必要がありそうだ。何で、あいつはいつも怒っていたのに本当のことを言わなかったんだ……)

 エドワードは少しずつ、ルイーズのことが気になり始めた。


 

 乱れた呼吸を整えたエドワード。悶々(もんもん)としている彼は、何かがおかしいと部屋中を(あさ)っていた。


 クローゼットの中を開けると、サイズの小さなドレスが1着とワンピースが数枚掛かっているだけ。どれも新しいとは言えない。

 慌てて机の上にあるノートを手当たり次第に見始めた。

 中にはルイーズが付けていた帳簿もあった。

(あいつ、この屋敷でどんな暮らしを送っているんだ)



「ルイーズ様、夕食の時間です。食堂にお越しください」

「あ、ああ……」

 ルイーズが話していたとおり、執事が扉の外から声を掛けてきた。

 そうなれば違和感もなく、エドワードは執事の後ろを付いて食堂へ向かう。

 彼が座るように誘導された席には、小さなパン1個と具無しスープのみだ。

 それにハッと驚き彼は周囲をうかがうように見回す。


 すると彼の目に映るのは、他の家族の食事と、自分の目の前に並べられているメニューが全く違っていたのだ。


 案の定。ルイーズがいつも以上に、まじまじと主菜を見ていることは、あっと言う間に他の家族に気付かれてしまう。


「何かあったの?」

 継母が不愉快そうに、エドワード(ルイーズの体)に話し掛けてくる。


 いつもの口調で口を開きかけたけれど、彼は、ぐっとこらえて口をつぐむことにした。


(そういえば、あいつは無言で食べろと言っていたか……。言っても無駄なんだろうし、ここは黙っておくか。

 だが、このままでは駄目だな。こいつが細いままなのも、こんなに体が気だるいのも、こういうことか……。体が戻ったら、あいつを屋敷に連れてきて何か食わせてやるか)


 そう思っていた彼は、何も言わずに出されたものを食べて、急いで部屋へ戻った。


 この後、自分の体に戻る方法をルイーズの体を使い試行錯誤したエドワードは、深い罪悪感を抱くことになる。


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