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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
2章 入れ替わりのふたり

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2-1 入れ替わり

ブックマークと評価、いいね! を頂き、ありがとうございます。

ここ以降が本格的な物語の始まりです。

犬猿のふたりの関係を最後まで見守ってください。

 騎士候補生の掛け声が響き、賑やかな訓練場。

 ルイーズは久しぶりに剣の訓練を始めてみたものの、外まで歩いて来るだけで既に息が上がっていた。

 それでも、なんとか訓練を乗りきるために剣を振ると、大きく肩で息をする羽目になる。


 元々、運動量と食事量が見合っていなかったルイーズは、そもそも栄養不足。その上、この2週間は、具無しのスープしか口にしていなかった。

 自身の体調が万全ではないと自覚しながらも、これ以上休めば候補生の資格がなくなると思い、無理を押してやって来たのだ。


 だが、立っていられず、剣を(つえ)のように地面へ刺し、何とかその場を保つ。



「馬鹿。剣を地面に刺すな。剣先が痛むだろう」

「……」

 エドワードに言い返す元気もないまま休憩所を見やるルイーズは、今日は無理だと諦めをつけ、帰る決意を固める。


「エドワード、悪いけどここまでにして。疲れたから下がるわね」


 外の日差しの中、このまま居ては倒れる気がしてならないルイーズは、それを言い終えると、エドワードの返事を待たずして、他の訓練生の間を縫うように動き始めた。


「おい、馬鹿っ。これだから女は……」

 と、エドワードは大きな声で叫んだが、ルイーズに止まる気配は見えない。


「ったく、他のやつらが剣を振っている間を通って、危ないだろう」

 ここで叫んでも意味がないと思ったエドワードは、小さな声で(つぶや)く。

 馬鹿と言いつつも、不安気な表情を浮かべるエドワードは、ルイーズに駆け寄ろうと思い、周囲の様子を確認していた。


 すると、エドワードの目に飛び込んだのは、どこかの訓練生の手から滑り、空高く飛んでいる剣だった。

 その剣の軌道の先を追えば、ルイーズがいるのだ。

 これはまずいと、目を大きく見開くエドワード。


 ……その剣の真下にいるルイーズは、案の定、全く気付く気配も感じられないのだから。


「ルイーズ危ないっ!」

 再び叫んでみたが、ルイーズに警告の言葉は届かず、無反応に終わる。



 それと同時。

 ルイーズには、「おい、馬鹿っ」と、エドワードの叫ぶ声は、しっかりと耳に届いていたが、反応できる余裕はなかった。

 その彼女の心の中では、自分の気持ちをストレートに言えるエドワードを、羨ましく思っていたのだ。

 もし、自分がエドワードであれば、姉に「お前は馬鹿か」と言ってやれるだろう。そんな日が来ることを心から願った。


 ただでさえ騒がしい訓練場。

 意識がぼんやりする中、全く違う思考を(めぐ)らすルイーズには、エドワードの危険を知らせる「ルイーズ危ない!」の声は届いていない。


 

 全く動く気配がないルイーズに、焦りを募らすエドワード。彼は、ルイーズに剣が直撃した後、すぐに治療をすれば助けられるだろうか? と、エドワードは思考を巡らせた。


 ……その結果は否。

 血の気がサーッと引くのを感じたエドワードの中では、ルイーズが死ぬとの結論に至る。

 そんなのは許さないと拒絶したエドワードが、ルイーズと代わりたい、そう思った瞬間――。



 ルイーズを見ていたはずの自分の視界に、ルイーズはいない。

 そして、何が起きたのか周囲を見渡せば、離れた所に自分が青くなって立っているのだ。

 それから直ぐに見上げた先には、真っ逆さまに落ちてくる剣がある。

 ……それで悟った。



 ――ルイーズとエドワードが入れ替わった。


 それに気が付いたエドワードは、落下してきた剣をあっけなく避けると、自分の体の元へ駆け寄り、何も言わずに、その人物の手を引き訓練場を後にした。




 休憩室へ着くなり、(きびす)を返したエドワード(ルイーズの体)

 彼は知り尽くしている目の前に立つ体、その両方の肘を強く(つか)み対面する。


「おいっっ、お前、ルイーズだろう!」

 動揺を隠しきれないエドワード(ルイーズの体)が、耳に響く甲高い声でエドワードの体へ問いかける。


「そうよ。ねぇ、一体何がどうなって、こうなっているの。意味が分からない」

 ルイーズ(エドワードの体)が唇を震わせながら、不安気に答えた。


「お前、俺の体で気持ち悪いから、そんな(しゃべ)り方するな」

「はぁぁっ! そっちこそ、わたしの体でガサツな言い方をしないでよ」


 エドワードの言葉にカッとしたルイーズは、エドワードとヒートアップしたテンションに早変わりしている。


「ヤバい、全然戻り方に心当たりがない。お前、何かしたのか?」

「するわけないでしょう。エドワードの方が何かしたんじゃないの?」


(自分の回復魔法が働いたのかもしれない。だが、魔法は使っていない……)

 

 天を仰ぐエドワード(ルイーズの体)は、苦悶(くもん)の表情を浮かべ考え込む。

 だが、どう考えても答えは分からなかった。イライラするエドワードは、自分の体に当たり散らすように、ルイーズの長い髪をぐちゃぐちゃとかきむしる。


「あー-っ、分からん! そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

 エドワードがいつもの調子で、ガリガリと頭をかいたせいで、髪はまるで鳥の巣のように、ぐしゃぐしゃになった。


 その姿を見てギョッとするルイーズ(エドワードの体)だけど、おかしな見た目に笑い出す。


「ふふ、女の子はこんなことをしないわよ」

 と、ルイーズ(エドワードの体)が笑いながらルイーズ(中身はエドワード)の髪をなでて整えた。


 ルイーズにされるがままのエドワード(ルイーズの体)は、険しい顔を見せているものの、この先のことを考えるのに必死だ。


「いつ戻れるか分からないから、取りあえず、俺の屋敷へ行く。その後はお前の屋敷だ」

「えぇー、エドワードの部屋へ行くなんて、ちょっと困る。わたしに何するつもり」


「馬鹿か! お前、今日はどっちの屋敷へ帰るつもりでいるんだ! 今日中に自分の体に戻れなかったら、お前は俺の屋敷で過ごすんだぞ。俺の部屋の場所も分からないだろう。俺が狂ったと思われるから、『わたしルイーズです』と、馬鹿なことを屋敷で言うなよ」


「はぁぁーっ、何それっ! そんなのお互い様でしょ、分かっているわよ」


 ルイーズの屋敷の馬車を帰し、2人でスペンサー侯爵家の2頭引きの豪華な馬車に乗り込んだ。

 息の上がるエドワード(ルイーズの体)は、自然とルイーズ(エドワードの体)に腕を組んで歩いていた。


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