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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
1章 いがみ合うふたり

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1-16 騒動の予感

ブックマークと評価、いいね! を頂き、ありがとうございます。

今回で「第1章いがみ合うふたり」が終わります。次章は「入れ替わりのふたり」と、なります。

最後までよろしくお願いします。

 とぼとぼと元気なさげに歩くルイーズが、訓練場に到着すると、周囲の視線がいつも以上に自分に刺さってくる。

 おそらく理由は、自分が2週間ぶりに訓練に来たからだろうと、ルイーズは向けられる関心に大して興味もない。

 

 ルイーズは、お茶会に出席した翌日から熱を出してしまい、しばらく寝込んでいたのだ。 


 視線を向ける理由。それは、他の候補生はルイーズの婚約解消を耳にして、彼女自身に興味があった。


 真面目に騎士を目指す姿に好感が持て、ましてやルイーズは、騎士の仕事に理解がある。

 ルイーズの姿も、化粧せずともかわいらしい。

 もし結婚する相手となれば、ルイーズは理想的だろうと、ある日の休憩室で話題に上がった。 


 ただ、ルイーズが痩せ過ぎなのは間違いなく、ルイーズも訓練に参加してから、さらに細くなったことを気するほどだ。

 十分な食事も取らず日差しの下で過ごすせいで、髪のぼさつきも否めない。

 伯爵夫人と姉ミラベルの意地悪は、目に見える形で確かに表れていた。




 その一方、今日こそは、ルイーズが来ているだろうかと、エドワードは首を左右に動かして姿を探せば、直ぐにプラチナブロンドの長い髪が目に留まった。

 彼女を見つけて、口角が上がりかけたものの、その本人が、他の訓練生と頬を赤らめて話すのを見て、眉間にしわを寄せる。



 ルイーズは、公爵家の3男のカーティスに声を掛けられ横を向いた。

 すると、穏やかな笑顔を浮かべるカーティスが、真っ赤なリンゴが入った、茶色の大きな紙袋を抱えて立っていた。


「ルイーズのことを心配していたんだよ。今日来なければ、見舞いに行こうと思っていた」


「見舞いなんて大袈裟(おおげさ)ね。ただの風邪だったのよ」

「今日は体力も落ちていることだし、訓練は無理してはいけないよ。これは、今日届ける予定だったんだ、持って帰ってくれる」


 同期の言葉は、ルイーズの頬をほんのりと紅潮させた。

 ドキドキするルイーズは、カーティスの持つ、今にもこぼれ落ちそうなリンゴに釘付けである。

 だが、食いつくように貰うのは気が引けてしまい、1度は断ることにした。


「元気になったのだから、それは受け取れないわ」

「じゃあ、僕からの快気祝いだと思って受け取って」


 カーティスから、ぐいぐいと押し付けるようにリンゴの山を持たされてしまい、返そうと思ったが、カーティスが直ぐに立ち去ったため、断れず仕舞い。



 リンゴを受け取り困惑したものの、時計を見て、訓練が差し迫る時間に気付いたルイーズは、リンゴの入った紙袋をどこかに置いて、訓練に向かおうとしていた。


 そのとき、袋の中からリンゴが1個転がり、それを拾ったのがムッとしているエドワードだ。

 

「お前は婚約者がいなくなった途端これなのか。早速、違う男を引っかけるために、仮病を使って同情を買っているのだろう」


「はぁぁっ! そんなわけないでしょう。本当に具合が悪かったの」


「上手く男が引っかかって良かったな。まあ、せいぜい逃げられないように、今度は、もっと健気な路線で同情を買えばいいだろう」

 そう言いながら、ルイーズの持つ紙袋の中へ、エドワードは拾ったリンゴを戻す。


「ひっどーい、何それ。って、エドワードと話していたら、もう他の候補生たちは組む相手を決めているじゃない」

 ルイーズは、周囲をキョロキョロと見回し、これまでと同じ状況に呆然とする。

 肩を落としたルイーズは、今日は、心底彼と組むのが嫌だった。

 それは、エドワードはこの候補生の中でも群を抜いて力がある彼を相手に、今日の自分の体力が、最後まで持つ自信が少しもなかったのだ。


 彼が剣を握るその腕は、筋肉の筋が分かるくらいだった。まるで剣士になるために創り上げた体。

 ルイーズと剣を交えても、彼の黒髪は少しも汗にぬれることもなく、黒い瞳は至って冷静に自分を捉えていた。


(どうしてこんな人が、いつもわたしと組んで剣術を磨くのか分からないわ。

 わたしよりも、他の熟練した候補生と組まないとエドワードのためにならないのに)



 持つ必要のない罪悪感を抱くほど、ルイーズはエドワードが訓練に参加する理由を疑っていなかった。


 エドワードは、幼い頃から回復魔法師(ヒーラー)の素質に気付いており、自分の身を守るために習得した剣技。

 だがそんなことは、エドワード本人と、この国の宰相である彼の父しか知らないことだ。


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