1-15 招かれたお茶会②
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「自分は女だ」、と強く主張するルイーズを見て、エドワードはクツクツと笑いだした。
「いや、どっからどう見ても、お前から色気も女も感じないんだから、男だろう」
「はぁぁーっ、何ですってぇ! そんなことを言うエドワードだって、パトリシア様のことを見た途端、緊張してガチガチになっちゃって。普段、どれだけ令嬢にモテないのよ! 何か気の毒で、同情するわね」
「はぁぁーっ、っなわけないだろう。俺はお前と違って、選び放題だ!」
それを聞いたルイーズは彼に怪訝な視線を向ける。
……この男は最低だ。
今までエドワードについてあまり知らなかったが、彼には恋人や愛人がいっぱいいるのかもしれない。
その類の被害を、くらったばかりのルイーズは、目の前に座る端整な顔立ちの彼であれば、女性を騙すのは容易なこと。そう結論付けた。そうなれば、ますますエドワードが嫌いに思えてくる。
「選び放題って、最っ低ねっ! 色んな令嬢に手を出して、泣かせているんじゃないでしょうね! パトリシア様を泣かせたら、ただじゃ置かないわよ」
「お前なぁ、自分が俺に興味を持ってもらえないからって、僻むなよ」
「はぁぁーっ、誰が僻んでいるって!」
そこに、エドワードのためにお茶を持って、戻ってきたパトリシアが2人へ声を掛けた。
「2人ってやっぱり仲がいいのですね。もしかしてお付き合いなさっているのですか?」
「「そんなことは絶対にないっ!」」
と、息もピッタリに重なって訴えるルイーズと彼。
それから一呼吸置いたエドワードが、いつもルイーズに向ける口調とは全く異なり、穏やかな口ぶりで話し始める。
「パトリシア嬢が、こいつと仲が良いとは意外ですね。こんなガサツなのと、パトリシア嬢では気が合うようには見えませんが」
「騎士の訓練場の外で具合が悪くなっていた私を、ルイーズ様が助けてくれたんです。私を木陰まで運んで、体調が良くなるまでそばにいてくれたんです。今日は、そのお礼でして」
それを聞いた彼は、ルイーズの方を見て、そっけなく言った。
「お前って、たまには良いことをするんだな」
「はぁぁーっ、余計なお世話。いつも良いことしかしていないわよ!」
「お前、本当に口が悪すぎるな! パトリシア嬢、こいつと付き合うのは、ほどほどにしないと、悪い影響を受けますよ」
「誰が悪い影響よ、失礼ね!」
「本当、お2人って仲が良いですね」
パトリシアの言葉に、又も息がピッタリの2人は重ねてこう言った。
「「どこがっ!」」
「そういえば、エドワード様はどうして、いつも手袋をはめているのですか?」
パトリシアからの唐突な質問。
エドワードは、訓練のときは皮の手袋を、そして今はシルクの手袋をはめていた。今、それを問われているが、エドワードにとって、返答に困る内容だ。
この場は取りあえず適当にやり過ごす。そう思い、ごまかす理由を考える彼は、こめかみ辺りに指を置きかけた。
「パトリシア様、エドワードなんて、ただ格好を付けたいだけですから、大した理由なんてないですよ、どうせ」
「はぁぁーっ、誰が恰好を付けているだけだとっ!」
「エドワードのことでしょう! そうじゃなかったら、見えっ張りがいいかしら」
「どっちも同じだろっ! 本当に馬鹿だなお前は」
会話の切り口を作りたかったパトリシアは、口を小さく開けて気落ちしていた。
パトリシアは緊張しながら、やっとのことでエドワードに質問したのだが、ルイーズに話の骨を持っていかれてしまった。
仕舞には、そのまま2人だけで会話を始めた。それも生き生きと。
どうにかして、エドワードの婚約者になりたいパトリシアにとっては、思った以上に、この2人が親密に見えて、相当に焦りを募らせた。
今年社交界デビューしたばかりのパトリシアは、エドワードが、王女たちとだけ踊っている事実を知らないのだ。
家同士のつながりが強いエドワードとは、上手くすれば婚約者になれると期待している。
甘い想像を巡らすパトリシアの心境なんてものを、全くお構いなしの2人は、互いの馬車に乗り込むまで、いがみ合い続ける。
「あーっ、もっとあのケーキ食べてくれば良かった」
「お前って、どこまで食い意地を張っているんだよ。茶会でケーキにがっつく令嬢なんていないだろう」
「はぁぁーっ、出されているものをおいしく頂いて、何が悪いのよ! ふん。痛っーい、エドワードが要らないことを言うから、馬車の扉に指を挟めたじゃない、もう」
「知るかっ! 俺の責任じゃないだろう、馬鹿。……どうせ直ぐに治るだろう」
と言いながら、心配になり手袋を脱ぎかける。
……が、もちろん無意識だから、彼は全くそれに気付いていない。
だが、彼が脱ぎ終わるより先に、ルイーズが話しを終わらせた。
「はいはい、じゃあ、また明日」
その言葉でハッとしたエドワードは、手袋をはめ直す。
どうして手袋を脱ごうとしたのか? 疑問に思うエドワードだが、日頃の仕事の条件反射との結論に至った。
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