1-11 エドワードの縁談
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エドワードは王宮の奥にある国王陛下の私室へ、慣れた様子で訪問の知らせをした。
するとその直後、応答がないにもかかわらず扉を開け、一切の躊躇なく一番奥の部屋まで向かう。
「呼び出して悪いな」
そう言ったのは、豪華な寝台の上、うつぶせで横たわる陛下だった。
「悪いと思うなら、違う人間に頼めばいいのに」
「まあ、そう釣れないことを言うな」
幼少のエドワードに窮地を救われた国王陛下は、回復魔法師のエドワードに頭が上がらずにいる。だが、それ以上に、彼から冷笑されても頬笑みを返すほど、彼を気に入っているのだ。
「どうせまた、ぎっくり腰だろう」
陛下へぶっきら棒に声を掛けたエドワードは、冷めた目つきで陛下を見下ろし、手袋を脱ぐと、陛下の肌に手を当てた。
少ししてから、エドワードにだけ分かるタイミングで手を離すと、その場所を2回軽くたたいて終わりを告げる。その間、特に呪文を唱えることや、光が発することはない。
「終わりましたよ」
「おおっ、相変わらずエドワードのヒールが一番効くな。体中のコリまで取れた」
「そうなんですかね。自分で体験したことがないから分からないけど、他の2人も同じだと思うが」
他人のことまで、大して関心もないという顔をした。
「いや違う。全然違う」
そう言いながら、おもむろに起き上がり居室へ歩きだした陛下は、そのままソファーに腰を下ろした。
自分をじっと見る陛下の姿に、何か用事があるのだろうと、エドワードは陛下に対面するように立つことにした。
陛下が口を開きかけた瞬間。
「お断りします」
エドワードは、聞く気はないと語気を強めた。
「おい、まだ何も言っていないだろう」
「どうせ、また王女殿下と結婚しろって話でしょう。もれなく陛下のめんどうまで付いてくる縁談、やってらんない」
至って真面目な顔でエドワードが言い切ると、陛下は肩を落とす。
即行で拒絶された陛下は、その言葉で顔色を変えるも、目の奥の光はそのまま。どう見ても、自分と王女の縁談を諦める気は感じられない。
それに眉をひそめたエドワードは、自分が王女と婚約するまで、陛下はこの話を続ける気配を感じた。
自分の結婚相手は、第1王女、もしくは、ずるずると自分の気持ちに踏ん切りが付かず第3王女になるかの違いだろうと、腹では分かっていた。
「いや、娘は3人いるんだぞ。今なら選べる」
「ものじゃないんだ。王女殿下たちに失礼な言い方をしないでください。俺は誰かと結婚する気はないんで、そういう理由です。気が変わったら、そのときは、お願いするかもしれません」
「吉報を待っているぞ」
可能性が見えたことに、陛下は目を輝かせて念押しをした。
「あまり期待しないでください。あっ、そーだ、あの舞踏会のリンゴの酒を振る舞うのは、やめてくれって毎年お願いしていたはずですよね。令嬢たちがすごい形相で持ってくるから、断る方も命がけなんだ。面倒だから次は廃止にしてくれよな」
「それは無理だ。あの舞踏会はそもそも、リンゴの収穫祭が起源だからな」
「うぁっ、信じられないな。次は欠席するか……」
「エドワード様なら欠席しても誰も文句は言えないだろうが、エドワードが貴族の義務の舞踏会に来なければ、私が直接、エドワードへ警告の書面を送る必要があるだろう」
エドワードの弱みに付け込む陛下は、にやりと狡い顔をした。
「はぁぁーっ、じじいが飲み過ぎるから俺に会場にいて欲しいだけだろう! ったく。次は、他のヒーラーに頼んでくださいよ。こんなぎっくり腰くらいで、いちいち呼び出されたら、たまったもんじゃない」
エドワードは、陛下に向かって、いら立ちをぶちまけると、陛下の返答も聞かずに部屋を出た。
今朝から虫の居所が悪い。それもこれも、ルイーズのせいだろう。
自分は、騎士試験を辞退しないルイーズの世話をさせられているのに、当人は全く気にする素振りもない。
挙句、婚約者と過ごす時間を顔に出して喜ぶ、ふてぶてしいルイーズのせいだ。
したくもない結婚で悩んでいるのに、ルイーズは今ごろ婚約者とイチャイチャしているのかと想像すると、陛下に当たり散らしても、全く気分は晴れなかった。
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