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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
1章 いがみ合うふたり

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1-10 婚約者の裏切り⑤

ブックマークと評価を頂き、ありがとうございます。

最後までよろしくお願いします。

 缶の立てた衝撃音に驚き、姉と婚約者のモーガンが同時に振り返った。


「きゃっ、何のぞいてんのよ」

 姉は、真っ赤な顔で怒鳴り散らす。


 叫びながらも、キョロキョロする姉は、自分の体を隠すため、掛け布団を引き寄せる気だ。


「えっ、あっ、どっどっどうしてルイーズが?」

 顔面蒼白のモーガン。彼の高まった感覚は、間もなくはじけそうだ。駄目だ。ミラベルは動くな、と必死に姉を抑え込む。

 

 そのせいで姉は、伸ばした腕をプルプル振るわすが、あと少しで届かない。


「あっ、ちょっと馬鹿、何やってんのよ!」

 耳まで赤くしたミラベルは、モーガンを責めだした。


「いや。驚いたせいだ」


 モーガンと姉が言い争いを始めたが、ルイーズにとってはどうだっていい。


「早く出てってよっ!」

 がなる姉は、よんどころない事情で必死だ。

 大誤算が起きた今、妹を嘲笑(あざわら)うより、自分の対処が最優先。


 だが、姉が言う前に、ボロボロと大粒の涙をこぼすルイーズは、(きびす)を返し、扉の外だった。


(いつの間に、ふたりは恋仲になっていたの? もし、わたしが今、これを知らなければ、彼はこの後、わたしに笑顔を向けながら話す気だったの。ひど過ぎるわ。

 ……わたし、馬鹿だな。裏切られているとも知らず、大事なお金を紅茶なんかに使って。欲しいものは、他にあったのに。 

 モーガンに勧められた騎士の訓練だって、……しんどいのに、どうしよう。

 ……いいえ、弱音何て言ってる場合じゃない。ここまで来たら、絶対に騎士になる。そうすれば、女1人でも家を借りて暮らせる希望はある。もし、なれなかったら……)


 ……寒くもないのに、ブルルッと身震いが起きた。

 自分の未来を想像し、得も言われぬ恐怖心がルイーズを襲う。


 継母はルイーズが18歳になれば、娼館(しょうかん)へ売る気でいる。ルイーズはモーガンとの婚約で、難を逃れたはずだった。


 それなのに、突然望みを失った……。

 18歳の誕生日が迫る今、家を出る当てが見当もつかないのだ。


 ハッとしたルイーズは、婚約者のことで感傷に浸る気持ちを、何とか掻き消した。

 

 


 それからしばらくして、モーガンがルイーズの部屋を訪ねてきた。


 あの直後に、よく平気で自分を訪ねるものだと、ルイーズはあきれた顔を向けた。


「僕は、姉のミラベルより、ルイーズの方が好きなんだ。だから僕を信じて」

「何を言っているの? 姉と愛し合って、わたしが好きって意味が分からない。ふざけないで」

 バシンッと大きな音が響く。

 ルイーズが、モーガンの差し伸べた手を、強く払ったからだ。


 ルイーズが反抗し、モーガンは驚いた顔をしたが、すぐさま悲しげな表情を作り、取り繕った。

 

「ルイーズ、本当にそれでいいのかい?」

 

 

 自分を気に掛ける彼を見ても、アレを見た直後では、揺れる感情はない。間髪入れずとも、答えは明白だ。


「当たり前でしょう!」

 

 すると、それを口にした途端、モーガンから冷え切った視線を向けられた。

 

「チッ、生意気だな。お前のような女に下手に出てやったのに、何を調子に乗ってんだよ」


 ルイーズが初めて目の当たりにする、激昂しやすいモーガンの本性が出た。


「……モ、モーガン」

「お前のような取り柄のない女、誰が好きになるって! あり得ないだろう。少しおだてたくらいで、喜ぶ単純な女を利用しただけだ。馬鹿だよな、まさか素人が騎士を目指すとは。もし本当に騎士になれたら、またお前のことを考えてやるよ。じゃあな」


 優しさのかけらもない口調で言い放ち、モーガンは消えていった。


「ぇ……」

 ルイーズは、小さく口を開けたまま、石のように固まった。


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