1-9 婚約者の裏切り④
本日、続けて投稿してます。こちらは2話目の投稿になります。
いつもは乱れた呼吸を整えるために、休憩所の床で膝を抱えてしばらく座り込み、休んでから帰っていた。
だが、婚約者と会うのが待ちきれないルイーズは、いつも以上に急いで着替え、走って屋敷の馬車に乗り込んだ。
前回は、モーガンを待たせ過ぎて帰られたのだ、当然と言えば当然の結果。
「モーガンは、ちゃんと待っているかな……」
屋敷前に馬車が着くなり、走って飛びだしたルイーズ。
その手には、彼が好きだと言う紅茶の缶を握り締める。少し高かったけど、喜んでくれる顔が見たくて奮発して買った茶葉。
婚約者のモーガンと一緒に飲みたくて、あらかじめ、ルイーズが用意していたものだった。
姉に盗まれないように、今日まで訓練場のロッカーに隠して用意も万全だ。
婚約者へのプレゼントを、親にねだるわけにはいかないルイーズは、騎士の訓練で出る、わずかばかりの手当を充てた。
「モーガンお待たせ――った……」
待ちきれないルイーズは、声を掛けながら自分の部屋の扉を開いたが、そこにモーガンの姿はない。
「どうしていないの……」
ルイーズの頭に良からぬ想像が浮かぶのは、姉の性格をよく知っているからだ。
(何この胸騒ぎ。もしかして、姉が何かしている……。いや、モーガンに限って、そんなことはあるわけない。落ち着いて……)
婚約者に会えることで、高まっていたワクワクとしたルイーズの感情は、一気に焦りに変わっていた。
ルイーズは、既に不安そうな顔をしている。
姉の部屋の前。しばらく静かに佇む……。会話は聞こえないけど、……声が聞こえる。それも低い声。
ルイーズが、部屋の中から感じる人の気配は姉1人分ではなかった。
彼女はこのとき既に、モーガンが、そこにいると確信している。
だが、わがままな姉の話に付き合わされているだけだろうと、前向きに考えた。
でも、姉の性格は行動がどんどんエスカレートする。それはこれまでに自分が体験していた。
ルイーズは、このままにしておくわけにはいかない。そう決心した。
「ふぅーっ」と、一息ついたルイーズは、覚悟を決めて扉を開く。
静かに扉を開けたルイーズの目に飛び込んできたのは、愛する者同士がする、秘密の行為。
……悪いのは、姉と婚約者のモーガンなのは明らかだが、ルイーズが青ざめて硬直している。
(お願いモーガン、ウソだと言って……。あなただけが、頼りだったの。それなのに……、わたし、これからどうやって、生きていけばいいのよ……)
ルイーズは、目の当たりにした事実を、受け止めきれていない。
3つ年上のモーガンは、いつもルイーズに優しく穏やかに接してくれる。
婚約者のモーガンのことを頼りにしていたルイーズは、これまで色々と尽くしてきていた。といっても、ルイーズができることは限られていたから、自分にできそうなことを試行錯誤した。
一度、刺繍を刺したハンカチをモーガンへ渡せば、大袈裟な程に喜んでくれた。それがうれしくて、たまらなかった。
ルイーズの思考が追い付かず、その部屋から立ち去れずにいる。
その瞳は潤み、今にもあふれ出しそうになり、モーガンと一緒に飲もうと用意した紅茶の缶を、ルイーズは無意識のうちに強く握り締めていた。
「!」
ルイーズに、姉の声が聞こえた。
それに驚いたルイーズは、その瞬間、紅茶の缶を床に落としたのだ。
そのせいで、ルイーズが奮発して買った茶葉が部屋中に散らばった。
ガッチャーン――……。
……と、大きな甲高い音が部屋中に鳴り響いた。
そして、その後を追うように広がった、……ベルガモットの香り。
姉の寝室に漂っていた不快な匂いは、一瞬で婚約者が好きだと言っていた紅茶の香り変わる。
それと同時に、この部屋の空気も一変した。
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