1-6 婚約者の裏切り①
続けて2話投稿しています。
王宮騎士団の候補生であるルイーズ・フォスター伯爵令嬢と、エドワード・フォン・スペンサー侯爵令息は、双方の剣を交差させながら、会話をしていた。
「どうしてエドワードは、わたしと練習するのよ。文句ばっかり言うなら、誰か別の人とやればいいでしょう! もしかして、わたしのことが好きなの?」
いつもは陶器のような白い頬だけど、今は顔を真っ赤に染めたルイーズが、詰め寄っている。
ルイーズは息が上がって苦しいのを、エドワードに悟られないように、必死に冷静を装って、彼と会話をしていた。
そんなことは、エドワードにはあっけなく見破られているけれど。
「馬鹿っ! あるわけないだろう。お前みたいな、見た目は普通、伯爵令嬢のくせに庶民臭い。騎士になれるわけがない程の運動音痴。頭が軽い、ついでに尻も軽い。お前の悪いところは延々と言えるが、いいところが見つからないっ! こんな取り柄のないやつを、俺が好きになるわけがないだろう⁉ お前、俺のことが分かっているのか? 煩わしいからお前の方が、俺に惚れるなよ」
力を込めたルイーズの手が限界で震えているせいで、お互いの剣がカチカチカチと音を鳴らしている。
それを冷静に見ているのは彼だけで、ルイーズは、全くお構いなしだった。
このとき既に、ルイーズは自分を罵られてすっかり逆上している。
(顔を合わせれば、いつもわたしの悪口ばかり言うんだから。一体何の恨みがあるのよ。わたし、エドワードに恨まれることなんて、これっぽっちもしていないわよ。あんたなんて、大っ嫌いよ。それなのに……、わたしが、エドワードを好きになるって。あり得ない。そんなのは、絶対にあるわけないんだから。馬鹿にしているわ)
そう思っていたルイーズ。
「はぁぁっ! エドワードなんか、お呼びじゃないわよ。そもそも、わたしには大好きな婚約者がいるんだからっ! モーガンは、わたしのことをかわいいって、言ってくれるもん。エドワードが勝手な言い掛かりを付けても、どうでもいいんだから」
「どこがかわいいんだよ。お前と結婚しても良いって言っている子爵令息の婚約者に、お前は、どんな媚びを売っているんだ⁉」
そう言い放ったエドワードから、冷たい視線を向けられている。
「ちょっと、モーガンのことを馬鹿にしないでよっ! 彼はとても優しい人なんだから」
ルイーズが婚約者を褒めると、エドワードは決まって、ムッとした表情になる。
特に今日、エドワードは訓練前にルイーズが他の訓練生たちへ話している会話を聞いていたのか、いつもより機嫌が悪いようだ。
ルイーズは、訓練の後に婚約者と会う約束をしている。
その彼女の境遇にうまく付け入ったモーガンに、自分が利用されていることに、ルイーズは、いまだに気付いていない。
彼女は、紳士を装っている彼に、すっかりベタ惚れになっていた。
というよりも、近い将来、伯爵家に居場所がなくなるルイーズはモーガンとの結婚も、騎士になるのも、死活問題で必死だった。
今、その婚約者はニヤニヤと笑いながら、慣れた足取りでルイーズの姉、ミラベルの部屋へ向かっている。
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