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◆完結◆突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~猫かぶり令嬢は、素性を隠した俺様令息に溺愛される~  作者: 瑞貴
1章 いがみ合うふたり

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1-2 騎士訓練初日②

本作品を応援いただき、ありがとうございます。

 自分の筋力と、剣の重みで格闘中のルイーズは、一か八かの勝負に出るも、すぐに裏目となった。

 腰を使って反動を付けてみたものの、バランスを崩して尻もちをついたのだ。


 ……そのとき。自分の剣が、ルイーズ目掛けて落下してくる。

 これはまずいと、痛みを覚悟したルイーズだが、エドワードが咄嗟(とっさ)に、皮の手袋をはめた手で剣をつかんだ。


 それを見たルイーズは、助かったと力が抜けると同時に、苦笑いをして誤魔化した。


「馬鹿っ、危ないだろう。何をやっているんだ、お前っ!」

 焦るエドワードとは裏腹に、のんきなルイーズは、あっけらかんと返答する。


「ありがとう。エドワードのお陰で助かったわ。初日から、救護室で回復魔法師(ヒーラー)様のお世話になるところだった」


「お前な、ヒーラーでも治せないものはある。そもそも救護室へ運び込む前に死んだら終わりだ。今の剣が真っすぐお前に落ちていれば、心臓に刺さってあっという間に死んでいたぞ。この訓練は遊びじゃない、甘く見るな」


「げっ、そうなんだ。じゃあ、わたしはエドワードのお陰で命拾いしたのね、助かったわ。それにしても、エドワードは、随分と回復魔法師様に詳しいけど、会ったことがあるの?」

「…………あるよ」

 その瞬間、ルイーズは驚きのあまり、目を見開いた。

 ルイーズは、エドワードから「至上者である回復魔法師に会った」と返ってくるとは、思ってもいなかったのだ。


 その話に興味を持ったルイーズは、エドワードに詰め寄るように、グイッと1歩近づいた。

 彼女のテンションは、一気に上がり、回復魔法師に興味津々だ。


「すごいわ、カッコよかった? って、言っても、3人とも顔を隠しているんだっけ。偉い方たちなのに、素性を(さら)さないなんて、きっと、色々大変なんだろうなぁ。そう考えると、わたしの悩みなんて大したことはないわね。さあ、頑張らないと」

 いけしゃあしゃあと話すルイーズは、少し前に起こした危機を、まるでなかったように解決させた。

 それに、いら立つのはエドワードだ。


「はぁぁーっ、お前は、少しも悩んでいないだろう! その足りない頭で考えても分かるはずだ。死にかけたお前は、この訓練から立ち去るのが賢明だってな! 1時間やって、まだ膝の高さしか剣が上がらない。お前の体が、そもそも騎士に向いていない。赤の他人の心配をしていないで、お前は迷惑だから帰ってくれ」


「諦める……?」


(わたしが騎士を諦めたら、他に何になれるんだろう……。教養も知識も足りないし、侍女なんて無理でしょう。町の食堂で働いても、モーガンと食べていくのもやっとだわ。騎士の給金くらい稼がないと、弟のアランに家庭教師を付けてあげられない。10歳の子から応援してもらってすぐに投げ出すわけにはいかないわ)


「よしっ、諦めてくれたな。ほら、その剣は俺が戻しておくから、とっとと帰れ!」

「ううん、諦めない。まだ何も頑張ってないもん。こんなんじゃ、婚約者に申し訳が立たないわ」

「はぁぁーっ! 婚約者じゃなくて、俺に申し訳が立たないだろう、馬鹿」

「はぁぁーっ、なんでエドワードに申し訳を立てなきゃいけないのよ。じゃぁ、どっか行って、ってさっきから言ってるでしょう」


(この女、俺にどっか行けって、また言いやがったのか。死ぬところを助けてもらって、その言い草。どこまでもふざけている女だな)


「ふざけるなっ! 今日中に剣を持ち上げられなければ、明日は来るなって言っただろう」


「ふん、エドワードと約束する必要はないし、あと2時間はあるもん」

 そう言ってルイーズは、エドワードに取られかけた、剣を胸に抱え込んで死守した。

 ルイーズは、再び素振り以前の、己との格闘を再開する。


 彼に何と言われても、騎士になるのがルイーズにとっては、全てがうまくいく気がするのだ。折れるわけにはいかない。


(あるもん! じゃないだろう……)

 ルイーズの傍らで腕を組む彼は、そう思いながらも、ルイーズを静かに見守った。


 そして2時間後。ルイーズは腰の高さまで剣先を持ち上げられるようになり、満足そうな顔をしている。

 そして、エドワードへ誇らし気に話し掛けた。


「ふふふっ。持ち上げられたわ。やればできるのよ」

「お前なぁ~、それしか上がらない剣で、どうやって警護するんだよ」

「も~う、エドワードはうるさいな~。半年の訓練の初日なんだからこれで上出来でしょ。でも、もっと練習していこうかな」

 この馬鹿が1人で残られるのは、勘弁してくれと、エドワードは険しい表情になった。


「駄目だ。訓練初日は、俺は忙しいんだ。さっさと帰れ」

「エドワードの都合なんて知らないわよ、1人で帰ればいいでしょう」


 ピーーッと教官が鳴らす笛の音が訓練場に響き渡る。

 そのあと、訓練の終了が言い渡され、訓練生たちはみんな、直ちにこの場から解散するようにと指示された。


「ほら、教官がさっさと帰れだと。お前の剣をよこせ。返却しておく」

 言い終えるや否や、エドワードは、ルイーズからひょいっと剣を奪い取り、さっさと立ち去っていく。


「いいわよ、自分でやるわ、ちょっと待ってよ!」

 エドワードを走って追いかけるルイーズだけど、疲れ過ぎているせいで、速足のエドワードに追い付くこともできない。どんどんエドワードに引き離され、そのまま彼が立ち去るのを見送ってしまった。


(何なんだろう、あの人、何も練習していなかったわよね……。騎士試験に遊びで参加しているのかしら……)


 この訓練場の外。今日から始まる訓練を、観覧に来た令嬢たちが大勢いた。

 想定外の人物が訓練場におり、一同が黄色い悲鳴を上げていたのだ。

 だが、エドワードのことを、ただの『嫌なやつ』としか思っていないルイーズには、無縁の感情だった。


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