0ー9 ルイーズと弟アラン
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ここが序章の最終話となります。
他の家族の食事とは、別メニューが用意されているルイーズは、小さなパン1個と具無しスープを、あっと言う間に食べ終え、自分の部屋にこもっていた。
そのとき、アランが彼女の部屋を訪ねてきた。
「姉上、ここが分からないんですが、教えてくれませんか?」
弟のアランから、勉強を教えて欲しいと言われて、考え込むルイーズは、しばらく固まっていた。
(アランは、もうこんな勉強をしているのか……。もうそろそろ、わたしでは、本当に教えられないわね。優秀なこの子は、しっかり勉強して、立派にフォスター伯爵家を立て直してもらわないと)
「姉上?」
弟の声にハッとすると、ルイーズは質問されたことを、弟が持ってきたノートにサラサラと書き終えた。
「はい、答えを書いてみたわよ。アランは、本当にしっかりしているわね。偉い偉い」
そう言って、弟の頭をなでるルイーズは、弟がかわいくてたまらないのだ。
そのアランも、何かを考え込んでいたルイーズが心配になる。
「姉上はおなかが空いていないのですか? いつも僕たちとは違うのを食べているから」
「ふふっ、ほら、わたしって細いから。あんまり食べなくても動けるようになっているのよ。気にしなくても大丈夫よ」
「そうですか……。そうだ、僕のワイシャツのボタンが取れてしまって、付けてくれませんか? メイドは、ミラベル姉上に何か頼まれたようで、忙しいみたいでして」
そう言われて、ルイーズがアランを見ると、弟が今着ている白いワイシャツは、上から2番目のボタンが取れていた。
ボタンを握り、アランは困った顔をしている。
この屋敷には、メイドが2人いた。けれど、母と姉の専従状態で、今は姉の買い物に付き合わされ、不在なのだ。
弟から頼まれたルイーズは、にこっと、何かひらめいた顔をする。
「ふふっ、いいわよ。ついでに、くまの絵でも刺繍してあげるわよ」
「姉上は僕をいくつだと思っているんですか……。シャツに、かわいいくまの模様を入れてもらっても、恥ずかしいですよ」
「そうかしら、いいと思うけど。まあいいわ。シャツを脱いでくれたら、すぐに付けてあげるわよ」
「助かります」と、すぐさま、着ていたワイシャツを脱いで姉に渡すアラン。
ルイーズは以前、自分の服をリメイクするために、メイドから裁縫道具を借りていたが、それを返さずにそのまま部屋に置いてあったのだ。
何年も前に姉から貰ったお下がりでは、スカートの裾が短く外を歩けない。
ルイーズは悩んだ結果、他のワンピースからつぎはぎをして、外出用の服を何とか確保した。
メイドたちから何も言われないところをみると、裁縫箱はおそらく他にもあるのだろう。
そう思ったルイーズは、ちゃっかりと彼女の部屋にそれを拝借していた。
ルイーズは、弟から受け取ったシャツに、手際よくボタンを付けて見せた。
弟からすると、見事な早業だったのだろう、自分の想像以上に驚かれる。
「ありがとうございます、助かりました。それにしても、姉上は随分器用ですね、こんなにあっという間にできるなんて」
「わたしって、必要に迫られれば、うまくなるのよ。ふふっ。きっと、剣技もうまくなるわね」
「そうだと良いですね。騎士の訓練、頑張ってください」
素直な弟は、ルイーズに信頼を寄せて慕っている。今も、姉へ心からの応援を送った。
食事中に、大人の会話に口を出せないアラン。
彼は、ただ静かに、この家の事情を見守っていた。
「本当にいい子に育ってうれしいわ」
弟のアランにとっては、もう1人の姉ミラベルは、ひどく冷たかった。
アランの物心が付いたときには、ミラベルは、弟を転ばせようとして足を掛けたり、髪を引っ張ったり意地悪をしていたのだから。
10歳のアランは、そんな長女の気持ちがよく分からず、近づかないようにしている。
長女ミラベルは、弟のアランに、順風満帆な人生設計を崩されたと思い、ひがんでいたのだけど。
明日からの騎士訓練に希望を抱きながら、ルイーズは、弟の頭をなでている。
エドワードとの出会いで世界が変わり始めるとは、夢にも思っていないルイーズ。
その彼女の18歳の誕生日まで、残すところ、……あと半年。
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