プロローグ
虐げられたルイーズと犬猿の仲のエドワード。
2人の変わり身の恋【完結保証】
本作品は、0章の序章を読み飛ばし、1章から読んでいただいても展開が分かるようになってます。
テンポよく読み進めたい方は、1-1から読み始めることをお勧めします。
人物像背景が分かるのが0章です。時間の許す方は0章から読み進めていただけると、完読後の繋がりが見えてきます。
他サイトにもサブタイトル違いで掲載していますが、こちらには、内容も含めた改稿版を投稿しています。最後まで是非、宜しくお願いします。
17歳の春。私の人生を変える出会いがあった。
目をつむり、思い浮かべるあなたの姿。
……何度思い出しても、あなたの顔は、冷たく怒ってばかりだ。
私の名前は、『ルイーズ・フォスター』
……なのに、彼の声で私の名前を呼んで貰ったことはない。
あなたはいつも、私を『お前』と呼んでいた。
私は、耳に残るあなたの声を、忘れないようにと何度も繰り返し思い起こしている。
「どうしてエドワードは、私と剣の練習なんてするのよ。文句ばっかり言うなら、誰か別の人とやればいいでしょう! もしかして、私のことが好きなの?」
「馬鹿っ! あるわけないだろう。お前みたいな、見た目は普通、伯爵令嬢のくせに庶民臭い。騎士になれるわけがない程の運動音痴。頭が軽い、ついでに尻も軽い。お前の悪いところは延々と言えるが、いいところが見つからないっ! こんな取り柄のないやつを、俺が好きになるわけがないだろう⁉ お前、俺のことが分かっているのか? 煩わしいからお前の方が、俺に惚れるなよ」
そんなことを私に言う彼は、『エドワード・フォン・スペンサー』
女性騎士を目指す私は、騎士候補生の訓練で初めて彼に出会った。
この国の貴族の階級で『伯爵家』は、公爵、侯爵に次いで3番目。
その上を言えば王族。
それと、……国王陛下と並ぶ存在は、回復魔法師のヒーラー様となる。
けれど、そんな天上の人たちは、私には無縁の存在でしかない。
いつも偉ぶるエドワードは、『侯爵家の嫡男』だ。
彼は私より偉いと知りつつも、悪口ばかり言ってくるエドワードへ、私はいつも言いたい放題返していた。
始めは、エドワードのことを、私を馬鹿にする「嫌なやつ」、大っ嫌いだと思っていた……。
それなのに……、夏の終わり際。
私は人生で初めて恋をした。
エドワードを好きだと分かった後からは……。
以前の私の婚約者に抱いた感情は、唯の恩情だと分かった。
世間から見れば私は、伯爵家の次女。
……だけど、私の母は屋敷のメイドだった。
母に捨てられ、伯爵家で身を潜めて暮らす私には、貴族の常識なんて知らない。
庶民臭くて当たり前の暮らしを送っていた。
そんな何も知らない私が、身の程もわきまえず、エドワードを愛してしまった。
私が恋に落ちたあなたは、……菫色の瞳に、プラチナブロンドの長い髪。わたしの顔で笑っていた姿だ。
「ルイーズ」と、私の名前を呼んだ声も、あなたの声ではなく、甲高い私の声だった。
済む世界の違うあなたが、毎日ずっと隣にいて、私の手を握りしめてくれるんだもの。
あなたを、好きにならない。
……そんなこと、出来るわけがなかった。
空っぽな私にとっては、あなたの横が唯一の居場所だった。
だから……私とは全く違う立場のあなたの気持ちも考えず、ふたりの体が元に戻りませんようにと、願っていたの。
だけど、そんな私の気持ち以上に、……あなたが大切だったから……。
あなたから離れることを心から願った。
もう、あなたに会えない。
……それに少しも後悔はない。
だけど、少しだけある心残り……。
あなたが、俺に惚れるなと言うから、本当の気持ちを最後まで伝えられなかった……。
……さようなら。
あなたのことが大好きでした。
ありがとう……。あなたの横は、とても幸せだった。
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