プレゼント
CD、小説、写真集。
Tシャツ、ジーンズ、ファーブルゾン。
ブーツ、マフラー、2WAYバッグ。
ピアス、リング、ネックレス。
優しさ、温もり、夢の夢。
「昔そんな歌があったね」
あたしは圭司のことを、竹村くんに相談していた。
「そうそう。こんなにたくさんのプレゼントをくれるくらいあたしのことが好きだったくせに、あの野郎、何で別れようなんて言うかな」
あたしは怒っていた。
だけど竹村くんは優しかった。
「それが彼からの最後のプレゼントだったんだよ」
あたしは聞き返した。
「と言いますと?」
「だから、この別れによって彩美には自分よりももっといい男がいるよってことを、彼が教えてくれたんだよ」
「ほほぉー」
あたしは思わず頬を紅潮させた。
「やっぱりあたしが惚れただけのことはあるね。かっこいいことしてくれるじゃん」
あたしはうれしくなって、圭司とツーショットの写メを見つめながら竹村くんに笑った。
「でもこんなに素敵なプレゼントをくれるくらい、圭司はいい男だったんだよ」
そうそう、本当にいい男なんです、圭司くんは。
「だから、次に会う男はそれよりももっといい男なんだよ」
圭司よりいい男って言ったら、すごいことになっちゃうよ。
「そんな人いるの?」
こうして見てみると、圭司って結構かっこいい顔してるじゃない。
「いるよ」
もう一度この笑顔を見てみたいなぁ。
「どこに?」
はぁー、圭司が好き好き大好きよ。
「ここに」
そう、早くここに来て来て。
「……」
「はっ?」
あたしは竹村くんを見上げた。
とても真剣な表情がそこにはあった。
「これが僕から彩美への最初のプレゼント」
今日はあたしの誕生日だった。
竹村くんは深夜のコンビニバイトでがんばって貯めたお給料で買ったんだろうと思われる、ブランド物の財布をあたしに差し出した。
あたしは一呼吸分の沈黙を挟んで、たまらず唸りをあげた。
「えぇーっ」
「受け取って。僕のプレゼント」
いや、プレゼントと言われましても……。
「僕と付き合ってください」
いやいや、付き合ってくださいと言われましても……。
「ずっと前から好きだったんだ」
好きだと言われましても、あたしはやっぱり圭司が好きなのです。
「ごめんなさい」
竹村くんにあたしから最初で最後のプレゼントを贈った。