表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリン騎士と農民姫  作者: 照喜名 是空
躍進の章:一年目・夏
37/83

遺跡探索・結 

 ◎帰還


 それから2日をかけてジャレオン老とゴブリン騎士はアントリー村に戻ってきた。


「おかえりご隠居!何か見つかったかい?」

「ああ、まあの、少しな」

「そうか、そりゃあよかった。生き甲斐とは言え、体を労ってくだせえよ」


 酒場のマスターが仕込みをしてワイン樽を動かしながらジャレオン老に気さくに手を振る。


「おっ、ゴブリン騎士だ!……あんた、鎧にそんな模様入ってたっけ?」

「う、うむ。少しな」

「自分で書いたの?似合ってるじゃん」

「うむ、かたじけない」


 隠し事の苦手な二人の対応はなんとも歯切れの悪いものであったが、それでも村の人々からはおおむね暖かく歓迎された。

 一目につかぬようにさっと移動して代官屋敷に入る。

 石造りのごく普通の家だ。他の家よりは大きいが。


「帰ったぞい」

「ん……おお、父上か。無事に戻ってこれて何よりだ。ほう、そなたがゴブリン騎士か。父上を無事に送り届けてくれたようだな。よくやった」

「うむ、これにて無事に送り届けさせていただいた。こちらにサインを」


 ゴブリン騎士は依頼主の代官ケネスにギルドの領収書を渡す。これに依頼主のサインがあれば依頼達成となるのだ。

 代官ケネスは線の細い男であったが、ごく普通の善良そうな男だった。身なりも良い。

 おそらくは文官肌なのだろう。さっとサインをすると領収書を渡す。


「うむ、確かに」

「待てゴブリン騎士!おぬしもいっしょに事のあらましを説明するのじゃ。わし一人ではボケ老人扱いされかねんわ」

「う、うむ……解った」

「……その様子では何かあったようだな。座り給え。長い話になりそうだ」

「ああ、面倒な事になったぞい」


 そうして二人は証拠品を交えながら事のあらましを説明した。


「う、ううむ……つまり遺跡の奧にある妖精郷に入り、そこで狼藉を働く武器商人を成敗し、女神から褒美をもらったと……?」

「まあ、うむ、そういうことじゃ。すまんな、厄介事で」

「ともあれ、よくぞ父を護衛してくれた、ゴブリン騎士。さて、事はどうするかだか……これはギルドとこの場にいる者だけで内密にしよう。事が発覚しそうになれば、いっそ白教の神明裁判で潔白を証明すれば良い。おそらく正統な防衛と判断されるはずだ」

「そうじゃな、それが一番穏便じゃろう。それで良いか?ゴブリン騎士」

「私もいたずらにこの件を吹聴する気はない」

「では、そういうことだ……」


 その時、窓の外でごとん!と音がした。

 窓の外を見ると、リュート弾きの少年が酒場に駆けだしていった。聞かれたのだろう。そして、これから事は知れ渡るのだろう……

 ゴブリン騎士とアントリー親子の三人は顔を見合わせ、全てを諦めた。


「あー……白教の神明裁判についての説明を聞くかね?」

「是非お願いいたす」


 三人は深々とため息をはいて、これから起こる面倒に思いを馳せた。

 なお、白教の神明裁判とは、白教の祈祷である『嘘看破』や『真実』など証言の確かさを証明する呪文を用い、事実を白銀の騎士神の名において明かし、その上で騎士神の判断を仰ぐ、というものだ。

 これらの祈祷の正答率は100%であり、それは騎士神が人々を常に見張っている証拠でもあった。

 その上で法と戒律に照らし合わせた上で刑罰がその場で『実行』されるのだ。

 利益のために異端の説やデマを吹聴した詐欺師がその場でバラバラにされた判決など、騎士神の苛烈さがよく表されているエピソードは枚挙に事欠かない。

 それを聞いてゴブリン騎士は震え上がったが、今回の場合は判例からすればおそらく無罪だろうとケネスは保証してくれた。

 ともあれ、一安心である。


『ゴブリン騎士と隠居のじいさん、遺跡に宝を探しに行った。

 ゴブリン騎士の無双の剛力、秘密の扉をえいやと開けると、そこはたちまち夢の国。

 妖精たちにもてなされ、緑の顔がまっかっか。

 それを見ていた強欲商人、うしろからついてった。乱暴狼藉働けば、夢の国の女神の怒りを買ってたちまち手打ち。

 手下の墓荒らし二〇人、ゴブリン騎士がずんばらりと切り倒せば、女神様からご褒美もらった。

 正直者のじいさんと騎士の心を持ったゴブリンにはお宝が、強欲商人には死の罰が……』


 早くも酒場から戯れ歌が聞こえてくる。

 いいや、これは手柄だ、名誉だ。そう思うこととした。

 後の面倒は忘れてしまおう……


 ◎我が家へ


 それからゴブリン騎士は酒場でさんざん持て成されるやら奢らされるやらで楽しくはあったが、非常に疲れた。

 一日の休養を使い、アントリー村でゆっくり休むと、ギルドに向かい、依頼達成を報告し、また一悶着と説明をこなし、そうして計一週間をかけて無事に依頼を達成してアッシュピーク村の我が家へと戻ってきた。涙が出そうだ。


「ただいま帰り申した」

「あっ、お帰りなさいゴブリン騎士さん。どうでした初依頼?」

「つ、疲れた……」


 それからゴブリン騎士は3、4日ほど家で過ごしたという。

 何しろ土産話には事欠かなかった。

 だが何よりも、今は平穏な家で安心したかった……

 なお、この件によりゴブリン騎士の噂はさらに広まることとなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ