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第7話 動物園は貧乏です! イベント案を考えよう(上)

 

「お金がありませんっ!」


「資金不足ですね……」


「研究費が足りない……」


 ”シルバー・ケイオス・ガーデン”の事務と会計を取り仕切る3人の女性が異口同音に同じことを主張する。


 そう、我らが”ガーデン”は、創設20年目にして最大?の危機を迎えていた。


 長引く戦争の影響で、帝国本国からの補助金が打ち切り……それでも自治王国からの助成金と入場料で、細々とやっていけるはずだったのだが……


「ユニコーンの野郎の食費がこんなにかかるなんて……」


「あはは……ウニ君、今までは年の半分くらい不在だったからね……それを前提で予算組んじゃってた……」


「でもなんで、ここ数か月は居てくれるんだろう? ウニ君のおかげで入場者数が増えるのはうれしいけど」


 ……半分オレのせいである。 奴と結んだ男の盟約(5話参照)により、すっかり感覚共有が気に入ったウニは”ガーデン”に入り浸っていた。


 オレとしても、女性陣のお尻の……げほげほ……見返りがあるので甘えてしまっている……おかげでティッシュ代がかさむ……。


 ルナと進展? してねえよ! 半端にご褒美があるせいで二人になると意識しすぎてしまう。 これも、姉と妹に挟まれて育った(以下略)


 ちなみに、ユニコーンが食べる”セントユーカリの葉”は、世界でもごく限られた地域にしか生えていない貴重な植物……あのエロクソ馬、無駄にグルメなのだ。


 とはいえ、ユニコーンがいる動物園として、ここ数か月の入場者数の上昇にも寄与しているので、痛しかゆしなのだが。


「入場者数は増えたといっても、入場料はそのまま……上昇する各種経費を差し引くと……利益は微増……セントユーカリの葉の購入代金にはとても及ばないね」


 メリッサが帳簿をチェックしながら指摘する。


「う~ん、そうはいってもなぁ……”ガーデン”は公営、簡単に入場料を上げられないんだよねー?」


 そうなのだ。 ”ガーデン”には自治王国に加え帝国も出資しており、帝国議会の承認がないと入場料も上げられない……何度も陳情しているが、戦争遂行にかかわる議題が優先なのか、後回しにされている。


 クソッタレの帝国政府め……オレを中央から追放した挙句、新天地の邪魔までするのか……呪われろ。


「とりあえず、広報部長としては新しい企画を考え、入場料とは別にイベント参加料を取ることを提案します」


 くいっ、とメガネを直しつつ提案したのは総務兼広報兼購買のアリシアさんだ。


 アリシアさんは、人間年齢換算で20代半ばのエルフの女性。 プラチナブロンドのロングヘア―を持つ、眼鏡で知的な女性だ。


 オレ達年少組のフォローもしっかりしてくれる、優しいお姉さん。

 仕事ぶりも抜群で、この”ガーデン”のキーマンの一人といえるだろう。


「たしかにそうですね、アリシアさん。 場内での個別企画なら、お金を取ることに政府の許可はいりませんっ! ということで、皆さんでその企画を考えようというのが本日の会議の趣旨です」


 前置きが長くなってしまったが、本日は休園日。


 各所の大掃除を終えたオレ達は、屋外にテントを張り、こうして集まっているというわけだ。


 会議の場所を屋外にしたのは理由があり、

「がうがう」

「グルルル」

「ヒンヒン」


 我がガーデンが誇る?

 3魔獣にも意見をもらおうという事で集まってもらっているからだ。


 この3匹の発言は、オレが”アニマルトーク”により同時通訳で進行するので安心してほしい。


「じゃあ、皆さんどんどん意見をお願いしまーす!」


 ルナの掛け声を合図に、各自考えていたアイディアを発表する。


「まずはオレから! わが”シルバー・ケイオス・ガーデン”には、見目麗しい女性たちがいます! バレンティ王国の暑い夏に効く! 水着姿のビールフェスタ!」


「たまにうれしいハプニングも……!」


[おお、イイじゃねぇか同士!]


 暑さで頭のネジが少々外れていたオレは、しょっぱなにぶっ飛んだ案を提示する。


 最初から完璧な案を出すとそれに決まってしまう……議論を活性化したいなら、ある程度ツッコミどころのある案を最初に出しましょう……オレは先日購入した、できる社会人のディスカッションについてのハウツー本を(以下略)


 心の友、ユニコーンのウニも賛同してくれる。


「はーい、レオくん、ウニ君、バレンティ王国風営法違反ですっ! 今日の晩ごはんはおかず抜きね♪」


 ピキッ!

 と青筋を立てたルナに一刀両断されてしまった……くっ……まだちょいエロトークを交わせる仲になっていなかっただと!


[なんだよぉ……人間どものルール、つまらねぇじゃねーかよぉ]


 思わずしょんぼりするオレとウニ。


「まったくこのひとりと一匹は……でも、出てきた案を捨てるのはもったいない……ここは生物学者でもある私がアレンジして」


「少しえろてぃくなテイストは残しつつ……法律違反でもなく子供の勉強にもなる……水生動物や、魔獣の交尾が見学できる……生命の神秘ショーはどう? 完璧じゃない? ぬるぬる……ヌルヌルだよふふふ」


「「「「…………」」」」


 あんまりな方向にぶっ飛んだ案に、思わず絶句する人間たち。


[ちょっと待たんか人間の娘! この誇り高き我に、人前で情事を見せよというのか!]


[いや、流石にボクも露出趣味はありませんので……あ、でも、ワイバーンは大空を飛びながらえっちするんですよ。 豆知識ですね]


[…………悪くねぇ]


 3匹の魔獣たちも非難轟々だ……何だそのマメ知識は……そしてこのエロ馬はどうしようもないな……。


「もー! みんな、えっちな方向から離れて!」


 いらないネタを投下してしまったかもしれない……会議はさらに迷走するのだった。


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