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第5話 ゲスコーン(ユニコーン)登場

 

 ”シルバー・ケイオス・ガーデン”に赴任して数週間、ようやく仕事にも慣れてきたところだ。


 出勤すると、まず動物たちに給餌、その後ルナや他の飼育員と手分けして、檻の清掃……ボランティアの参加者が少ない日には園内の見回りなど、様々な仕事がある。


 オレは大学出という事で、事務作業も担当するので、結構忙しい毎日を送っていた。


 事務作業は面倒だが、ルナと一緒に作業することも多く、彼女の私服を色々見れるので楽しい。


 ただ、ルナはどうしても無防備だ……総務兼広報兼購買のアリシアさんにお願いして、それとなく注意してもらっているが、仕事中に下着が見えてしまう事もしばしば(彼女は几帳面なので、事務仕事の時はちゃんと着替えるのだ)……


 そのたびに動揺して書類にインクをこぼしてしまう……主任飼育員のバーバラさん(60歳)からは、「若いっていいわねえ」とほほえましく観察されている。


 もし、もしだ……万一オレがルナと恋仲になったとき、理性を保てるだろうか……サルになってしまいそうだ……。


 などと、駅前のアパートから”ガーデン”に通勤する途中にそんな妄想をしてしまうくらいには平和だ。


「おはよう! レオくん! 今日は、3匹目の魔獣を紹介するね」


「3匹目……? ケルベロスとワイバーン以外にいるのか? それにしては仕事中に見かけなかったが……」


「えっと……彼は”ガーデン”から山脈へ続く森に棲んでるんだけど、気分屋さんなのでよく旅に出てるんだよね」


 一応、ソイツもこの”シルバー・ケイオス・ガーデン”の一員なんだよな……?

 そんなフリーダムでいいのだろうか。


「ふーん、それで、次は何だ? まさか、ドラゴンとかじゃないよな?」


 流石にドラゴンがいる動物園とか、聞いたことが無い。


「まっさかー。 さすがにドラゴンはいないよぉ。 ユニコーンの、ウニ君です!」


 へー、ユニコーンかぁ……って、ユニコーン!?


 皆さんご存じだとは思うが、ユニコーンは聖獣とも呼ばれ、めったに人前に姿を現さないことで有名だ。 その角は毒を浄化し、触れた人々に幸せをもたらす。


 過去にはその角を狙う密猟者に乱獲されたこともあったが、現在は国を挙げて手厚く保護されている。


 ユニコーンがいる動物園となれば、話題になってもいいのだが、あいにくオレは以前にその理由で”シルバー・ケイオス・ガーデン”の名前を聞いたことは無かった。


「それは、すごいな……せっかくユニコーンがいるなら、もっと積極的にアピールすればいいのに」


「う~ん、そうしたいのはやまやまなんだけど……ウニ君はちょ~っと、かわってて……うん、会えばわかるよ」


 ん? ルナにしては歯切れが悪いな……いったいどんな奴なんだろう?


 オレは、ルナと一緒にユニコーン用の厩舎に移動した。



「うわぁ……」


 おもわず、子供っぽい歓声をあげてしまうほどに、美しい聖獣がそこにはいた。


 真珠のようにきらめく白い肌、宝石のような赤い瞳に水色のたてがみ。

 ユニコーンの象徴である1本角は、神々しく輝いている。


「ふふっ……ウニ君、おはよう! 今日もきれいだね!」


 そんな聖獣を前にしても、ルナはいつも通りだ。


 彼女が優しくユニコーンの首を撫でると、彼も気持ちいのか、目を細めながら顔を擦り付ける。


「もう、ウニ君……くすぐったいよう」


 柔らかな日差しのなか、ユニコーンと戯れる美少女……正直このまま一枚の絵として飾りたくなるほど尊い……。


 おっと、彼ともコミュニケーションを取っておかなくては……相手は聖獣、失礼のないように……オレは”アニマルトーク”を発動させる。


[ふへへっへへ、今日もたまんねえぇぜ……ルナの処女臭はやっぱ最高だわww]


 ピキッ……!


 ……耳が石化した気がする……い、いや、これはおそらく()()()()()()()()()()()……翻訳術式は複雑だからね……


 すぅ……オレは深呼吸して心を落ち着けると、もう一度”アニマルトーク”を発動させた。


[ぐへへ、今日は上手いこと言いくるめてくら無しでルナを背中に乗せてやるぜ……もちろんスカート直パンで! [ピー]の感触がたまらんだろうなぁ……おっと、揺らし過ぎて”破っちまわないように”気を付けねぇと]


 バキィ!


[ふぐおっ!?]


 ……続けて聞こえてきた、あまりにゲスな言葉に、オレは無言でユニコーンに歩み寄ると、グーで思いっきり殴りつけた。


「レオくんっ!?」


 ルナが驚いているが、コイツをこれ以上ルナに触れさせるわけにはいかない!


「離れろ、ルナ! コイツとんでもねーエロ馬だぞ!」


 ルナは突然の出来事に、目を白黒させている。


[このクソガキ、やってくれんじゃねーか! 生命力を吸い取っちまうぞこの野郎!]


 ユニコーンに直接打撃など無意味……すぐ立ち直ったゲスなユニコーン……ウニの赤い瞳がオレを睨む。


[やかましい! このエロ馬が! 背中でルナの直パンの感触を楽しむなんて……うらやま……セクハラで首にするぞこのクソ馬!]


[はん! ユニコーンに人間どもの法律なんてかんけーねーんだよ! さらに、ユニコーンの処女好きは創世記にも記されている、万人が認める特徴! てめぇごときに文句を言われる筋合いはねぇ]


 くっ……確かにこの世界に伝わる聖典……創世記の一節に、女神たちの処女性を好む聖なる守り神として、コイツのことが書かれている……くそ、創世記を書いた奴は絶対にヘンタイだ!


 だが、ルナの為にもコイツを言い負かさなければ……オレは、人間ならではのエピソードでコイツにマウントを取ることにした。


[ふん……貴様がどれだけルナの[ピー]の感触を楽しんだとしてもだ! 所詮貴様は馬! 彼女と一緒に事務仕事をすることもできないんだ]


[てめぇ……なにが言いたい?]


[警戒心が無く……無防備なルナ……つまりオレは毎日、ルナの下着をのぞき放題という事だ!]


[な、なんだとぅ!?]


 ズガーン!


 ユニコーンの背後に電撃が走る!


 ……少し話を盛った……毎回動揺してトイレに走るが! マウントを取るためにはこれくらい強気に行くべきだ!


[こ、この野郎……俺ですらまだ見た事ねぇのに……]


[ふん、そうだろうな! ルナがここに来る時は、ほぼ作業着だからな! オレなんか歳も近いし! 私服姿で二人っきりの食事に行ったこともあるんだぞ!]


[ぐぎぎ……この外道がぁ]


 ……ちなみに、二人っきりの食事とは、ただの昼飯休憩の事だ。

 ”ガーデン”は職員が少ないので、ふたりで昼飯を食うことがちょくちょくある。


 うう、ルナとデートに行きたい……だがここで思い切って誘えないのが姉と妹に挟まれて育った(以下略)


[なんとかコイツを闇討ちに…………いや待てよ]


 物騒なことを言いだしたと思えば、急に黙り込むウニ。 なんだ?


[おいてめぇ、こっちに来な]


 ぐいっ、とウニがオレの作業着を噛むと、自分の近くに引っ張り寄せる。

 奴はひそひそと耳打ちしてきた。


[本当にルナの下着を見放題なんだな? オレは、”感覚共有”の魔法を使えるんだが、どうだ? ルナの下着が見えたときに、俺に共有してくんね?]


 なんと! どこまでもゲスな奴である! そんな事オレがOKするはずが……


[俺は、ルナや他の女の子(処女限定)をよく背に乗せてやるんだが……そん時の感触と、匂いをお前に共有すると約束してやろう……]


 なっ!? クソこのゲス馬! オレがそんなことを承諾するなど……いやしかし……お尻の感触か……


[ほれ、お試しだ]


「きゃっ」


 ウニは、ルナの服を咥えると、ポイっと背中に乗せる。


 ふわっ


 うおおおおお! こ、これはっ!


[い、いいだろう……これは男と男の秘密だぞ]


[ふ、交渉成立だ……よろしくなクソガキ]


 18歳健康男子、あっさりと陥落しました! 申し訳ございません!


「ふわわ……ウニ君とじゃれ合ってる……ユニコーンに触れる男の人、初めて見た! やっぱりレオくんのスキルすっご~~~い! 憧れちゃうなぁ……」


 くっ……キラキラとしたルナの称賛が心に痛い(数週間ぶり二度目)


 こうして、オレは伝説の聖獣ユニコーンとも奇妙な協定を結んだのだった。


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