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第11話 動物園は貧乏です! ゲスコーンの花占い

 

 またまた別の日。


 今日は、ウニの”ユニコーンのフラワーフェスティバル”がスタートする日だ。


 例のごとく、オレは自分の仕事を片付けると、午後3時……一番来場者が多い時間帯だ……に、”ユニコーンのフラワーフェスティバル”エリアに向けて移動していた。


 今日は単純に心配なので視察に行く……あのゲスエロクソ馬がどんなヤバイアトラクションを始めるか、気が気じゃなかったからだ。


 一応、テストプレイの時は普通だったが、アイツの事である。

 本番でどのようなヒネリを加えてくるか、分かったものではない。


 そういえば、今朝の新聞で見たが、共和国軍が魔獣を使った新戦術を投入し、帝国軍は大苦戦しているらしい。


 魔獣を使役できる人材を臨時募集する新聞広告も連日掲載されている。

 まあオレは、使えないSランクスキル”獣会話”を持つだけのしがない4級執務員ですので、ご期待には沿えないようですね。



 さて、そんなどうでもいいことは置いといて、今日も主人公であるオレは、ルナとエンカウントするのだ。


「あ、レオくんも見に来たんだ! 副園長として、新トラクションの視察を……というのは建前で、”フラワーフェスティバル”……お花と占い……女の子の夢だよね」


「ふふ、楽しみだなぁ! わたしはどんなお花をもらえるんだろう!」


 ルナも同じことを考えていたのか、途中で一緒になる。


 女神だ……几帳面なルナもすでに着替えており、ちょうかわいい私服姿である。


 豊かな金髪をサイドテールに流し、大きなの水色のリボンで止めている。

 涼しげな若草色のワンピースは、高原でたたずむ良家のお嬢様を連想させる。


 すらりと伸びた日焼けしらずの白い脚……足元はハートの飾りがワンポイントで入ったサンダル。

 一つ言っていい? やべえちょうお嬢様! オレが王子だったら即落ちで求婚しているところである。


「今日は女の子のお客さんが多いなぁ……レオくん、目移りしちゃだめだからねっ?」


 ウィンクしながら、いたずらっぽく微笑むルナ。

 何を言ってるんだ、キミが一番かわいいよ! どんな花よりもね!


 ……などとキザな事をさらりと言えたらどんなに楽だろう?


 数年前、好きだった女の子に向けてのポエムを綴ったラブレターを妹に見られ、大爆笑されたことがトラウマになっており、こういう時にごまかしてしまうのだ!


 ねーちゃんは「あらあら」と祭壇に飾ってくれるし……この感覚、妹と姉を持つ(以下略)


 さて、この流れとルナとのデート(らしきもの)も3度目なので、手慣れたオレはもう慌てない。

 さりげなくルナの手を取ってエスコートしよう。


「そうだ! 街のお店に素敵な香りのするリップがあったんだ! 今日付けてみたんだけど、どうかなっ?」


 ちゅっ


 突然、口紅を薄く塗ったルナの柔らかな唇が、オレの手の甲に触れる。


「!!!!」


「な~んちゃって、びっくりした……って、あれ? なんでレオくん前かがみなの?」


 オレの”紳士さん(たまに野獣)”は、ルナの極大無自覚攻撃に無事大破したのだった。



 ***  ***


「ふう……」


 例のごとくお手洗いを済ませ、ルナと合流したオレは、”ユニコーンのフラワーフェスティバル”に到着した。


 新アトラクションはこれで最後だから助かった……10個あったら、オレは干からびてしまうに違いない。


「おおお、すごい! 女の子がいっぱいだぁ」


 ユニコーンの厩舎前、「ユニコーンのフラワーフェスティバル」と書かれたゲートが目立つ広場には、お客さんがいっぱいだった。


 特に小さい女の子や、若い女性の姿が目立つ。


 女の子は、いくつになってもお花が好きだからね……ただ勘違いしてはいけない。

 好感度が低いうちに花を贈るのは地雷なのだ。


 オレは過去のトラウマを思い出し、今回はそんな失敗をすまいと心に誓う。


「じゃあ、レオくん一緒に並ぼっ!」


 オレは、ルナと一緒に行列の最後尾に着く。


 並んでいる間、ユニコーンのウニがお客さんに変なことをしていないか、”アニマルトーク”を発動させながら注意深く観察する。


 次のお客さんは15歳くらいの女の子だ。


「あ、あの……ユニコーンさん。 私の恋が実るかどうか、占ってください」


[うほほ、かわいいじゃねーか! くんくん、なるほど]


 パアァ……


 奴は鼻で女の子の香りを嗅ぎ、占いの結果と花を魔法で生成する。


 ちなみに、物質合成魔法は聖獣やドラゴンのみが使える超魔法。

 もっと有意義なことに使えばいいのに。


「やった! ”○”だ! このお花は……赤いチューリップのつぼみ? ありがとう! 大事に育てます」


 占いの結果が出たようだ。 ”○”か。

 恋が成就するという事か? はしゃぐ女の子。


 なんだ、意外にまともじゃないか……思わず胸をなでおろすオレ。


 次は……20歳くらいの少しギャルっぽい子。


「すご、本物のユニコーンじゃん! じゃあ、今年の男運を占ってよ!」


[くんくん、何だ非処女か……じゃあ適当に]


 パアァ……


 ……奴の話している内容は非常に問題だが、表面上は先ほどと同じく、何事も無かったかのようにこなしている。


 お客さんにはユニコーンの言葉は理解できないので、ギリギリセーフか?


「”△”かぁ……アタシ次第ってこと? 花は……7分咲きのアジサイが一つ? へえキレイじゃん! さんきゅ」


 ま、まあ……満足してもらえたようなのでOKか?


 その後も列を消化していくウニ。


 ん? ここでオレはささやかな違和感を感じた。

 奴の選ぶ”花”に法則性がある気がする……


 5歳くらいの女の子→青いチューリップのつぼみ

 女の子の母親→3分咲きのアジサイ一つ

 18歳くらいの女の子→一輪だけ咲いたアジサイ一つ

 10歳くらいの女の子→オレンジのチューリップのつぼみ


 ……おい、これ、まさか……


 なにかとても下品な想像をしてしまったオレだが、目の前に並んでいる女の子の順番が来た。


 メガネをかけた14歳くらいのとても地味な子だ。

 スカートも長いし、おどおどしている。


「あ、あの……今日の夜、流れ星が見えるか占ってください」


 おお、願い事もかわいい……オレの予想が確かならば……


[くんくん……な、なな、なんだとうっ!?]


 当然、ウニはゲスイせりふを吐くと思っていたが、彼女の香りを嗅ぐと同時に、驚愕に目を見開く。


 パアァ……


 ユニの奴が取り出したのは……満開のアジサイ3つ!?


「な、なんだとうっ!?」


 ウニと全く同じリアクションを取るオレ。


 ま、まさか……あの法則が当たっているなら、彼女はこの年で経験数が3桁!?


 なんてことだ……この世に女神はいないのか……打ちひしがれる間もなく、オレとルナの番だ。


「やった! わたしたちの番だねっ! 何を占ってもらおっかな……」


「やっぱり、この”シルバー・ケイオス・ガーデン”がこれからも繁盛するかについて!」


 うう、なんてけなげな子なんだ……荒んだ心が浄化されるようだ……だがその前に!


 オレはガシッ! とウニの頭を引き寄せると、その耳にささやく。


[おいこのクソ馬! お前が渡している花の意味……(ごにょごにょ)……なのか?]


[へえ、よくわかったじゃねーかこのエロガキ!]


[それじゃあ、さっきの娘の結果は何だ! そんな事が許されるのか!]


[しょうがねえだろ! 俺のスキルは絶対なんだ……俺だって信じたくねぇよ……]


[……お互い忘れることにしよう]


 いったい花が何を表すのか、各人の想像にお任せする。


「レオくん、どうしたの? おはなし終わった?」


 !! そうだった! ルナも占ってもらうんだった……詳細を説明して止めるわけにはいかないし(嫌われたくない)……


 これで花が”アジサイ”だったら俺はもう立ち直れない……頼む


 パァァ……


 悲壮な覚悟で見つめるオレ。 光の中から現れたのは……


 一輪の赤いチューリップのつぼみだった。


 ……思わず安堵のため息をつく……そういえば、チューリップの色には何の意味が?


[……へへ、教えてやろうかエロガキ]

 ウニの奴がニヤニヤして近づいてくる。

 なんだ? 聞いてはいけない気がする……でも気になる……


[実は、赤に近づくほど週当たりの回数が多いんだ……オ(自主規制)]


 ……その夜、オレは眠れませんでした。

 やはりこのエロクソ馬は封印した方がいいと思います。


 ちなみに、占いの結果は”○”でした!(手遅れ気味のフォロー)


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