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第10話 動物園は貧乏です! ジョンズ ブートキャンプ

 

 別の日。


 今日は、ジョンの遊覧飛行がリニューアルされる日だ。


 例のごとく、オレは自分の仕事を片付けると、午後3時……一番来場者が多い時間帯だ……に、”ジョンの遊覧飛行”乗り場に向けて移動していた。


 先日から続いていたテストプレイでは、四六時中アリシアさんの歓声と……悲鳴が響いていたが、いったいどんなアトラクションに仕上がったのだろう? ジョンは”ガーデン”随一の常識人なので、大丈夫だとは思うが……。


「あ、レオくんも乗りに来たんだ! 副園長として、新トラクションの視察を……といいながら、わたしも乗りたいんだ♪」


「ふふ、楽しみだねっ……わたし、絶叫マシンとか意外に好きなの!」


 ルナも同じことを考えていたのか、途中で一緒になる。


 ふっ、ヒロインとエンカウントしがちな主人公属性を持つオレだから(職場の人数が少ないので当然である)、抜かりなく着替え済みだぜ(帝国メンズノンノン読んで付け焼き刃しました)!


 天使だ……几帳面なルナもすでに着替えており、かわいいかわいい私服姿である。


 豊かな金髪をツーサイドアップにし、ワンポイントの赤いリボンで止めている。


 今日は上空に上がるという事で、トップスは黄色の長袖カーディガンに胸元は若草色のリボン。 ボトムスはチェックのスカートであり、どことなく帝都女学院の制服風だ。


 すらりと伸びた日焼けしらずの白い脚……足元はピンク色のスニーカー。 さすがに空を飛ぶのでスパッツを履いているが……ざ、残念じゃないぞ!


 なにが言いたいかというと、超かわいい! 超萌える!

 学生時代飛び級しまくったので、制服風のコーディネート……なんというか、ぐっとくるのだ!


 後になってわかる、そのありがたみ! 社会人の皆様には分かっていただけると思う!! そうでなければ、制服モノのごにょごにょがこんなに売られることは無いであろう。


 しかもしかも、ルナは年齢的に学生ど真ん中! コスプレ感もなく、めっちゃ似合っているのだ……。


 これでスタイル抜群とか……か、カーディガンでも主張する胸元の盛り上がり……これはもう……この世の天国といっても過言ではあるまい!


「えへへ……幼年学校を卒業してすぐ”ガーデン”で働き始めて……学校は夜間部と通信教育だから、制服姿に憧れてたんだよね……通販で買っちゃった♪」


 嬉しそうにクルリっと回るルナ。


 はっ!!

 ……学校終わりの午後3時……年頃の男女が制服姿でお出かけ……恐怖の絶叫マシンに思わず彼女が身を寄せてくる……ドキドキの予感……


 こ、これはもう! デートと言っても過言でないのでは!?


「レオくん、早く行こう? でっでも、ドキドキするから……持ってていい?」


 むぎゅっ


 オレが悶々と妄想していると、ルナはオレの腕を取り、一緒に歩きだす。 な、なんて柔らかい感触なんだろう!


 ああ、またあとでトイレに行かないと……相変わらず無自覚天使なルナに腕を引かれるまま、オレ達は”ジョンの遊覧飛行”特設エリアへむかった。



 ***  ***


「おお! 行列ができている!」


「すっご~~い!」


 少し小高くなった丘の上、そこにジョンの発着場はある。


「”ジョンの絶叫ブートキャンプ 初級と中級、そしてイッてるあなたは超級に! お好きなスリルをお選びください”……って、アトラクションの名前を変えたのか」


「選んだ級によって、スリルが変わるのかな?」


 入り口の看板が変わっている……”超級”だけ、文字がおどろおどろしいフォントになっているが、いったいどんな感じなのだろう?


 列に並ぶ人たちも、「やっぱ超級じゃね」「や、やだよ最初は初級にしとこうよ」などと、どの級を体験するか迷ってるようだ。


「なあ、ルナ。 オレ達はどの級を体験する?」


 列に並んだオレは、ルナに尋ねる。 どうやら、入り口に置いてある紙に希望の”級”を書いて係員に渡し、級ごとの列に並びなおす仕組みのようだ。


「それは、もちろん超級だよっ!」


「……えっ?」


 ここは初級でキャッキャウフフを……そうもくろんでいたオレの煩悩は、きっぱりと言い切るルナの声に打ち砕かれた。


「ル、ルナさん? いきなり超級は冒険しすぎじゃないでしょうか?」


「なにを言っているの、レオくん! 危険すぎるアトラクションになってないか冷静にチェックするのも副園長の務め! 断じて乗りたいからじゃないよっ(フンス)」


 どうやら、ルナは高い所とスリルが大好きのようだ……く、くっ……ここは男として、引くわけにはいかない!


「そっ……そうだな! 帝都遊園地の絶叫マシンを全制覇したオレだ、どんなスリルでもかかってこい!」


「わぁ、レオくん! 頼もしい!」


 ……もちろん、ウソである。


「あら……副園長にレオ君……超級に挑戦ですね。 うふふ」


 今日は発案者であるアリシアさん自らが受付しているようだ。


 ……超級の列には、オレ達含めて6人しか並んでいない……しかも、残りの4人は屈強な兵士たちに見える……だ、大丈夫だろうか?


 バサバサッ!


 ”初級”のお客さんたちを乗せて、ジョンが大空に飛び立つ。


 上空では、ジョンが軽く上昇や下降、旋回を繰り返し、そのたびに楽しそうな歓声が地上まで聞こえてくる。


 適度な刺激と適度なスリル……家族連れや、カップルには最適であろう……オレもアレが良かった……。


 ……ふふ、楽しかったね……もう、変なところ持たないでよ……


 降りてきた初々しいカップルがイチャイチャしている。

 くそう、オレもああなってやる……


 次、”中級”のお客さんたちを乗せて、ジョンが大空に飛び立つ。


 ぎゅーん


 ん? 結構速い上昇速度だな……”初級”とは大違いだ。


 くるん……ひゅーん


 うおっ!? 宙返りした! そのあと急降下だと……こ、これが中級なのか?


 地上に聞こえる声も、歓声というよりは悲鳴だ。


 ……ちょっと! あそこまで揺れるとか聞いてないわよ……でも、刺激的だったろう?……う、うん。そうね……


 降りてきたベテランカップルには良い刺激になったようだ。 なるほど、マンネリ化の打破には良い、と……


 最後……”超級”だが……


傾注アテンション!!」


「えっ?」


「ふえっ!?」


 オレ達6人が入場し、ジョンの前に行くと、突如アリシアさんが大声をあげる。

 思わずびっくりしてしまうオレ達。


「なんだそのダラダラした動きは! ジジイのファ○クの方がまだ気合が入っているぞ! 同志ジョン軍曹がお待ちだ! 早くしろ!!」


 ひ、ひえっ! おもわず背筋が伸びるオレ。 同席する4人の屈強な兵士たちは、すでに直立不動だ。


 グルルル、ウガッ!


「ここからは、わたしが軍曹のお言葉を通訳する。 汚いクソが詰まっている耳をかっぽじってよく聞け!」


 ”アニマルトーク”を使うまでもなく、アリシアさんがジョンの言葉を通訳してくれるようだ。

 ええ……”超級”って、こんなノリなの?


超級レンジャーを志望した貴様らの意欲は買ってやる……だが、戦場は貴様らの思っているようなママゴトではない!」


「これから貴様たちを鍛えてやるが、覚えておけ! 訓練が終わるまで貴様たちは人間ではない! ウジ虫にも劣る地上で最低の存在だ! わかったか! わかったら言葉の前と後にサーをつけろ!」


「「「「「サ、サーイエッサー!!」」」」」


「搭乗! 駆け足!」


 アリシアさんにたっぷりと罵倒されたオレ達は、ダッシュでジョンの背中に設置された座席に乗り込む。


「ふふっ……びっくりしちゃったけど、楽しみだね♪ それに、アリシアさん、カッコいい!」


 ルナがウキウキしている……えぇ……オレはもう泣きそうなんですが。


「それでは発進! 健闘を祈る!」


 カッ……!


 今まで感じたことのない加速度が掛かり……そしてオレ達は星になった。


「……うっぷ」


 5分後……ボロボロになったオレはジョンの背から降りた。

 手始めのシザース、インメルマンターンにスプリットS、トドメの捻り込みとは……ワイバーンの空戦機動の極意を見たぜ……気のせいか、会ったことのないおじいちゃんの笑顔が見えた……


「すご~い! すご~い! あー、楽しかったなあ!」


 髪がぼさぼさになっているが、けろりとしたルナが楽しそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。 この娘の三半規管は化け物か……。


 うう、何だこの敗北感は……しかも空戦機動の最中、ずっとルナがオレに抱きついてくるものだから……豊かなふくらみの感触がくっきりはっきりと……。


 上も下もケアが必要なので、オレはルナに一言断りを入れると、トイレに急ぐのだった。



 ***  ***


 帝国領対共和国東部戦線 上空


「うわあああああっっ!?」


 ドシュッ……


 飛行魔法を使い、敵部隊を迎撃していた同僚の魔導士が撃墜され、落下していく。

 完全に防御陣を貫通されていた……あの様子では助かるまい……


「くそっ! ワイバーンを使役した機械化魔導騎士だとっ!? 竜戦士なぞ、100年前の遺物ではなかったのか!」


 小隊長を務める魔導士は、共和国の新戦術に焦りを覚えていた。


 ……目先の魔導技術にとらわれ、過去のスキルを大切にしなかった帝国軍部の失態だ……!

 上層部を呪うも、彼が無事に味方の陣地まで戻れるかは、まだわからなかった……


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