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荒神という神

 真那と涼介が屋敷の縁側に沿って歩いて行くと、日当たりのいい縁側に寝転がっている神様の姿を見つけた。寝息に合わせて胸が上下し、絹糸のようなサラリとした白銀の長い髪が板敷きの床に流れている。

 いつも忙しい神様の、束の間の休息といったところだろうか。


「神様、お待たせ」


 真那が声をかけると、真那の肩に乗っていたアーと涼介の肩に乗っていたウンが、神様を目がけて走り出した。

 静かだった屋敷内に、トテトテカリカリという可愛らしい足音が響く。

 ところどころに鱗がある神様の白い腕が気怠そうに伸び、駆け寄ってきたアーとウンの体を撫でる。二匹はじゃれて遊ぶように、神様の腕に体を擦りつけながらクネクネと楽しそうだ。


『お帰り、真那。いらっしゃい、涼介』


 神様は起き上がって胡坐を掻くと、微笑を浮かべて露草色の瞳に真那と涼介を映した。

 真那は手にしていたケーキが入っている袋を顔の横に掲げる。


「さっそく食べよ!」

『そうだな。クリームがデロデロになってしまっては残念だ』


 また食い意地が張っていると笑われるかと思ったが、神様の食に前向きな対応に少しだけ驚いた。

 人間界のスイーツを食べるようになってから、神様も生クリームやカスタードクリームは、常温になると宜しくないということを学習したらしい。

 神様がパンパンと手を鳴らすと、三人分の円座が現れる。もう一度手を鳴らすと、土器の乗った赤い漆塗りの折敷が三つ現れた。


『これにケーキ乗るだろうか?』


 首を傾げた神様の肩から、白銀の髪がサラリと流れる。そこらへんの女子よりも美しい髪。真那は自分の黒い髪と比較して、わずかながらジェラシーを感じてしまう。シャンプーやトリートメントなど、気を遣っているはずがないのに、どうして神様の髪は美髪なのか。いつかその謎を解明してやりたいと思っているが、それこそ神業なのかもしれない。


「お皿は、少しくらい小さくても大丈夫だと思うよ」


 神様に答えつつ、ケーキが入っている袋から白い箱を取り出す。蓋を開いて中を確認すると、一つも崩れることなく原型を留めていた。

 ツヤツヤと苺が輝くタルトと、チョコが濃厚そうなガトーショコラ。そして濃厚なニューヨークチーズケーキの登場だ。


「うふふ。やっぱり、どれも美味しそう」


 ウキウキしながら土器にケーキを並べていると、不意に視線を感じた。そちらに目を向ければ、自分に向けられている同じ表情をした同じ顔が二つ。


「ちょっと……二人して、まったく同じ顔で私のこと見るのやめてよね」

「いやぁ、そうは言うけど」

『私と涼介は、きっと同じことを考えていたと思うぞ』


 神様と涼介は、髪と瞳の色と服装が違うくらいで、まるで双子……もしくは兄弟のようにも見えるくらい瓜二つだ。

 真那は、そんな二人に「同じことってなによ」と突っかかった。神様と涼介は顔を見合わせると、涼介は満面の笑みを浮かべ、神様は困ったような微笑を浮かべる。

 幸せそうな顔してる、と、二つの声がユニゾンした。


「やだ、そんな顔に出てた?」


 表情を確認するように、慌てて両手を顔に当てる。恥ずかしさで、頬のみならず耳まで熱い。

 神様と涼介は、声を立てて笑った。


「いいんだよ、真那。幸せそうなの見てると、微笑ましくて和むから」

『そうだぞ真那。真那の食い意地が人を幸せにしているのだ』

「もう! それ褒めてない」


 真那はむくれながら、空になったケーキが入っていた白い箱を分解して小さく折り畳んでいく。

『そんな真那も可愛いよ』と笑いつつ、神様は円座に腰を下ろした。

 涼介も円座に腰を下ろし、チーズケーキが載っている折敷を引き寄せる。真那はガトーショコラが載っている折敷を神様の前に移動させてから、残りの円座に腰を下ろした。

 神様が手を鳴らすと、白磁の徳利とお猪口が現れる。真那は通学カバンの中からストレートティーを取り出すと、忘れ物に気がついた。


「フォークが無かった!」


 代わりになるような物が、神様の屋敷にあるだろうか。真那はショックでシュンと落ち込む。神様はフムと考え『塗り箸か黒文字ならば……』と呟く。


「黒文字か……」


 クスノキ科のクロモジの枝を削って作られる楊枝は黒文字と呼ばれ、和菓子の主菓子を切り分けたり口に運んだりするときに用いられる。持ち手の部分に樹皮が残っているのが特徴で、爪楊枝と違って幅があるのだ。だが、洋菓子に向いているかといえば疑問が残る。

 黒文字をサックリと入れては、タルトの生地が粉々になってしまいそうではあるが、手掴み食べよりは上品だろう。いや、タルトは手掴み食べのほうが食べやすいかもしれない。


「お箸で、お願いします……」


 おずおずと頼めば、苦笑した神様が手を鳴らす。三人の折敷の上に、黒い漆で塗られた箸が現れた。

 真那は両手を合わせ、それでは~と音頭をとる。

 いただきます、と三つの声が重なった。

 ひと口大に切ろうと、タルトに箸先を入れる。サックリなタルト生地はなかなか切れない。箸先にグッと力を込めた。


「あ~ぁ……」


 使ったのが箸でも、危惧していたとおりにタルト生地が粉々に砕ける。欠片も残さず食べたいのに、これでは飛び散ってしまったタルト生地をチマチマと箸で摘ままなければならない。


「私、やっぱり手掴みで食べる」


 宣言するが早いか、ひと口大に切った苺の乗っているタルトを塗り箸で挟み、ヒョイと口の中に放り込む。箸を置いて慎重にタルトを手にすると、続けてパクリと頬張った。

 口の中いっぱいに、苺とカスタードクリームのヒンヤリした冷たさが伝わる。奥歯で噛み締めれば、苺の香りと甘酸っぱさと、カスタードクリームの甘さとタルト生地の香ばしい匂いで満たされた。


「んあ~! 美味しくて幸せ~」


 たまらん! と美味しさを噛み締めていると、神様の笑い声がする。


『ほしかったら、ひと口食べるか?』

「やった~! ありがとう」


 スイと、真那に寄せられた折敷に載っているガトーショコラ。端は切れていて、神様もひと口味わったあとみたいだ。


「それでは、遠慮なく……」


 一度は置いた塗り箸を再度手に取り、ガトーショコラを心ばかり切り取ってパクリと口に入れた。

 ねっとりと絡みつくビターなチョコレートの味わい。これなら、日本酒の御神酒にもよく合いそうだ。


「おいひ~! これ選んで正解だった! チョコの苦さがちょうどいいね」

『ああ。少し辛口の酒に、苦みと甘さの相性がいい』


 神様はお猪口を口に運び、ガトーショコラの味が残っているであろう口内で御神酒を転がし、味の変化を楽しんでいた。

 神様が喜んでくれていると、真那も嬉しい。


「ほら、約束のひと口」


 涼介の声に顔を向ければ、塗り箸の先に摘ままれたチーズケーキが目の前にある。


「わ! ありがとう」


 ストレートティーを飲んで口の中をリセットし、そのままパクリと頬張ると、涼介は楽しそうに笑った。


「なに?」

「リスに餌あげてるみたいで可愛い」

「な!」


 真那は咄嗟に両頬を手で覆う。食べ物を頬袋に詰め込むリスのように頬が膨らんでいたのだろうか。

とても恥ずかしい。


(っていうか、今のアーンじゃん!)


 気づくとさらに恥ずかしさが増す。恥ずかしいのに、口の中では濃厚なチーズが踊っている。


「恥ずかしいのに、口の中は美味しくて困る~」

「まあ、お茶でも飲みなって」


 折敷に置いていたペットボトルのストレートティーを涼介から手渡され、クイッと口に含む。茶葉の香りを味わってから、コクリと液体を喉の奥に流し込んだ。口の中がサッパリスッキリ。気持ちも全てリセットされた。


「なんかもう、美味しくて幸せだから恥ずかしいのどうでもよくなってきた」

『それでこそ真那だ』


 神様は楽しそうに笑い、塗り箸の先でガトーショコラを割ると口に含んだ。


『人間界には、いつの世も美味しい食べ物がたくさんあるな』

「また田の神様が来られたときには、別の物を用意するね」


 去年の秋にコンビニエンスストアで購入したパック入りのみたらし団子は好評だった。

 今度は洋菓子がいいか、それともまた和菓子がいいか。品物のリサーチをしておかなくては。


『また、前回のように事前に聞いておこう』

「そうしてくれると用意がしやすいわ」


 なるべく要望には応えたい。できる準備はしておかなくては。


「あ、真那……伯父さんに言われたこと、神様にお伝えしないと」

「そうだった!」


 ケーキの美味しさに、すっかり忘れていた。カバンの中から透明ファイルを取り出し、先程受け取ったチラシを一枚抜き出す。神様が読みやすいように向きを変え、どうぞ、と手渡した。


「今年の春祭りには、神楽を呼ぶんだって」

『神楽か……随分と久しいな。荒神様もお喜びになるだろう』

「荒神様?」


 真那が問うと、神様は不思議そうに首を傾げる。


『おや? 会ったことがなかったか? 祭りのときには、必ず来ておられるぞ』


 神様に言われ、どなただったろうと記憶を辿るも、まったくもって判らない。


『荒神様は、古くより存在される神様だ。この神社が建立されるよりも、ずっと前から村の守り神であらせられたのだ』


 伯池神社は、資料によると室町時代に建立されている。それよりも前だというのなら、いったい何年頃の話だろう。


『荒神様は、生命の根源とだとする信仰がある。荒神様の御霊が分身し、人間になったと考えられているんだ。そこで、生命を守護し、疾病災厄から護り、生命の糧である農作物の農凶は全てが荒神様の思し召しであると人間は信じてきた』

「原始信仰というヤツですか?」


 尋ねる涼介に、神様は『そうだ』と答える。


『だから血族の長を中心に、一族の祖として荒神を祀り、日々の信仰と年々の祭祀を怠らない。その上に七年目、十三年目を式年として、大々的な荒神祭りを行って来た。それは無病息災を願い、生命の長久を祈るためには、時々荒神様の御霊を自分達の体内に呼び戻さねばならず、神がかりとなる必要があるものと考えられたからだ。式年祭を行って、鎮魂するという荒神信仰は、最も古い信仰と言えるだろう』


「荒神というけれど、須佐之男命とは別なんですか?」


 須佐之男命とは、日本神話に登場する神様のこと。八岐大蛇退治が有名で、退治した八岐大蛇の尾から天叢雲剣を取り出し、姉である天照大御神に献上して、今では皇室の三神器の一つとなっている。

 涼介からの素朴な疑問に、神様は『別だなぁ』と呟いた。


『スサノオ様はすさぶる神であり荒神といわれているが、荒神様とは別の神だ。スサノオ様が荒神様と同じに見られるようになったのは、神社信仰の影響が強いな』

「同一視されちゃったってこと?」


 真那が問うと、神様は頷く。


『産土荒神、臍の緒荒神と呼ぶのは、生命の祖としての考え方。牛荒神と呼ぶのは、農耕生活に欠かせなかった家畜である牛の生命の根源も荒神様であると考えられ、さらに生活に最も深い関係のある火や土の神ともされている。式年に行う神楽に綱舞という演目があるが、これは荒神様のお使いと考えられている蛇をその年に取れた新しい稲藁で綱のように編んで作るんだ。藁で編んだ頭や口もあって、頭に三本の幣を立てて……二、三間の長さがある。こう……鱗に見えるように、藁の元を出して編むんだ』


「それ、見たことある!」


 社務所と拝殿の間に、伯池神社の御神木がある。その御神木と同じくらいの樹齢がありそうな大きな木に、藁で編まれた蛇が巻き付けられているのを見たことがあった。そして藁で編まれた蛇が巻き付く木の根元には、小さな祠が祀ってある。


「もしかして、そこが?」

『そう、そこが荒神様の祀られている場所だ。だいたい荒神社があるのは神社のような社ではなく、田畑の間、家の近くの小さな森、大きい木の根元などで、小さな祠に入っておられる場合もある。ここも今では広い神社となってはいるが……昔は、この場が村の集会所だった。当時は集会所の近くに荒神様が祀られている小さな祠があったんだが、祀られていたその場所は、今でも変わっていないんだ。この神社の境内に祀られている祠は、昔から場所が変わっていない。大事に、その場で、何百年とそのまま祀り続けられている』


 神として祀られる前の神様は、凄腕の修験者であり呪術師であったらしい。村を呪った大蛇を身の内に封じ、神となった神様。その神様が人間だった頃というのも、室町時代なのだろう。

 それよりも前の時代から存在した荒神様を祀る場所。鎌倉なのか、平安なのか、飛鳥なのか、それ以前から祀られていたのか。

 信仰の始まりがいつからなのかを考えると、途方もない。

 縄文時代や弥生時代では、神話に登場してくるような属性を持った神ではなく、自然を崇拝していた精霊信仰であった。


「だから荒神様は、原始信仰なのね」

『そういうことだ。疫病などの生命の脅威は、荒神の神慮とされた。その荒神の神慮をなぐさめるために舞われるようになったのが荒神神楽という神楽の部類だ』


 はい、と涼介が手を挙げる。


「三宝荒神も、荒神様と関係があるんですか?」

『三宝荒神は、仏教思想だな。仏法僧の三宝を守護し、不浄を厭離する佛神だ』


 神様は真那に顔を向ける。小首を傾げると、神様はニヤリと笑う。


「難しい話をしたと思うが、理解できたか?」

「数学や化学物理より理解できたわ!」


 自慢げに胸を張ると、アーとウンが『キキ~ィ』と鳴いた。その声は、とても残念感が漂っている。


「あれ? なんか私……呆れられてる?」


 アーとウンは互いに顔を見合わせると、涼介の後ろに隠れて出て来なくなってしまった。


「え~! ちょっとぉ」


 真那が頬を膨らませて不満を露わにすると、涼介に「よしよし」と頭を撫でられる。不貞腐れているのに嬉しさが込み上げ、プイッとそっぽを向くことにした。

 神様も楽しそうに笑い、手にしていたチラシに視線を落とす。


『ここの社中の神楽は、この集落に住む人間にしか舞うことが許されていない。舞の型も言い立ても、なにもかも、全て集落の人間達が口授口伝で大事に後世へ伝えてきている。こうして変わることなく受け継がれているモノを見ると……何百年とこの場に居る私にも、懐かしいという感情を思い出させてくれる。ありがとう。また新たな楽しみができた』


 チラシに目を通して微笑む神様に、同じような微笑を浮かべる涼介が尋ねた。


「祭りの日に神楽が奉納されるのは、いつ以来なんですか?」

『そうだな……最後は、真那が生まれるよりも前だったと思う』

「ってことは、十六年以上は経つね」

『真那と涼介は、今年で十七か?』

「そうだよ」


 真那は四月で高校二年生になる。誕生日はまだ先だけど、高二や十七歳という響きは青春真っ只中という感じがして、とても憧れだった。

 もっとキラキラしていて大人なイメージがあったけれど、実際の真那はそんなにキラキラしていないし大人じゃない。

 理想と現実は、とことん違う。


『高校二年生と言えば、進路を決めねばならぬ時期だろう。いつも、その年代の子等は、進学を希望する学校に合格できるようにと願い始めているぞ』


 伯池神社へ合格祈願に来る受験生の必死な姿を思い出したのだろう。神様は、目の前にいる高校生二人を心配そうな眼差しを向けている。

 神様の視線を受けて涼介は頷き、真那は逃げるように視線を逸らす。

 真那と涼介が通っている高校は県立で、普通科ばかりではなく商業科も福祉科も食品科もある。総合的な高等学校だ。学力はピンからキリまでで、トップの成績になると国立大学に合格するレベルの生徒までいる。

 ちなみに真那と涼介は商業科だ。


「俺は、まだ進学先は決めてないけど……春から塾の短期講習は受けるように申し込みをしています」

『真那は?』

「私は……専門学校に行きたいけど、まだどこにするか決めてないんだよね。できれば、推薦入試で入れると嬉しい。被服の関係であると、なお嬉しいって感じ」


 真那の答えを聞き、涼介は「そうなの?」と驚きの声を上げた。


「俺、てっきり真那は神職の学校に行くのかと思ってた」

「行かないよ。神様とこうしてるのは好きだけど……私には、きっと向いてない」


 なにせ、真那にとって神様は友達なのだ。

 誠心誠意お仕えしていくことはできても、それ以外の運営の部分はどうだろう。それに、神社を継ぐのは、伯父の息子達である従兄だ。従兄は二人共、神職になるために都会の大学に通っている。

 真那は今のように、神社が忙しいときに手伝うくらいで十分だ。


『お仕えするに向き不向きとは、なんたる不届きな物言い!』


 突如、真那は知らない声に怒られた。


「えっ、誰?」


 聞いたことが無い声に、緊張が走る。どこからだろう。声がした方向を探るべく、真那と涼介は視線を巡らす。アーとウンは、グルルと威嚇の唸り声を発した。


『そこだ』


 神様は気配を掴むと、指をパチリと鳴らす。


『ギャッ!』


 短い悲鳴と共に、どこからともなく黒い塊が投げ出された。

 砂利が敷き詰められている庭に投げ出されたのは、尻尾がフサリとした、柴犬くらいの大きさをしている獣。

 アーとウンは毛を逆立てると、牙を剥いて威嚇を続ける。

 神様は立ち上がり、ゆったりとした足取りで縁側に歩み出た。


『なにか入ってきたのは、気配で分かっていた。お前は、どこの誰だ?』


 神様の静かな声音を聞いていると、掴まれたように真那の胃は少しだけ縮む。怒っているのでもなく、問い質すその声には、逆らうことを許さない響きが含まれている。

 こういう神様を目にする機会がほとんどなく、真那にとっては新鮮だった。けれど、その姿には神としての威厳があり、畏れの感情を抱く。


(神様は、やはり神様なんだ)


 友達として接しているけれど、本来ならば友達として接することが許されない存在。姿を目にすることもできない存在。普通の人は唯一、察知する気配でのみそれと感じることのできる、崇め奉られる存在。

 真那の友達として先程まで談笑していた神様と、今の何者かに対峙している神様は、まるで別人だ。


『伯池の神様、お許しください。ご挨拶の機会を伺っておりました』


 庭に投げ出された獣は身を起こすと慌てて姿勢を正し、恭しく頭を垂れた。フサリとしている尻尾も垂れる。

 そこにいるのは、毛の色が白一色の、一匹の狐だった。


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