7話 兆候
「っ………… よしっ、10分達成!」
クリフォードは木刀に雷を纏わせたままの状態で言う。
そう、クリフォードは、半年の時を経て雷を纏わせることに成功したのである。やったぜ!
雷を纏わせるのにも色々な苦労があった。暴発してしまうと、魔力が半分ほど持って行かれ、しかも、電流が体中に流れて、結構痛い。そして、魔力が完全に回復するのに半日ほどかかるため一日に4回しか練習ができないのだ。
まだ、威力は心もとないが、それは後々練習して威力を上げていく予定だ。
「さて、次は小太刀を作りたいけど、ナイフの刃がボロボロだからな…… 」
そう言ってナイフを見る。確かにボロボロだ。これだと野菜も切れるか怪しい。
「買いに行くか」
そういって硬貨が入ってる麻袋を持つ。これには二年間狩りで集めてきた金が入っているため、結構な額が入っている。
クリフォードは階段を降りて長い廊下を進んで外に出る。長いといっても10m程だが。その時、ムワナが無機質な目でこちらをじっと見てきた。凄い気味が悪い。フェルトもこちらを見てニヤニヤしている。いつもは、ほとんど放置されてる状態なので、こんなにじろじろ見られることはない。本当に気味が悪い。
それをなるべく意識しないようにして、武器屋へ向かっていく。
武器屋の扉を開けると、いつものように若い店員が暇そうにしている。
「……いらっしゃい………… 」
そして、いつものようにやる気のない声が飛んでくる。
クリフォードはその若い店員に近寄って、ボロボロのナイフを見せる。
「あの、このナイフのよりも硬い素材でできたナイフってありますか?」
そう言うと若い店員はボロボロのナイフをまじまじと見て、
「そうだなぁ…… ちょっと待ってろ」
そう言うと、若い店員はボロボロのナイフを持って、店の奥へ消えて行った。
そして、10分程経ってから、ようやく若い店員が出てきた。手には、蒼い刃が付いたナイフを持ってきた。デザインはシンプルだが刃が蒼いためか、結構カッコいいなとクリフォードは思う。
「これだな。値は結構張って45万ボルグだ。どうする? 」
そう聞かれてクリフォードは麻袋の中身を見る。そこには大きな金貨が47枚ある。
(結構ぎりぎりだな。でも、前に買ったナイフを買うよりは良いかな? 金の使い道もあんまりないし)
「じゃあ、それにします」
そう言って、クリフォードは大きな金貨を45枚渡す。すると、若い店員は、蒼いナイフにカバーを付けて渡してきた。どうやら、蒼いナイフは切れ味が他のナイフとは段違いの様で、怪我をしないようにという配慮だという。人は見た目によらないなとこの時クリフォードは思った。
「ありがとうがざいます」
クリフォードは蒼いナイフを握り締めて家へ帰っていった。
クリフォードは早速蒼いナイフを使って木材を削ってみる。
「おぉ、凄い切れ味だ! すいすい削れるぞ!」
大声を上げてしまうほど切れ味がすごい。45万ボルグを払っただけの価値はあるとクリフォードは思う。
そして、クリフォードはまた、木刀を作るべく、ディノアの木を削っていくのだった。
あれから1ヶ月が経った。ディノアの木は、結構木刀の形に近づいてきているが、まだ歪な形だ。だが、半年以上かかった作業が僅か1ヶ月で出来ているので、ナイフを買い替えて良かったと思う。
そう考えながらディノアの木を削っていると、コンコンと扉を叩く音が聞こえて、
「失礼します。クリフォード様。今から王都に行きますから準備してください」
と、急に言われた。
「え? 」
余りにも急だったので、間抜けな声が出てしまう。
(あれだよな、王都と言えば、あのおっさんがいるところだよな)
「あの、本当に僕ですか? 兄さんと間違えてませんか? 」
それしか考えられない。クリフォードは両親に嫌われており、自分を王都に連れてくるなんてあり得ないのだ。
「はい。クリフォード様で間違いありません」
どうやら間違いでは無い様だ。だが、おっさんがクリフォードを呼ぶ理由が分からない。何か企んでいるな、とクリフォードは思った。
だが、断る理由もないので素直に従ってやる。
「だけど、何で急に王都なんかに?」
「二日後はクリフォード様の十歳の誕生日なのでお祝いがしたいとの事だそうです」
(そういえばそうだったな。誕生日なんてどうでもいいから忘れてたわ)
「えっと…… 今からですか? 」
「はい、今からです」
「…… 分かりました。 準備します」
そう言ってクリフォードは準備を始めた。準備といっても特に持ってく物はないので、木刀ニ刀と蒼いナイフを持って行くことにした。
家から出ると、そこには粗末な作りの馬車があった。こんなもので王都に行くのかと少々疑問に思うが、クリフォードはこの街からは山へ狩りに行く位しか出ていないので、この世界の馬車はこんなものなのかと思ってあまり気にしない。
「さぁ、お乗りください」
クリフォードは言われるがまま馬車に乗る。そして、30秒も経たない内に馬車は出発した。