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91・大佐の言い分

前回のあらすじ


プチダークを抜けてきたギャレズリー大佐と一騎討ちとなったアネット。“盲目さん”のスキルを駆使し相手の武器を奪うも油断をし反撃を許してしまう。


そこにロゼリーヌ率いるテオテリカ兵の到着で難を逃れるのだった。


「双方そこまでだ! 矛を収めよ!」



 突如としてよく通る男の人の声が戦場を駆け抜けた。混戦を極めた現場だったけど全員その声を無視する事が敵わなかった。僕の耳に響く集団の・・・大群の足音。おそらくハルメリーの兵士達はそれを目の当たりにしたんだろう。皆一様に神妙にし持っていた剣を手放した。



「ジョストン!」


「遅ぇよ まったく・・・」


「! その声 ロゼリーヌさん?」



 その大群の中から聞こえたロゼリーヌさんの声。どうして彼女があそこから・・・ まあでもこの大群が取り敢えず敵でない事は確かなようだ。


 そんな中を此方に駆けてくる足音が1つ。それはそのまま走って来ると思い切り僕に抱き付いてきた。



「ミストリア 君までどうしてここに・・・」


「アネットも無事だったようね 間に合って良かった」


「ロゼリーヌさん これはどう言う・・・どうして貴女が? それにこの人達は・・・」



 そう聞いてみたところ目を反らされた。気がする・・・ 「あぁ それな」と、代わりにジョストンさんがその先の言葉をつづった。



「実は俺達は囮だったんだよ 俺達を先行させて敵が食い付いたところを迂回し ロゼリーヌと冒険者数名 それと町長が領主の元へ向かう・・・ 最初からそう言う手筈だったんだ」


「え~・・・ それって・・・誰の発案ですか バードラットさんですか?」


「まぁ否定はしない」



 何と無くあの人の立案しそうな作戦だと思った。それにしても領主様の娘さんを囮に利用するなんて思いきった事をする。追い掛けてきたギャレズリー大佐にはさぞ旨そうな餌に写った事だろう。



「貴殿がギャレズリー大佐とお見受けしますが 今回の騒動の発端 テオテリカにてご説明願いたい」


「うむ 相分かった」



 テオテリカ兵に促されたギャレズリー大佐は、抵抗するでも言い訳をするでもなく素直に応対した。先程までの激情は何処へやら。まるで流れ作業のように淡々と言われるがままに応じていく。


 大佐の兵達も鶴の一声で彼の後に続いた。何とも潔い。言葉にすればその一言だけど、その連帯感にはどこか薄気味悪さを感じた。


 それから何事も起こらずテオテリカへと到着した僕達は、そのままこの街の軍事基地なる場所へと通された。どうやら直接領主様に謁見する訳ではないらしい。まあ理由は何であれ、軍と事を構えた人間を領主様の元に連れてく訳にもいかないものね。


 と言う訳で領主様のお膝元でやらかした僕達全員仲良く事情聴取と相成った。


 かなり広目の大部屋で僕達とギャレズリー大佐そしてディゼルが並べられる。僕達には正義を成すと言う大義名分があるのだけど、ギャレズリー大佐は何故か素知らぬ顔ならぬ感情で座り続けてる。キモが座っているのか無神経なのか。


 それとは対照的にディゼルはとてもばつが悪そうだ。良心の呵責なのだろうか。



「それでギャレズリー大佐 今回このような暴挙に出た理由をお聞かせ願おうか 私には町長として全てを聞く義務があるし ハルメリーの住民には知る権利がある」



 この声はハルメリー町長のデュダル。そう言えば本命の集団とテオテリカに来たって聞いたっけ。まぁ自分の親が目の前にいればそう言う感情にもなるか。町長はなるべく気にしないように努めてるけど感情が見えてしまうと・・・ね。



「暴挙・・・ はて 何の事やら皆目検討がつかんな 俺は緊急時に適切な対応をしただけだ しかし中には此方の命令も聞かず 自分勝手に町を飛び出す輩もいるようだが?


 今回の事にしたって 町の住民がモンスターの牙に傷付けられぬよう こうして自ら出張ってきたと言うに 良くやったと感謝こそされるべきところを暴挙などと・・・ よくも言えたものだな」


「報告によれば 皆口を揃えて襲われた と証言しているが? 彼等はただ町の状況をかんがみて冒険者なりの防衛手段をとっていただけだ ギルドの正式な依頼として受けている証拠もある」


「であるなら我々とその者らの見解には齟齬があるな 此方も選りすぐりの冒険者達に協力を仰いでいたのでな そもそも緊急時においては我々に権限が委譲される 程度の低い冒険者が 名声欲しさにしゃしゃり出られては此方の任務に支障をきたすのでな ご遠慮願っただけだ 私としても余計な犠牲を出したとあっては ハルメリーを守護する者として面目が立たんでな」


「では無実の市民を不当に捕まえ勾留した件についてはどう答える」


「主観の相違だな この非常時に問題行動を起こした者を安全上一時的に隔離したに過ぎん どう言う基準を元に判断したかは そこに居るお主の(せがれ)にでも聞いてみるがよい」


「・・・・・はぁ?」



 大佐の一声で一斉に注目を浴びたディゼルは何やらすっとんきょうな声を出した。



「な 何だよ・・・ お! 俺はお前に町で問題起こしそうな奴を捕まえろって言われたからそうしただけだろっ!」


「と こう言う訳だ 俺は町長の息子の手腕を信じて任せたのだが よもや無害な市民を召しとろうとは・・・ これは俺の目が曇っていた事を素直に認めねばならんな 申し訳ない ()いては直ちにハルメリーへと戻り 急ぎ彼等を解放してやらねばならないな」


「つまりディゼルの一存で捕まえたと?」


「そう言う事になる」


「はぁ~!? なんだそりゃ! ふざけんなっ! お前につけば町長になれるって! だから協力したんじゃないか! お前だってクーデターを起こして町の実権を握ってやるって言ってただろ!」


「何の事かな? 町内会議でも述べた通り俺の願いはハルメリーの未来と平和だ」


「なっ 何だそりゃあー! テメェが下手こいたクセにヤバくなったら裏切んのかよ! 人を乗せておきながら今更それはないだろ!」



 大佐の余裕は退路を確保していたからだろう。ディゼルは体よく使われてた訳だ。利用するだけ利用して。どうしてそんな哀れむような感情ができるのだろう。僕は大佐と心を共有できそうにはない。



「ディゼル・・・ お前はそんな気持ちで町長になろうとしてたのか! 情けない・・・ お前は一体私の何を見てきたのだ!」


「何を? 何をだと!? あんたこそ俺を否定しかしてこなかったじゃないか! 家にいれば愚痴しか言わねぇ 正直窮屈でしかなかったぜ! それに親父が町を治めてたって状況は一向に変わりゃしねぇ! だったら俺がやったって良いだろ! 俺にはプランがある! ハルメリーを今よりももっと繁栄させてやる!」


「バカタレがぁ! 手前勝手の理想の為に他者を犠牲にして何が繁栄か!」


「親父だって町のトップならもっと好きにやりゃぁ良いだろ! あんたが率先して何でも決めりゃゴタゴタしねぇんだ!」


「それが間違ってると言ってるんだ! 町は様々な事情の人達で回っている そこに序列など作れば町が歪むわ!


 町長と言うのはな 人の上に居るのではなく 寄り添わなければならない立場なんだ 色々な人の事情を汲み 擦り合わせ 誰もが納得できる形に整えなければならん仕事なのだ


 だからこそ人の苦悩も痛みも誰より知らなければならん 決して居丈高に威張りくさって良いものではない!」


「でも! でもっ・・・・ う・・・ うぅ・・・」



 父親の言葉が刺さったのかディゼルはその場に崩れてしまった。理想と現実の違いをまざまざと突き付けられてディゼルの心は困惑で染まっている。でもそれ以上に傷を負ったのが親である町長かもしれない。これで親子の距離が離れなければよいのだけど・・・


 でも今は大佐だ。


 もうここまでくると大佐以上の権限を持つ者に委ねる他ない。それは領主様の沙汰なんだけど、この大佐が素直に受け入れるようには思えない。事が済んでも虎視眈々と機会を窺いそうな、そんな冷静さで座している。


 それからテオテリカの役人も交えての話し合いになったけど、やっぱりその場で直ぐ結論が出る問題ではなかった。


 取り敢えずのところディゼルと大佐はこの場に軟禁と言う形で留め置かれる事が決まりこの場は解散となった。おそらく結果が出るまで数日は掛かるだろう。


 僕としては一刻も速くハルメリーに戻って捕らえられてるマルティナを解放したかったけど、折角テオテリカまで来たのだしミストリアの里帰りだ。親子の再会の時間があっても良い筈だ。


 僕はジョストンさん達に事情を説明して時間を作ってもらった。兵士の人に馬車を用意してもらい僕とミストリアは彼女の自宅へと向かう。やはり久し振りの実家に心がソワソワしているようだ。


 テオテリカも領主様のお膝元と言うだけあって発展している街並みのようだ。直接それを見る事はできないけど、行き交う人々の喧騒からそれが伝わってくる。喧騒と言ってもスプリントノーゼのそれとは雲泥だ。


 馬車はそんな街の中を走り続け、ようやく停車した場所は優にハルメリーの端から端を通り越す程の距離だった。流石は領都テオテリカ。ミストリアも鼻が高そうだ。


 そんな街の更には頂点に君臨する領主様の根城はさぞかし大きいのだろう。直接見る事ができないのが残念だ。 ・・・なんて感慨に耽ってると「コンコン」と場所の扉がノックされた。



「申し訳ないがアポイントメントの無い方をお通しする訳には・・・ ・・・ ・・・へ?


 ミストリアお嬢様? ・・・え しかし そんな・・・」



 彼女の顔を見たのだろう男性は門番の人だろうか。いきなり帰ってきたミストリアの存在にえらく困惑している。やっぱりこの規模の家となると事前に連絡するのが通例なんだろうか。貴族ともなれば色々と準備もあるだろうし。



〔ただい──りました 早くお父様──母様にお───たいわ ここを─して下さる?〕


「え あ え・・? は! はい!」



 ここを出たときは塞ぎこんでいただろうミストリアが成長して帰ってきたのだ。門番さんの驚きようも分かる。それにしても・・・大分彼女の文字も読めるようになってきた。


 ガラガラと門が開けられ馬車は敷地内を進む。とは言えそこは貴族様の住居。ルディアさんの家同様入り口から玄関までは相応の距離が設えられていた。・・・何故だろう。見栄?


 到着まで「まだかなまだかな」と思っててもゴールはあるもので、ミストリアの自宅に着いた僕達はそのまま家の中へと通された。先に知らせが走っていたのか玄関を通ると両サイドに人がズラリと並んでいる。



「「「「お帰りなさいませ」」」」


〔ただいま〕



 たった一声。何気ない返答に並んでた彼等は驚きで皆綺麗に変色していた。僕もこれには驚いた。思い返せば彼女と初めて会った時とは似ても似つかない色。きっと表情とかにもそれが出てるんだろう。


 それだけにここを出る際は本当に酷い状態だった筈だ。


 部屋に通された僕達は椅子に座って領主様を待つ事になった。ミストリアにしてみれば久し振りの再会。しかもちゃんと魔法まで使えて成長した姿を見せる事ができる。



「ミストリア 緊張してる? ・・・大丈夫だよ ハルメリーで培った事や経験した事をそのまま話せばいいと思う 君の成長をきっとお父さんも喜んでくれるさ」


〔そうかしら・・・ そうだと良いわね 家に居たと─は半ば喧嘩状態だったのだけど こうして久し振りに──となると 何をどう伝えていい─か分からなくなるわね〕


「大丈夫 こうしてコミュニケーションをとれるようになったのは何より大きいよ それに目標も出来たんでしょう? 伝えるなら近況でいいと思うよ」


〔そうね そう言うものよね・・・?


 ん? 何だか今 会話が成立していたような?〕


「うん ちゃんと見えているよ ミストリアの言葉が」


〔え・・ それって・・・ 目が見えるようになったって・・・事?〕


「ううん この旅の途中でさ 人が意識した物が色付いて見えるようになったんだ だからなのかミストリアの水の文字も読めるようになったみたい って言っても小さい頃に盲目になっちゃったから 読めない字もあるんだけどね」


〔そう・・・ そうなのね 私はやっと貴方と言葉を交わす事ができるのね・・・〕



 その言葉を最後にミストリアは泣き出してしまった。今の彼女の感情を推し量るのは野暮と言うもの。僕は彼女の手を握りしばらく隣に座る事にした。





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