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8・洞穴の奥

あらすじ


初めてコドリン洞穴に入った。

「ジョストンさん・・・今何か感じませんか?」


「いや? 何も感じないが」


「そう・・・ですか」



 僕達は今、こんなにも歓喜の感情に包まれているのに、ジョストンさんには何も伝わってないと言う。こんなに綺麗な光景なのに何だか勿体ないな。


 ミーメが喜んでる────


 “盲目さん”がいうミーメって誰だろう。



「盲目さん ミーメって誰?」

『ミーメは精霊さんだよ~ この家に住んでるの~』


「精霊さん・・・スキルさん意外にも精霊さんっていうのもいるんだね また1つ世界が広がった感じだ」


「はぁ~~~~~~!!? ちょちょ・・ちょっと待て!! 精霊さん!? あの精霊さん!? 世界を構築するって言う!?」



 キラキラな世界が見えていないのにジョストンさんは“精霊さん”と言う言葉にもの凄く反応した。そんなに有名なのかな。まるで好きなものでも探すみたいに辺りをキョロキョロし始めた。



「何処だっ? 何処にいる!?」


「盲目さん そのミーメって今ここに居るの?」

『ここじゃないよ もっと奥の方~ ミーメはねぇキラキラを作ってるんだ~』



 “盲目さん”が言うには、ミーメはコドリン洞穴の奥地に住んでいてキラキラを作っているらしい。キラキラが何かは分からないけど、ここは鉱石が採れると言うし宝石か何かを作ってるのかもしれない。



「僕もミーメが作るキラキラを見てみたいな だって今 僕の目にはこんなに綺麗な世界が広がってるんだもん」

『うん 綺麗だよね~』


「ちょっ 待て待て待て! 精霊さんって何だよいきなりっ 本当にいるって言うのか? あの伝説が・・・ アネットお前な この事絶対に誰にも言うなよ? まぁ言ったところで誰も信じないと思うが」


「は はぁ それは構いませんけど・・・何故?」


「いいか? もしもの話だ もしも誰かがその精霊さん連れ出したらどうなる そもそもダンジョンって場所は不思議でな 例えば鉱石を掘ってもしばらくすれば掘られた場所は元に戻ってるんだ


 自然の法則では絶対あり得ない事がダンジョンでは起こんだよ 皆それが当たり前って思ってるが その不思議の源がもし精霊さんだったら? その精霊さんがダンジョンからいなくなったら?」


「あ・・・」


「だろ? だから絶対に他に漏らすなよ?」


「は はい・・・」



 鉱石が採れなくなったらここは冒険者の町ハルメリーではなくなってしまう。多くの人の仕事がなくなって一気に錆びれてしまうだろう。僕の望む冒険も無くなってしまう。


 それは嫌だ。



「つってもなぁ ダンジョンを踏破するのも冒険者の目標の1つだからな まぁ いつか誰かが精霊さんに辿り着くのかもしれないけどな」


「そう・・かもしれませんね でもそれが僕だったらいいな このキラキラをもっと見ていたいもの・・・」



 “ミーメ”の歓喜は治まったのか、僕の目にまたいつもの暗闇が広がった。初めてのダンジョンでこんな素敵に出会えるなんて。これでまた1つ目標ができてしまった。冒険者になる。そして“精霊さん”に会いにいく。



「それにしてもお前の盲目さん 何でそんな事知ってんだ? もしかして精霊さんに会った事があるのか?」


『あるよ~ ミーメがまだお家を探してる時にお話した事ある~』


「マジかよ・・ ここが発見されたのが数十年前だから お前って結構長生きなんだな ってかスキルさんって死なないから不思議でもないか 確か生物と言うより概念的な存在だったかな?」


「そうなんですか? 凄いですね・・・」


「でもそうか そうなるとミーメって精霊さんには感謝だな ミーメがここを家に選んでくれたから俺達は食い扶持を得られてんだから」



 もしここにコドリン洞穴が無ければ僕もマルティナ達と一緒にいられなかったかもしれない。それを思うと本当に感謝しかない。



「そうですね」


「・・・戻るか」


「はい」



 ここに来るまでとは違って今のジョストンさんは何だかフワフワした色になっている。この色は家族で過ごしている時によく見る。彼も僕の事をそう思ってくれたのだろうか。



「まぁ こっからが大変だけどな」



 と言われた僕は出口の長蛇の列に並ぶ体験をする事になった。あ・・これマルティナに怒られるやつだ・・・



 ★



 私の家は古い建物が迷路のように入り組んだ旧市街と呼ばれる所にある。


 何でも昔は戦争があって、この場所も防衛の拠点として作られたんだって。迷路のような構造は当時の名残ってお母さんから聞かされた。


 それも今では風化が進んで建物も傷んだり崩れてたり。栄えている大通り沿いから離れる程、人の営みが薄くなっていく。


 私は今、そんな一画の開けた場所で素振りをしている。何故かと言うと一緒に冒険者になってアネットを守らなきゃいけないから。


 でも一番の理由はスキルさん。


 少し前にここを通り掛かった時に私がずっと探していた“戦士さん”が偶然目端に写った。この子はこの場所が気持ち良かったのかお昼寝をしていた。



「ど どどど どうしよう・・・ どうしたらいい?」



 不用意に近付いて大丈夫かな。驚かせて逃げられたらどうしよう。そんな思いもあったけど、私だってずっと探してて仲良くなりたい気持ちがある。


 だからソッと近付いてちょっと撫でてみるだけ・・・


 ソッ・・・


 触れた瞬間ビクッとしたけど“戦士さん”は逃げないで、それどころか撫でさせ続けてくれる。



「へへ・・・ウヘヘ・・・」



 どうしよう。可愛い。お持ち帰りしたい・・・ いやいやいや。したいんだけど、そうじゃなくて。契約だ。この子が私のスキルさんになってくれる為の契約を・・・


 どうやって?


 見付ける事ばかり考えて契約方法なんて調べていなかった。アネットはどうやったんだろう。契約・・契約・・・契約書? ん~違うっぽい。


 よく分からないのでスキルさんが気に入りそうな事をやってみる事にした。急いで家に戻ってお弁当を作ってみたり、一緒にお昼寝してみたり。


 でも餌付け作戦は失敗だ。思い返してみればアネットの“盲目さん”はご飯を食べてるところを見た事がない。


 やっぱり“戦士さん”と言われるくらいだから強さアピールすれば気に入ってもらえるのかな。そう思ったんで“戦士さん”が寝てる横で素振りなんかしたりして・・・



「まだ寝てる・・・」



 どうやら先は長そうだ。






 その日の夜。食事の時にアネットがダンジョンの話をしてくれた。


 ダンジョンって怖いとこって聞いてたけど、可愛い動物がいたり中にはちょっとした町まであるらしい。それを聞くと私も行ってみたい気持ちがはやる。


 でも頑張っているアネットには悪いけど、もう少し足踏みしててもらえると助かるのよね。私はまだスタートラインにすら立てていないんだから。


 朝─────



「さ! 鍛練の時間よっ!」



 雨さえ降っていなければ日課は果たされなければならない。何故ならこの時間だけはアネットを独占できるからだ。今日は何処行こう。たまには違う道も良いわね。


 私はアネットの手を握って旧市街の中を当て所なく走った。いつもとは違う風景が新鮮だ。この迷路のような道をあっちでもないこっちでもないとハラハラしながら走るのは楽しい。まるでデートをしてるみたい。


 そんな浮かれた脳で迷路に突入した事で私は見事に迷ってしまった。



「お おかしいわね・・・確かこっちに道が」


「マルティナ?」


「大丈夫! 大丈夫だから・・・っ」



 うぅぅ・・・繋いだ手が汗ばんじゃう。どうしよう。来た道を引き返そうか。来た道って・・・?



「マルティナこっち」


「え え?」



 私がドキドキしていると今度はアネットが私の手を引っ張った。前を走るアネットはこんな複雑な迷路を躊躇いもなく進んでいく。何だか道を知ってるみたい。



「ちょっ アネット? 道分かるの?」


「うん」



 本当に? 本当かしら・・・本当だった。アネットに身を任せたまま走っていたら見知った場所に出た。



「アネット・・・どうして道が分かったの?」


「うんとね 僕は目が見えないから歩いた道を頭の中に描いてるんだ」


「何それ凄い・・・」



 それを聞いたとき私の知ってるアネットじゃない気がした。だってアネットはいつも私の後をついてきて可愛くて・・・ 私の知らないアネットを感じた瞬間、一気にその距離が遠退いた気がした。


 もう私の手は必要ないのかな・・・


 家に帰って朝食をってアネットを仕事場まで送っても、このモヤモヤは消え去らない。



「どうしちゃったんだろう・・・」



 モヤる気持ちを燻らせたまま空き地までいくと“戦士さん”はいつもと同じ場所でお昼寝してた。好きなのかなお昼寝“戦士さん”なのに・・・ん?


 遠巻きからでは気付かなかったけど“戦士さん”の隣にもう一人くっついてる。誰だろう。目が半開きになりながらウトウトしてる可愛い。



「おはよう戦士さん 隣の子は誰?」


『はよ~ この子は盾さん~ ボク達仲良し』


「そうなんだ よろしくね盾さん」


『しく~』



 さてと・・・効果があるか分からないけど、今日も私なりの鍛練に励もう。気を取り直して落ちてる木の棒を手に取ったところで私は誰かに話し掛けられた。








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