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72・いざスプリントノーゼへ

前回のあらすじ


今日も変わらずギルドに顔を出すアネット一行。

不意に受付嬢ポリアンナから声を掛けられ個室へと招かれる。


そこでバードラットの部下マデランからスプリントノーゼに赴く護衛の依頼を受けるのだが・・・

 スプリントノーゼへの出立にはまだ幾日かの猶予があるので、その間旅に必要な道具やその使い方、護衛の心得と立ち回りと言った経験と知識を修める時間に充てた。



「えぇと 先ずは馬車から荷物を降ろして設営したい場所まで運ぶ バックの中からテント一式を取り出してロープを木に括り付ける・・・と ん? あれ? ロープ・・・ これ もしかして絡まってる? あれ?」



 今日は近間の雑木林にて本番を想定してのテント設営だ。


 一人前の冒険者であるなら一通りの事はできて当たり前なので、それではと僕も1人で挑戦してみる事にした。のだけど・・・初っ端(しょっぱな)から僕の最も苦手とする壁にぶつかった。


 効率よく事を進める為にあらかじめ整理して入れておいた筈のロープが、どうやらバックの中で絡まってしまったらしい。


 しかし旅にアクシデントは付き物。焦らずじっくり難解なパズルを紐解いて、絡まないよう慎重にロープをのばしつつ括り付ける木を手探りで探していく。



「よし ちょうど良い太さの木だ ここにこう・・・ 縛ってと それからもう片方を別の木に縛る・・・ 木 木 木・・・ うわっ 下に藪が・・・」

『アネット~ あっちの木は~?』


「あっち? うっ ロープの長さが足らない・・・」



 最初に結んだ木を起点にもう片方の木を探すけど、これがまた時間が掛かる。何せテントの大きさにちょうど良い感覚の木を探しつつ、地面の状態まで気にしなければならないんだから・・・


 極力平坦で横になってストレス無く休める場所・・極力平坦で横になってストレス無く休める場所・・極力・・・ 凝れば凝る程時間が掛かる。


 しかも場合によってはテントを藪の中に埋没させて、人またはモンスターに発見されにくい立地を要求される場合もあるのだそう。やっぱり外に出てみないと冒険者の大変さは分からないものだ。


 それでもなんやかんやと手探りで、恐らく形になったであろうテントを完成させたら次はお待ちかね、長旅の疲れを癒す食事の準備に取り掛かる。


 今回は携帯食を齧るのではなく、1から料理を作るものと想定し、火起こしから始める事にした。テントから遠からず近からず、草地でない地面を探してまたもや地道な手探り作業。


 ようやく見付けた場所を忘れないよう頭の中で簡易的な地図を作ってから薪を集める。しかしこれもただ木を拾えば良いと言う訳ではない。薪割り場には焚き火用に木材が積まれているけど、あれは木を乾燥させる為に纏めておいてあるのだ。


 つまりここで探すのは水分が抜けて乾燥したサイズ的にもちょうど良い木・・・ちょうど良い木・・・どこ・・・ 知識はあっても薪割りの経験は活かせなさそうだ。



「ちょうど良い木 ちょうど良い木は・・・ これかな?」

『こっちのは~?』


「ん? どれ? ・・・・あぁ 盲目さん もうちょっと乾燥している方が良いかな 例えばこっちの木とか・・・ ひっ! なんか手にべちゃっとしたものが!」



 集めた木材で木屑を作り枝を並べて火を起こす。火起こし自体は火打ち石があるのでさほど苦戦する事無く着火できた。


 最近は空気も冷たくなってきたので、火があるのと無いのとでは大分違う。火打ち石・・・便利な道具である。


 気を取り直して料理のお時間。


 これは普段から家の手伝いをしているので慣れたものだ。お陰で作業行程を気にせず具沢山野菜スープを堪能できた。


 さて・・・全体を遠して今回の反省点を挙げるとしたら何と言っても細やかな地形の把握だろう。音さえあれば木が立っている場所や藪の位置を認知する事ができるけど、探し物の度に音をたてるのは自然の中のサバイバルとしていかがなものだろう。


 薪割り場がいかに整頓されてて、それに助けられていたかが今になって身に染みる。


 ここまで何とか1人でやってみたけれど、隣で作業していたマルティナとミストリアは暇してたのかお茶しながら雑談に興じてる。



「こ こっち終わったよ」


「そう? じゃぁ 今度は片付けね」


「・・・・うん」



 まぁ最後の片付けは皆でやったんだけど、やっぱり皆でやると効率良いね。無理して1人でやる事はなかったんだ。パーティー何だから助け合いは重要だ。


 そんな日々がもう数日続き、いよいよ旅立の日がやってくる。







 当日。



「あーーーー! お兄ちゃーーーん! 行っちゃいやああーーーーーーー!!」


「ソフィリア 僕達はちゃんと戻って来るから・・ね?」


「大丈夫よ この子はちゃんとナダメテおくから あなた達は自分達の仕事をちゃんとしてきなさい でもくれぐれも無茶だけはしないように ね?」


「はい 行ってきます」


「お母さんも無理はしないでね?」


〔───・・・────・・〕



 さて、いよいよ冒険者の時間だ。僕達は集合場所である町の入り口まで行く。気持ち早めに来たつもりだったけど、そこには既に小隊規模でおおよそ10人以上が集まっていた。


 事前に聞かされていた通り馬車は全部で4台、それぞれに分乗する形でスプリントノーゼまで揺られて行く事になる。



「これはこれはミストリア様に皆様方 お早う御座います 今日からしばらくの間よろしくお願いします」


「バードラットさん お早う御座います 此方こそ至らない点も多々あると思いますが どうぞよろしくお願いします」


「それでは簡単な説明も御座いますので ひとまずあちらにお集まり下さい」



 依頼主と軽く朝の挨拶を済ませるとミーティングが行われる場所まで付いて行く。そこに居たのは先程10人以上と言ったが、気配から察するにその(ほとん)どが冒険者。各々数人づつで固まっている事から複数のチームで参加していると思われた。


 護衛の仕事って聞いてたけど、こんな人数が必要なのかな・・・積み荷が多いのかそれとも危険な道程なのか。


 ともあれバードラットさんは僕達・・・特にミストリアの成長を促す為に誘ってくれたのだし、今回これだけ先達が同行するのだ。先輩方の手腕。是非とも勉強にさせていただこう。



「・・・と言う訳で 皆様ご存知とは思いますが スプリントノーゼまではトラブル無く順調に進んでも 2日は掛かる道程になります


 とは言え 道は人の手で整備され 野営場所も確保されているので 皆様にとって苦にはならないでしょう


 もしかしたらモンスターの襲撃があるかもしれませんが これだけの数の冒険者 しかも名だたる御歴々方が集まっていますので これも差して問題にはならないと確信しております


 今回私共の都合上 日程に大きな擦れが生じる可能性も御座いますが その分報酬に上乗せさせて頂きますし 宿泊費は此方が持たせて頂きますので 皆様には心置き無く仕事に従事して下さるよう よろしくお願いします」



 つまり期間が伸びれば報酬も上がると言う事か。これについて冒険者からは「流石カストラ商会だ」「やっぱバードラットさんは違うねぇ」と称賛の声が上がる。どうやら通常の仕事と比べて破格らしい。



「おいおい旦那ぁ たかだか隣の街に行くのに何でこんな仰々(ぎょうぎょう)しい人数揃えるのか むしろ不思議でなんねぇぜ 


 しかもそこのガキ共のお守りかと思ったら しっかり護衛枠に含まれてやがる こいつは何の冗談だ? 分け前だけ掠め取られてる気分だぜ」



 これからいざ冒険だ! と思った矢先、1人の冒険者からきつい言葉を浴びせられた。明らか僕達に向けられたその言葉に、マルティナとミストリアは心に嫌悪を表した。


 まぁ確かに大店の紹介にしては頼りない新人何だから難色を示されるのも当然か。でも意外と暴言を発した男性に賛同する人は少なかった。



「誰にだって最初はある 後進を育てるのも先輩の勤めだと思わないか? ノクタール」


「相変わらず生真面目だなウォルツォ だったらガキ共の面倒はお前が見てやれよ 道中ママが恋しくて泣きそうになったら遠慮無くお引き取り願え そっちの方が俺達の取り分も増えるんだからなっ」


「な! 何なのよ! あんた! いきなり突っ掛かってきて! ホント嫌なヤツって何処にでも居るのね!」


「お? 嫌なら今すぐ帰ったって良いんだぜ? ここはまだハルメリーだ 今なら迷子にならずに家まで帰れるなぁ」


「何ですってっ!!」


「まてまて 出発してもいない内から喧嘩してどうする それにこんな子供に突っ掛かるなんて大人気ないぞ」


「善意の忠告ってやつだよ」



 案の定マルティナは噛み付いたがノクタールと呼ばれた人物は、元来こう言う性格か屁とも思っていない様子だ。



「君も嫌味を言われたからって熱くなるな それこそ相手の思う壺だぞ まぁ アイツはあぁ言う奴だが バードラットさんから指名されるだけの事はある冒険者チーム 腕は確かだ


 苦手意識もあるだろうが 今回の仕事では そう言う人間との距離の取り方の勉強と思えばいい」


「・・・・・・分かったわ」



 マルティナを諭したウォルツォさんが言うには、ノクタールさんを含む3人のパーティーは「狂犬の牙」と言う名で冒険者界隈を博しているらしい。


 噛まれたら病気になりそうな名前が指す通りネチネチしつこいと、周囲からはあまり良く思われてはいないそうだ。


 彼等が居るせいだろうか、ハルメリーの町を出る前から険悪なムードになってしまった冒険者一行。


 これから数日、下手をすると数週間。僕達は無事に任期を満了する事ができるのだろうか。前途はあまり明るくは無さそうだ・・・





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