表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/358

67・町内会議

前回のあらすじ


アネットがバードラットから情報を得るためつるんでいることがラトリアにバレてしまった。

ラトリアは正義感から怒りはするもののアネットに協力することを決意する。


「ほぅ・・・ で? お前達はどうしてもハルメリアが偽物だと言い張るのだな?」



 オルソンさんの工房兼自宅の客間に通された僕達は、ハルメリア製作者本人を目の前にして剣が偽物である事を告げた。


 最初こそ「ありえん」と流していたオルソンさんだったけど、それがバードラットさんからの情報と知ると彼の中で怒気が段々と色濃くなっていった。



「奴からの情報と言ったが その元となる出所は何だ まさか証拠もなく信じた訳ではあるまいな?」


「出所までは聞いていません ただ・・・ 信用を売りにしている商人なら 情報を(たが)える事は無いと・・・ 僕と彼とはそう言う契約ですから」


「相手の言う事を まんま真に受けるなど話にならん 仮にその情報が真実として 全てを話していない可能性もあるのではないか?」


「そう・・・ですね 解決の糸口が目の前にちらついて そこまで考えが及びませんでした でも・・・嘘は言っていないと思います 勘ですが・・・」


「ふん 冒険者の勘か・・・ まぁ何事も鼻が利かんようでは成功もせんからな とは言え・・・ ふぅ~ まぁ多少キツくも言ったが・・・ 実のところ偽物である可能性を否定できん出来事はあるんじゃよ」


「そうなんですか?」



 観念した・・と言うより、胸の支えが取れたと言った感じで溜飲が下がったオルソンさんは、ため息混じりでその出来事を話し始めた。



「ハルメリアは装飾用とは言え手入れは必要だ 当然(たずさ)わった者として管理するのは当たり前の事だからな


 それが10年近く前か 突然手入れは他の者に任せると町長のデュダルの奴がぬかしおったんだ


 ワシも当事者として引き下がれんからな 何度もあやつに食い下がったが 頑としてワシに見せようとせんかったよ」


「それはつまり・・・ オルソンさんにお願いしても ハルメリアを鑑定する事は出来ない と言う事ですか?」


「すまんな・・・ 以来町長とは折り合いが悪くてな 会えば喧嘩よ」



 名声も功績も有るオルソンさんを頼ってここまで来たけど、どうやら彼でもハルメリアを拝見するのが難しいらしい。


 どうしたものかと思案していると「親方~ お客さんがお見えですよ~」とお弟子さんかの声が聞こえ、案内されてやって来た人物は覚えの有る声で開口した。



「やはり此方(こちら)にいらしてましたか」


「バードラットさん!?」


「ん? カストラの 珍しいな お前さんが直々にお出ましとは・・・ まさかハルメリアの件でやって来た訳じゃあるまいな 小僧にも話したがワシでは力にはなれんぞ?」


「あなた方の間柄は噂程度に聞き及んでおりますので 大体の予想はしておりました」


「バードラットさん よく僕達がここに居るって分かりましたね」


「ハルメリアに縁の有る者はオルソン殿と前領主 行方不明のコドリンを除き 既に故人ですからね 誰かを頼るならまずオルソン殿の所かと」


「成る程・・ と言う事はバードラットさんがここに来た目的はオルソンさんではなく 僕達ですか?」


「えぇ きっとお困りだと思いましたので こうして(まか)り越した次第でございます」


「珍しい事もあるもんだ そこまで小僧に肩入れするとは 余程ハルメリアにご執心と見える で? わざわざ出向く位だ 何か妙案が有るのだろうな」


「はい ハルメリアの件 少し私に預からせて頂けませんか?」



 ★



 預かる・・・と言っても解決する訳ではない。私はあくまで太鼓持ち。そして使える男と言う印象を周囲に植え付けられればそれで良い。出過ぎず目立ちすぎず。そんな立場を維持し続ける。それが長生きの秘訣だ。


 さてさて今回はどうするか。事が上手く運ぶようにお膳立てを整えてやれば良いのだが、相手は名うての名工オルソンと町長デュダル。もしかしたら現領主。突付くにしても神経を削る面々だ。


 とは言え何者にもアキレス腱はある。そろそろディゼルにも踊ってもらおうか。










 町内会議は町長宅ではなく町の集会場で行われるのが慣わしだ。基本的に緊急の場合と月一の定例会議とがあり、今回はハルメリー襲撃事件の報告も兼ねての話し合いとなるだろう。


 あれから日が経つとは言えまだまだ町の復興は遠い。これを機に改善点など各所それぞれ要望と思惑が交錯する会議となるだろう。それをどう取り纏めるか。町長の資質が問われる。



「おい 何故この場にディゼルがいる! 呼んだ覚えはないぞ」


「お言葉ですが ご子息には政治に関わる現場を学ばせる良い機会です 見学と言う立場でご同席賜れば幸いなのですが」


「・・・ふん まぁ良いだろう 邪魔にならないなら同席を許す さてそれでは会議を始める」



 この男デュダルはせがれをどう見ているのやら。背中で語ったところで反骨心でできてるディゼルにはチラつかせた褒美の方が効果があるだろうに。


 もっともそんな関係だからこそ付け入る隙だらけなのだが。



「さて今回の議題はハルメリー復興だが 表向きは進んでいるように見えるが 現状は(かんば)しくない これはどう言う事か」



 会議の参加者は町長のデュダル。その息子のディゼル。此方は早く町を復興させたいだろうから、ある程度無理な提案も聞き入れるかもしれない。


 冒険者ギルドからはギルド長のランドルフと数人のギルド職員。これに限っては減った冒険者の補充と各界からの依頼料についてせっついてくるかもしれないな。


 商人側はカストラ商会長こと私バードラットと、幾つかの個人商店で構成されているトリスタン商会代表のドットソン。そして以前はプルトンが店主に収まっていたファーゴット商会、現商会長のジャニス。


 今回の会議で一番口うるさくなるのは商人サイドだろうな。


 採掘師コミュニティからは事務局長のフォストル。此方も商人と直接の繋がりがある以上要望の1つも出るだろう。なお名工と唄われるオルソンは会議の場には1度として姿を現したことは無い。


 ハルメリー常駐兵からは代表して「突撃・突貫・粉砕」が座右の銘のギャレズリー大佐。最後に今回飛び入りで参加したのがイーブル騎士団、団長のエルヴィラ・ストラディオ。


 おそらくハルメリー襲撃事件についての質疑と言ったところだろう。


 そんな面々が町の集会場に一堂に会し、ドロドロの話し合いはここに開始された。


「状況は芳しくない」開口一番発した町長の言葉は重いのは、復興と平行して防衛と発展を軸に進めてきた都市計画が思うように進んでいない事を意味している。


 つまりは何処かで綻びがあると言う事だ。



「それは商会側が資金を出し渋っているから起きている実状では? 我々採掘師コミュニティも町の為 少ない報酬を分け合いながら事に当たっているのです


 これは町の復興である訳ですから 今こそ持っている所が財布の紐を緩めれば 各人自ずと仕事に身が入ろうと言うものです」


「それは異な事を言う 職人衆の腕は認めるが単純に仕事単価が高過ぎるのでは? それで蓄えがない 収入が少ないからやる気が出ないなどと 良くもまぁいけしゃあしゃあと言えたものですな


 他のおふた方は兎も角 我々トリスタン商会は個人商店の寄せ集め むしろいち早く復興を完了してハルメリーに人を呼び込んで頂かなければ 此方は首が回らないのですよ!」



 確かにドットソンの言い分も分かる。個人商店など大店のように資金に余裕がある訳ではない。地代に加え仕入れ元も固定されがちな為に露店の出せる場所で結果が出ていた。


 その不満を解消する為に纏め役をかって出たのがドットソン。トリスタン商会だ。



「それなら商品単価でも減らして人を集めればよろしい そもそも数多の商人同士が集まって何の策も講じれないとは 商人を名乗る者としていかがなものかね?


 それよりも今回のモンスター襲撃事件において本来都市防衛の要とも言える 冒険者そして常駐兵 彼等の不甲斐なさがこの悲劇を生んだと言っても過言ではないのではないか?


 彼等が税を持っていくより商会にかかる税を減らした方が よっぽど町の潤いに繋がではないか」


「バカを言うな! 貴様等商人がもっと良質な武具を我々に卸せばこんな惨状にならなかったのだ! 大体ジャニス お前の後ろ楯のバウゼンが 大っぴらに冒険者共を焚き付けなければ もっと早く事態は収拾したのだ!


 町の為に何かしたいなら まずはファーゴット商会が大枚はたくべきだろうが! おいランドルフ! お前からも何か言ってやれ!」



 早期の復興は望むがどこも金を出したくないと言ったところか。ここは全員で痛み分けでもして腹を割った話をした方が建設的だろうに。



「ふむ 互いに責任の擦り付けなどしとらんで もっと有意義な話し合いは出来んもんか もはや過ぎた事を問題にしても始まらんだろう」


「ちょっと待っていただきたい ランドルフ殿には亡きプルトンについてこの場で正式に問い質したい


 奴はギルドからモンスターに食い殺された事にされているが 事件当日冒険者ギルドで目撃した 一緒に避難してきたと言う証言もある」


「まてまて 今回は復興に関しての話し合いをしてるのだ そんな終わった事を今さら持ち出されても困る」


「困る? 確かファーゴット商会の前商会長はプルトンだったな 奴は幾多の犯罪に関与した経歴がある 今の商会が健全と言うなら騎士団に協力したらどうだ


 奴の仕出かした事でまだ未解決のものが多い 復興も結構だが犯罪者に加担していた商会が 案外妨げになっているかもしれないぞ?」


「ふん! 自分達の無能を棚に上げて 私まで疑われては敵わんな! 町長 この場に相応しくない者には早々にお引き取りいただきたいのだが?」



 騎士団が何故10年近く事件を解決に導けなかったのか何と無く分かった気がした。押し通す事しか能が無いからいなされるのだ。


 そんな事では姑息な悪党ですら捕ませない。本物のワルには到底及ばないだろう。そんなワルが何処かに潜んでいる事を感じているから腹が割れないのかもしれないな。


 とは言え、このままグダグダ続いても無駄に時間を過ごすだけだ。各人の思惑で堂々巡りならここは一石投じるしかないだろう。



「まぁまぁ皆さん 事件解決も大切ですが 今回は前向きな話し合いをする為の会合 復興に際しまして我々以外に本来呼ばれなければならない御人が居られない事にお気付きですか?」


「ん? 誰だそれは 領主様か?」


「いえいえ この町に暮らす町民の方々です こんな大事な時だからこそ民意を蔑ろにしてはなりません


 それに我々だけで何とかしようと言うのも誤りです あんな悲劇があったからこそ我々は1つにならなければなりません そこで・・・ 私は今年のコドリン記念祭をハルメリー慰霊祭として開催する案を出します」


「何を悠長な! そんな祭りに(うつつ)を抜かす暇があるなら 防衛に金をつぎ込まんか!」


「確かにギャレズリー大佐の言う事ももっともですが このまま話し合われても物別れに終わるのは目に見えているでしょう その際何処かが割を食う羽目になる


 ですが・・・お金が問題であるなら町の方々にも出してもらえば良い 故人を偲び町の復興 すなわち自分達の安全に繋がると分かれば少額でも寄付を募る事は可能と判断いたします


 それに 我々町に住まう者が1つになると言う意味でも 祭の開催には意味があると存じます」


「う~む・・・確かに 一考の価値はある しかし喪に服すと言う意味でも 開催に反対する者も出ないか?」



 その可能性もあるがここは冒険者の町ハルメリー。下を向くなど性に合わない。私は「ディゼル出番だぞ」の意味を込め彼に目配せした。


 実はこの会合が始まる前に彼と示し会わせていた事がある。この単細胞に多くは望めないので単純に「私の案を押すように」と。



「お・・・ 俺は賛成だ ハルメリーに暗い顔は似合わねぇ こんな事態になったからこそ明るく不幸を吹っ飛ばす位の気概で行くべきじゃ・・ない か・・・?」



 お飾りと思われた人物からまさかの発言に一同の視線はディゼルに集中した。今までのガキ大将気質のディゼルであったが、毛色の違う御歴々に見つめられ心が折れてしまったのか、あたふたした様子で私に助け船を求めて視線を泳がせた。


 ハッハッハ・・うい奴め。これでは誰が糸を引いてるかバレてしまうではないか。しかし周りの表情を見た感じディゼルの存在に懐疑的な者とそうでない者とで別れたな。


 やはり冒険者ギルドと兵隊は町長の小倅(こせがれ)を良くは思ってないようだ。そこに父親が混じっている事が気になるが・・・ まぁこれは将来私のような者に操られまいか疑念を抱いていると言ったところか。



「町長の言われる通り 被害に合われた方々の感情を逆撫でしてしまう可能性もあります


 ですので今年は慰霊祭として これから毎年あの悲劇を教訓に出来るよう 祭儀として事件当日の日付けを祭日に定めてみてはいかがでしょう」


「成る程 それなら慣行できそうか 住民の感情も抑えられ財布の紐も緩む・・・ 悪くない案だ」


「それでデュダル様 一応式典と言う形になりますにで例年通り広場で行うとして・・・


 宝剣ハルメリア─────


 さすがに今年は表に出してもよろしいのではないでしょうか あの剣はハルメリーの象徴と言っても良い物 正しくこの町の宝です あの剣を掲げる事で亡き住民の魂も永久(とこしえ)に安らげると言うもの」


「う・・ うむ そうだな・・・」


「それに際しまして ご子息のディゼル様も式に参加させてみてはいかがですか?」


「ディゼルを?」


「はい ディゼル様におかれましては ここ最近時間をもて余しているご様子 なればこれを期に時期町長になるべく後学の為 町の仕事を体験されるのが宜しいかと」


「う~む・・・ どうだかな・・・」



 どうにも自分の子供を信じきれないと言った感じだな。まぁどの道いずれ後任は指名しなければならないのだが。


 法的に町長の椅子は世襲制ではないが、一族の権力維持の為基本的に血縁に継がせるのが妥当だ。それを置いても中身が愚鈍な自分の子供に継がせるのが余程心配らしい。


 まぁこの場合、自分の子供を操るであろう周りの人間が信用ならない・・・と言った方が正しいのだろうが。


 町長として英断はできるが父親としては失格。こうなると後はディゼルのやる気に掛かってくるが、最近権力を傘に着なくなってきた彼の心境は、ここに来て仇となるか否か。


 こればかりは本人の問題だ。



 ★



 ムカつくぜ。親父もバードラットも周りの連中も。


 アイツに言われたからクソダルい会議に来てみれば、俺の言葉はそんなに意外かよ。口には出さずともテメェらの顔が「何だコイツ」って言ってんのがまる分かりなんだよ。クソが。


 どいつもこいつも人の顔色ばかり見てきやがって! もうウンザリだ! ダチだと思ってた奴等も結局俺じゃなく町長の息子って看板に(へつら)ってただけだしよ!


 俺の周りには・・・周りには・・・


 俺を俺として見てくれる奴なんて誰も居なかった。


 親父は俺を煙たがってる。家族の関係も冷めきってる。周りの連中だって表じゃ媚びるが裏では嘲笑ってやがる。


 もし・・・もしも俺から町長の息子って肩書きが消えたら何が残る。何者でもない。誰もいない奴が残るだけだ。


 何かしなくちゃ。何ができる。俺は何をやってきた。何がやりたい・・・


 俺は俺が分からねぇ・・・


「何だコイツ」はってか? そんなの自分が一番知ってんだよ! だからバードラットの口車にも乗ってやったんだ。別の何かが見れるんじゃないかと思ったから。



「ディゼル様が式に参列してくだされば 公爵家から褒美が頂けるかもしれません」



 何で俺が式に出たら貴族から褒美が出るんだよ。訳分かんねぇ! まぁでも・・・これだけは分かるよ。結局俺は利用されてるだけだってな。


 それでも俺は何かになりたいんだ。何かが何かは分かんねぇ・・・でもなりたいんだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ