表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
377/384

377・ルディアの思い立った作戦

前回のあらすじ


ルディアの付き添いに変装したアネットとミストリアは「常闇の奴隷館」のネイブラから厳しい現実を突き付けられるのだった。

 犯人・・・が明確になってない場合、責任の所在は何処に行くのか。それは現場にいて最も疑わしい人物に向けられる。


 そうアーキアだ。


 でも本当の犯人は僕・・・なのに現実はどんどん加速度的にルディアの思惑通りに進んでいっている。今や街の風潮は「アーキア人排斥」にまで突き進んでいるのだそう。


 そしてその噂を意図的に流してるのが仮初めながら我が主ルディア・ルンドレン。


 彼女は自分の目的の為ならば他人の事なんて実害があろうと気にも止めない性分のようで、屋敷の使用人逹の内緒話でアーキア人が外での要注意人物になる程度には影響が出ている。


 屋敷内のユシュタファ達も心成しか肩身が狭そうだ。


 そんな事もあってか僕は罪悪感でお腹の中がドロドロで、肩まで重く何もしてなくても常時心臓がバクバクしている。


〔彼等の立場が固まるまでよ〕


 とミストリアは言うけれど、責務を負う立場の人間はいつもこう言った選択をしてるんだろうか。とてもじゃないけど僕には務まらない。



「ねぇ ユシュタファは平気なの? その・・・同族がこんな事になっちゃって」


「どうだかな 正直どうでもいいって気持ちの方が強いな たぶん俺にとってここの連中は集落の奴等と同じなんだ 救えねぇよ」


「ファミリーに依存してる感じだったしね ハルメリーの集落も始まりはこんな感じで大変だったのかもしれないね」



 ユシュタファにとって自分の足で歩こうとしないアーキア人は仲間と言う認識じゃないんだろう。らしいと言えばらしいけど、人と人との距離感はこう言う事でも開いていくものなんだ・・・ちょっと悲しい。



「アネット ミストリア 出掛けるわよ 準備なさい」



 こっちの気持ちを知ってか知らずかルディアは意気揚々と催促してくる。どうやら具体的な方策でも頭に浮かんだようで感情に迷いがない。


 僕は急いで着替えやらお化粧やらを整えられて彼女の用意した馬車に乗り込んだ。基本的に対面で6名まで乗れるそうだけど、今は横に広いミストリアで圧迫されている。


 服や車内が濡れないものかと心配もしたけど、そこは別のスキルでカバーしてるらしい。これが可能なら夏場の濡れない抱き枕とか出来そうな気がする。今度打診してみよう。



「それで何処へ行くの?」


「モルドレイ伯爵の所よ 闘技場の土地を保有していて地代をデルマリス卿から回収しているの」


「つまりそのモルドレイ卿と共謀して圧力を掛けてこうって事?」


「どうかしら できるならそれが理想なんだけど アーキア人の売込みも上手い事できるといいわね」


〔伯爵家は上級貴族よ アーキア人を使うとは思えないわ〕


「それを上手く纏めるのがあなた逹の仕事でしょ? 期待を裏切らないでよね」



 さほど期待されてない感じだけど僕逹の未来も掛かってる以上手を抜く訳にもいかない。全力で取り組もう。


 馬車はパカパカと歩みを進めてモルドレイ伯爵の屋敷に到着する。同じ爵位同じ派閥と言う事でお出迎えも(うやうや)しくもてなされた。


 もっともノッシノッシと歩くミストリアを意識するなと言うのは鍛えられた使用人でも無理だったみたいだけど・・・



「ようこそルディア嬢 ルンドレン卿は息災かな?」


「はい 父など先頃のアーキア人の暴走に憤慨して 門の守りを強化すると息巻いておりますわ」


「ははは 流石街の守りの要 ルンドレン卿ですな それで・・そちらは・・・」


「この子は私の友人ですの 身重だからと家に引き籠もってばかりで たまには運動をとお誘いしたのです それでその隣の樽は・・・私の道化ですわ」


「・・・これはまた面妖な 世の中には奇妙奇天烈な者も居るようだ」



 気持ちは分からなくもないけれど、只でさえ重たい水を纏ってるのに樽とか言われてミストリアの不快度指数はグングン上がっていく。破裂したら部屋中大変な事になりそうだ。


 僕達は出された茶菓子などに舌鼓を打ちつつ徐々に本題へと入っていく。その点は相手方も分かっているようで突拍子のない事を言われても然程驚く事はしなかった。



「アーキア人を・・か そもそもあの様な者等に仕事が勤まるのかも怪しいが それならいっそ闘技場の見世物にした方が客の集まりも良いだろう」


「そうなっては商業派閥の利する所になりますわ 悪評高いアーキア人を我々が救う事で連中の忠誠を買う方向にもっていければ・・・」


「あれ等はことさら同族意識が強い 何かにつけてアーキア人を主張し周囲に馴染もうとしない トラブルの種でしかなかろう 奴隷落ちがその証拠だな」



 モルドレイ卿ももしかしたら過去アーキア人のトラブルを経験してるのかもしれない。ルディアとしては何とか派閥の1組織にと考えてる分、人種そのものを否定されたのでは分が悪い。


 何かアドバイス的なものでも耳打ちできればいいのだけど情に訴えるやり方は彼に通用しないだろう。どうしたものか・・・


 と考えてると、隣のミストリアは顔の前を扇子で隠すような仕草で水の文字を浮かび上がらせていた。


 どうやら彼の思考を盗み見ているらしい。


 ─────フムフム。



「あの・・・差し出がましいでしょうが 闘技場で使ってもらう方向で宜しいのではないでしょうか」


「む? 何故だね」


「彼等が求めてるのは集団意識と言うのなら 彼等の集落を貴族の方々に認めてもらえば良いのです 闘技場の運営は別派閥の問題ですので此方が口を挟む事ではありませんが


 一言でアーキア人と切り捨てるのではなく集団と考えるなら 他の使い道も自ずと見えてくるのではないでしょうか」


「・・・っ!」

「なる程な 塵も積もれば確かに塵とは見えまい まぁいくら集まったところでゴミはゴミでしかないが 街に新たな風を吹かせるなら一考の余地もあるだろう」


「そ そうですわね・・・オホホホホ・・」


「もっとも 簡単に吹き飛びそうな連中ではあるがね」











「ちょっと! ああ言う事は先に教えてくれなきゃダメでしょ! 私に恥を掻かせる気!?」


「え ご ごめん・・・」



 モルドレイ卿との対談後に馬車の中でお説教を食らった。まぁ確かに友人の口から本人に成り代わって横槍を入れるのは彼女の面子を潰す行為だった。


 でも此方も即興で対応しなければならないので、いちいち耳元で囁いていては不自然だし効率が悪いし奇異に写る。



「じゃあ 僕は相槌を打つながら話の方向を誘導していくって感じでどうだろう」


「・・・ ・・・まぁ それなら」



 納得はしてないみたいだけど何とか丸く収まってくれた。お陰で車内の空気は悪いけど今後事あるごとにルディアを(なだ)めなければならないとなると胃が痛い。


 つまりこれで終わりじゃない。次がある。



「次はバランドール卿の所よ 彼は街のカジノ ロイヤルクラブを経営しているわ」


〔損得勘定には厳しそうね 体よくあしらわれなければいいのだけど・・・〕



 カジノ・・・確かお金を賭けてゲームする所だよね。盲目の僕には縁のない場所だ。それを仕切る人物はいったいどんな性格の持ち主なんだろう。










「アーキア人? ダメダメ ここはロイヤルな方々が集う場所だ あんなネズミが入り込んではウチの品位が疑われる」


「別にホールに立たせずとも裏方で十分ではありませんこと?」


「奴等の本質はその卑しさだ 朝起きたら物が失くなってたじゃ目も当てられない」


「あのルディア様 街での宣伝などされたら店に来る人が増えると思います・・わ」


「そ そうだわバランドール卿 彼等に宣伝して貰って多くの人にロイヤルクラブの存在を周知させれば宜しいのではなくて? そうすればより多くの人が集まりますわ」


「ハハハ 自慢じゃないが当カジノはスプリントノーゼにロイヤルクラブありと言われる老舗のカジノ 下手な宣伝など品位が下がる ましてやアーキア人ごときが当カジノの名を口にするのもおこがましい」










「全然ダメじゃない!」


「そ そう言われても 向こうの環境が出来上がっちゃってるから入り込む余地はなかっただけだよ こ 今度は行く相手の事を教えてよ そしたら事前に対策も練れるからさ」


「・・・ ・・・はぁ 仕方ないわね 次はファーブ卿の所よ 爵位は男爵だけど彼は処刑場の運営をしているの 周りからはちょっと変わり者って言われているわ」


「変わり者・・・気になるね」










「巷で噂のアーキア人・・・それだったら首が飛ぶのを見たいって言うお客さんの方が多いと思うわねぇ~ 提供してくれるんなら此方としては大歓迎だわ」


「で でもルディア様 処刑場で働くのって色々大変そう・・・ですわね」


「そ そうよねぇ 人を殺めるってストレス溜まるでしょう? それをアーキア人にやってもらっては如何かしら」


「大丈夫よぉ 首はねるのが三度の飯より好きって好き者ばかりだから そのボルテージが会場の空気を沸かせるのよぉ~」


「そ それだと後片付けも大変そう・・ですわね?」


「そ そうね その片付けをアーキア人にやってもらうってどうかしら・・・」


「あら 世の中には死体に興奮する人達も一定数いるのよぉ~? そっちはそっちで需要があるんだからぁ~」


「で では遺体にデコレーションなどして趣向を凝らしてみては如何でしょう 僕・・私はそちらの方が好みですわ」


「分かってるじゃなぁ~い あなた見込みあるわよぉ~」










 見込まれても嬉しくないし分かってもいない。僕はただミストリアから提供される相手の思考に合わせて会話してただけだ。



「あの ルディア・・様? あれはちょっと斜め上を行き過ぎ・・・です」


「・・・分かってるわよ でも・・・全滅じゃない! 残りの連中は木っ端貴族ばっかりだわ! どうすんのよ!」


〔だったら直接公爵家に行ってみれば?〕


「はぁ? 格上貴族にアポ無しで会えると思ってるの!? 当主ならまだしも娘の私だけで会いに行ける訳ないじゃない!」


「・・・なら 今日の事を踏まえて日を改めて交渉してみようよ 相手が何を望んでいるのか それを手探っていこう いきなり話が纏まるなんてないんだしさ」


〔そもそも闘技場にカジノに処刑場って 私達とは無縁の存在なんだから 知識なんて無いも同然だわ〕


「~~~~!! 分かってる! 分かってるからっ!! もういいっ! しばらくほっといて!!」



 事が上手くいかずルディアは癇癪(かんしゃく)を起こして黙りこくってしまった。行きとは違い帰りの車内は気まずい雰囲気が静かに流れる。


 屋敷に戻ってからも彼女は塞ぎ込んでるようで、いつも食事時には自慢をするかのように僕達と一緒に食べてたが、その日は部屋から出てくる事はなかった。


 ・・・心配だ。


 何せ部屋の中で溜めに溜めた怒りが、どんな形で僕等や周囲に降り掛かるか分かったものじゃないのだから・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ