表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
367/373

367・9日の準備期間

前回のあらすじ


ヤーデフ達との話し合いの末、ルディアの屋敷に戻ったアネット達は彼女にナイーム発見の報を入れる。その捕縛作戦にハルメリーからの武器を使用するよう進言する一行。上手く話に乗ってくれた事でアネット達の作戦は軌道に乗るのだった。

 あれから伝書鳩のやり取りを繰り返し、武器到着の日時と正確な時刻が伝えられた。


 ルディアの作戦は届いた武具を兵士に装備させてからの出陣となるようで、彼女は彼女で身内ないで色々とやっている。


 貴族の、しかもご令嬢なのだから屋敷で吉報を待ってればいいのに、服が汚れても手柄は欲しいのか、彼女を突き動かす渇望はスプリントノーゼにおいても萎える事なく顕在だった。


 もちろん僕達もこの9日間と言う期間を無駄にするつもりはない。


 ユシュタファ達は作戦の為の下準備に買い出しと敵の視察に動き、僕達は今ヤーデフさん達と坑道内の退路の確認を行っている。



「アネット難しい顔してる」


「そう かな・・・ まぁ上手くいくか不安だし ね」


「・・・それだけじゃないでしょ 今の内に吐き出しちゃいなさい」


「う・・・マルティナは鋭いね」


「何年一緒にいると思ってるのよ」


「・・・まぁ その この作戦の成功の為に確実に1人は殺めなきゃいけないって考えると 気が重くなっちゃって」


「おいおい 冒険者がそんなんで大丈夫か?」


〔理想と現実よね 実際になってみたら想像と違ったなんてよくある話よ でも人を殺すなんて気持ちの良い話でもないわ〕


「ああ それは痛い程よく分かる でもやらなくて良い選択肢が残ってるならまだマシだ それをやらなきゃ絶対に抜け出せないってなってからが本番だな まさに覚悟が試される時ってやつだ」


「ヤーデフさんは やりますか? その・・・そんな状況になったら」


「そりゃやるさ その為に行動してるんだ まぁお前さんの言いたい事はもっと漠然とした話なんだろう 要は自分の幸福の為に他人を不幸にする自責だろ?」


「そうですね・・・そんな感じです」


「それは多分 鏡に写った過去の自分だろう そいつはちょいちょい問い掛けてくるのさ それでいいのかってな だが現実の自分は鏡の中じゃない 結局線引きするしかねぇよ 思い切り鏡を割んのさ 俺達は正義を成してんだって言いながらな」


〔だったらブランディーゴファミリーも 良い悪いを別にしてアーキア人を世話していると言う意味では正義だわ〕


「何よそれ それじゃ正義なんて使い方次第で何とでも誇張できちゃうじゃない」


「正義も動機の1つでしかない そう考えると『正しい』の正当性も霞んで見えちゃうね」


「その答えは迷宮の中を延々歩き回るのと同じなんだろうなぁ それよりもだ 転ぶ事を恐れるな 子供は転ぶものだ そして立ち上がる事を覚える それが肝要だ まぁ他人の受け売りだがな」


「・・・そう ですね」



 このモヤモヤは以前ジョストンさんに人を殺める事を強いられた時と同じだ。それが今僕の目の前で壁の様に立ちはだかっている。


 壁は乗り越えてこそ冒険と人は言うだろう。でも人を殺める行為を冒険の括りに加えたくない自分が何処かにいる事も確かだ。そのもう1人が後ろ髪を引くせいで一歩が踏み出せないモヤモヤを作り出している。


 そしてそんな自分に救われてもいる。


 僕の求める冒険って何だろう・・・



「ここが西門に1番近い入り口だ 本番当日はブランディーゴファミリー拠点近くの入り口からここまで来る事になる」


「道は覚えました でも当日は作戦通りいくか確実な保証はありません」


「何事も100%上手くいく保証なんてないんだ それが現実よ そんな時は柔軟に対応しろ お前さんにとって何が1番大切かそれに専念するんだ 何でもかんでもやれるなんて考えるなよ?」


「取り敢えず 相手の奴隷さん持ってる人を倒して ナイームを捕まえたら逃げる これで良いのよね」


「ああ 重要なのは俺達が脱出する お前さん等はナイームを捕まえる 他はどうでもいい 分かったな?」


「ええ」


〔分かったわ〕


「・・・はい」



 状況次第で作戦通りにいく保証はない。臨機応変に・・・か。そんな状況になると彼の言う通り「自分にとっての1番」を突き通すしかない。


 ブレない事。これが重要なんだろう。





 坑道の確認を行った僕達は一度ユシュタファ達と合流して話のすり合わせをする為に、ヤーデフさん等が隠れ蓑にしている空き家に集合する事にした。


 空き家と言っても歴とした家と言う訳ではなく、屋根もない廃屋のようなものだったけど、()()()()()()()(たむろ)してれば逆にそれがカモフラージュになるんだとか。


 僕には理解できない感覚だけど「擬態」と言う事で合ってるんだろうか?



「そっちの首尾はどうだ?」


「うん 坑道内の道順は覚えたよ ユシュタファ達は?」


「俺達は地上担当だ 状況変化で坑道内に行けなかったアーキア人達を担当する その為の用意もしたしな 後アネット お前用の弓矢も用意したぜ」


「弓か・・・一回射った事あるけど弦が顔に当たった記憶しかないんだよね・・・」


「まぁ今回は敵に当てる必要はねぇし 気楽にやりゃいい」


〔それで肝心の敵アジトの内情はどうだったの?〕


「それなら俺が単身乗り込んで直接確認した 他の奴等じゃナイームの顔 分からないだろ?」


「え 1人で行ったの? よくバレなかったね」


「ああ アーキア人が1人増えても分からないくらいの数がいたぜ さすがにあれだけ居りゃ管理もずさんだわな オマケに奴隷紋付けてる事で安心してんだろ お陰で自由に動き回れた


 で 肝心のナイームも確認できた 連中のアジトの奥に居たよ ファミリーの連中と普通に話してるところを見ると 拘束されてるって訳でもなさそうだったな 遠目に見ても仲間の1人って感じで話してたぜ 


 連中 何がしたいのか想像するのは容易だが 奴等は奴等で話が上手く纏まったってところじゃないか?」


「他の連中にも狙われてるだろうに よく平然としてられるもんだな そのナイームって奴は」


「アイツはコウモリだ 人に取り入るのは得意なんだろ それに手配書が出回ったとしても似顔絵と名前だけで見分けつくかっつーの 周りにどれ程アーキア人がいると思ってるんだ


 ああ それと奴隷さん連れた奴も確認したぜ 幹部と思われる連中はほぼ全員アーキア人じゃないから分かりやすいな お陰で戦う相手が明確で助かる」


「ともあれだ 闇雲に戦い吹っ掛けても仕方ない 優先順位を絞ろう まず奴隷さんを連れてるのはドメリコって奴だ そいつは俺等が何とかする お前さん等はナイームだ ただボスに匿われてるから戦いは避けられない」


「ボスか・・・どんな奴だ」


「名前はベネデット・ブランディーゴ 堅気(かたぎ)じゃないだけあって武闘派で周囲を固めてる もちろん全員が全員戦える連中ばかりじゃないがな」


「なる程 配給に来てたのは雑魚共だった訳か」


「その雑魚も軽くは見れないぜ 何たって鶴の一声で動くアーキア人だからな・・・ とは言えだ 数の不利を払拭する手はある ただしそうなると現場は俺達が考えるよりも遥かに混乱するがな」


「そんなにグチャグチャになるなら脱出の時間とかどうするんです? 皆で一緒に現場を離れる訳にもいかなくなる気がするんですけど」


「そもそも敵味方の区別なんてつかねぇし状況判断だって正しくできねぇよ だからヤーデフ達は目的を達成したら地上なり地下なりで門へ向かってくれ たぶん俺等の方が時間が掛かる こっちが終わったら合図を出す 言っとくが1発勝負だからな 間に合わなかったら取り残されるぞ」


「ああ 分かってる」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ