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364・捜索開始

前回のあらすじ


常闇の奴隷館に到着したアネット一行は話し合いの末、道中命を助けたユーノス連合から情報を得る為現地に向かう事にした。

「ブランディーゴファミリーか この街じゃ新参だな 外からやって来た連中で 一旗揚げようと息巻いたが敢えなく撃沈 結局身の丈に収まったゴロツキ共だ ここじゃ珍しくもねぇ」


「そんなのがどうしてアーキア人囲ってんだ?」


「そりゃ扱いやすいからだろ 周りに煙たがられて数も少ねぇ わざわざ助けようなんて物好きも居ねぇしな 金もねぇ貧乏人を金持ち連中も相手にする訳もねぇし 新参者にはうってつけの駒だろ」


「あいつ等 アーキア人達利用して何やらせてるのよ」


「へへ・・お嬢ちゃん この街の奴隷の運命知ってるか? 貴族のオモチャだよ 闘技場にでも行ってみな 哀れな奴隷共の悲鳴が聞けるぜ ギャア 助けて~ってな そんなのを見に金出す奴がいんのさ だから供給される 世の縮図だよなぁ」



 彼なりの意趣返しなのか目の前にそのアーキア人が居るにも拘わらず僕達を揶揄(からか)うように挑発してくる。それともこれがこの街なりの冗談なんだろうか。どちらにせよ野暮ったい。



「ちょっとアンタ────」

「ああ そんなとこだろうな お前等は連中と繋がりはあんのか?」


「いや 俺達とは(しのぎ)が違ぇし まぁ客として来る分なら相手が誰かなんて こっちは気にしねぇけどな」


「そうかい 分かった ありがとよ」



 軽い調子で言い放つとユシュタファはすんなり店を出ていってしまった。彼女の事だからセブラの言い様にもっと食い下がると思ったけど思った以上に呆気ない。



「空振りだったね」


〔残念だわ 蛇の道は蛇に聞けば分かると思ったのだけど・・・〕


「・・・いいや そのブランディーゴファミリーってのが ここいらじゃ新参者って分かりゃ十分だ」


「え それだけで何か分かるの?」


「ああ言う連中が隅っこに甘んじてる訳がねぇんだよ 隙あらばのし上がろうとす筈だ アーキア人とも接点はあるし 探って損はないだろ」


「って事はターヒルの出番か」

「失せ物探しは得意だが 今回は何探しゃいいんだ?」


「あの辺りをうろつくアーキア人 その中でも連中とは毛色の違うアーキア人だ」


「そりゃ漠然とし過ぎだぜ 何人居ると思ってんだ」

「いや待った・・・さっきの奴 この界隈にもはぐれ者は来るって言ったよな 何の用かは知らないけどよ 配給に頼る金のない奴の行動とは思えねぇ」

「そうか そう考えるとここのアーキア人とは 生活のパターンが違うって訳だな」


「ああ」


「できるの? そんな事 ちょっとした違いを追うとか かなり難しいんじゃない?」


「難しいは難しいが やってやれない事もない」

「ターヒルの追跡は雑多な中でこそ活きるんだぜ」


「そうなの? 狩人さんが獲物を探すところには立ち会った事あるけど ターヒル斥候さんだよね 想像つかないな」


「まぁ見てろって んじゃ始めますか」



 そう言うとターヒルの“斥候さん”から小さな“斥候さん”が生まれて、まるで風に舞う紙のようにヒラヒラ宙を漂い始めた。


 僕達はスプリントノーゼのアーキア人でありながら反骨心を失わない人間ならどう動くかの仮説を元に捜索を開始した。


 まず拠点らしい拠点は持たないと言う事だけど、仲間通しの繋がりが断たれてるとは考えにくい。何故なら立場的に不利な状態で孤立してるとは思えないから。


 なのでその結節点として「あのアーキア人達の周囲に潜んでるのでは?」と考え、ブランディーゴファミリー周辺を探る事となった。



「ん~ でも考えてみれば苦渋の決断だよね 厳しいとは言え集団の中にいれば衣食住が与えられるのに外に行こうなんて」


「んなもの人によるだろ 今いる環境が耐え難かったら立ち去る奴だっているだろうぜ 例えその先食いっぱぐれると分かっててもな」


「その集団の中に居場所がなかったら地獄だぜ? 孤立してるって自覚は 案外心にくるからな」

「まぁ外で暮らすってんなら ハルメリーで言う集落の外で暮らすアーキア人 俺等も同じだわな」


〔つまり もしここでの生存が可能なら 彼等は彼等なりの工夫をして日々の急場を凌いでるって事になるのかしら〕



 僕達に置き換えれば食料が無くなった森の中で自給自足するのと同じって事か。問題は自生する作物も野生の生き物もこの街には存在しないって事だけど。



「俺もその日の食いぶち得るのに 通行人や店から食いもん掻っ払ったっけ 懐かしいなぁ」

「ははは それ俺もやったわ」

「でも1人より2人 2人より複数人って そうやって学んだよな 俺達」


「・・・うん 言いたい事は伝わったよ」


「それにだ 貴族が欲した誘因剤の知識を持ってるナイームの存在は きっとこの街でもホットな話題の筈だ そんな美味しい話を周りの連中が指加えて見てる筈がねぇ 何かしら動きはある筈だぜ」


「そう・・だよね だったら等の本人はどうしてるんだろ 上手く隠れてるのかな もしくは誰かが匿ってるのか それとももう・・・」


「どっちだっていい 無事なら捕まえる 居ないなら居ないで誘因剤とアーキア人の縁が切れたって事で良しとするさ」











「ねぇ これスキルさん飛ばしてアーキア人探すなら 私達が分かれて捜索した方が早くない?」



 ゆっくりフワフワ飛ぶターヒルの“斥候さん”の後をテクテク辿りながら歩くのに業を煮やしたマルティナは、思わず提案と言う名の突っ込みを入れた。


 タンポポの綿毛が漂ってはくっつき、漂ってはくっつきを繰り返してれば誰だって不安にもなる。暇な時間の暇潰しなら兎も角、今は動く人探しの真っ最中。正直僕の中にも心配に思う気持ちは微量ながらあった。



「まぁまぁそう言わずに コイツの探索能力は頭ひとつ抜けてんだ」

「本人を見付けるより痕跡を見付ける方が早いし確実だ 後は犬みたいににおいを辿ればいいんだよ」


「犬ねぇ まぁ・・任せるわ」



 スキルさんのスキルだし本人にしか分からない感覚はあるだろう。僕も僕のスキルを他人に説明しろと言われても完全に理解してもらう自信はない。


 口頭でそれを述べた時、相手はいったいどんな感情でそれを聞いてるのか思うと、僕も他人事じゃない気がした。



「お さっそく発見 あの屋台のテーブルに触れた跡がある アーキア人で間違いない 手跡に焦った痕跡がないから食い逃げとかじゃない ちゃんとここで食事してるな 心にも余裕がある感じだ」


「そんな事まで分かるの?」


「分かりやすく言うと歩いた跡と走った跡の地面と同じように 俺のスキルで触れた跡の痕跡から読めるんだよ」

「俺も前にジーッと見た事あるけどよ 足跡ならともかく テーブルに付いた手の跡なんて分からねぇよなぁ ありゃ完全にスキルの領分だぜ」


「追えるか?」


「ああ 比較的新しいからな 痕跡のにおいを手繰る」


「ターヒルなら狩人にもなれそうだね」


「俺はどっちかって言うと町中専門って感じだな 森は歩き慣れてないんだわ それに獲物追うより金目のもの追う方が好きだしな」



 彼の生い立ちについて以前少しだけ話を聞いた事がある。生きる為とは言え誇れない行為をしてきた彼だけど、そこで身に付いたものがあったからこそスキルと言う才能を開花させた訳だ。


 言い換えればその道の人。良い悪いは別にして今は頼もしい。


 そんな彼のスキルを頼りながら着々と足を進める僕達。“斥候さん”の鼻に導かれながら順当に歩いてはいるけれど隣に1人気掛かりな色した人が僕にはどうにも目についた。


 ユシュタファだ。


 僕の知る彼女ならセブラとの会話で沸騰して当たり前なのに、今は静かな湖面のように波もなく風もない。ただしその湖面の奥底は黒く、まるで底の無い沼のように仄暗い。



「ユシュタファ冷静だね その・・・怒ってないの?」


「怒る? 何でだよ」


「何でって アーキア人の事で何かあったら前は怒ったじゃない さっきの人との会話だってアーキア人の事軽く言ってたし・・・」


「こんなの怒って何とかなる問題かよ そんなんはとっくに通り越してんだ」


〔・・・バカな事考えないでね〕



 らしくないユシュタファにミストリアも何かを感じたのか、釘でも刺すように一言呟いた。



「バカな事? 自分が正しいと思う事しなかったら いったい俺達は何の為にここに居るんだよ」


「ユシュタファは 仲間の為を思ってやってるんだよね?」


「アネット・・・想像してみろ アーキア人が世界を席巻してお前等が少数民族になったとしよう で お前はこのままじゃダメだと立ち上がったとする だが周りは誰も賛同しねぇ


 無理だ出来っこない ここが平和ならいいじゃないか 尊厳を踏みにじられ社会から弾かれて 命すら握られてるのに抗おうともしない それに危機感を覚えない連中を お前は仲間と言えるのか?」


「だったら ユシュタファは誰の為に動いてるの・・・」


「もちろんアーキア人の為だ 只な 俺の言うアーキア人は 自分の足で立って自分の意思で足掻こうとする連中だけだ それ以外はどうでもいい」


「・・・・・・」



 その奥底から湧き立つ情念からくる言葉に、僕は返事を返す事ができなかった。彼女は僕に似ていた。僕が英雄に焦がれるように、彼女は理想に燃えていた。


 周りが止めても突き進む。そんな意思が彼女を突き動かしていた。僕が冒険者の道しか見えないように彼女は理想しか見えてない。見えてないから止まらない。


 僕が僕であるように、その意見の否定は彼女の全否定と同じなんだ。間のない0か100の答え。


 彼女はそう・・・理想を求める為の覚悟を決めたんだ。





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