表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
363/373

363・街のはぐれ者

前回のあらすじ


ロダリオの案内で裏通りを歩いてるとお目当てのアーキア人を発見する。後を付けた先の広場には地べたに座り込むアーキア人が居た。突如カンカン音がするとブランディーゴファミリーを名乗る組織が配給すると言う。口論の結果案の定殴り合いに発展するのだった。

 カストラ商会のバードラットさん。


 ハルメリーで大成功を収めても、そのあくなき欲求はスプリントノーゼにまで触手を伸ばし今尚その手を休めない。そんな彼が情報を疎かにするだろうか。


 鶴の一声と言う訳ではないけれど、考えられる情報源として発言した僕の提案は、先が見えないユシュタファにすんなり浸透していった。


 ロダリオの案内でその場所まで辿り着くと、そこには見覚えのある馬車が止まっているとマルティナは言う。それを見た皆の感情は何故か芳しくない。



「あれ この馬車 あの子の家の馬車じゃない? ほら この紋章」


「ホントだ 別行動って 結局ここでかち合うのかよ」

「先に言っとくけど喧嘩すんなよ? 話が前に進まなくて面倒臭ぇからな」


〔善処するわ〕



 いまいち信用できないミストリアの返答は置いといて、僕達は緊張した面持ちでバードラットさんの経営するお店の扉を開いた。



「あら 随分遅い到着ね 私はお茶を(たしな)んでからゆっくり来たと言うのに」



 そこには予想した通り、どこか上から目線のルディアがゆったり椅子に腰掛けて、まるで自宅であるかのように悠々と(くつろ)いでいる。彼女の引っ掛かる物言いにムッとする面々も若干いるけれど、ここでの口答えは時間の無駄。


 お口にチャックは物事を円滑に進める上での大事なスキルの1つだろう。



「遅くはねぇな ここの実情を目にするって意味では外せねぇ時間だったぜ てか別行動のお前と場所が被るとか お貴族様の行動範囲も意外と狭ぇんだな」


「言ってくれるじゃない 私は無駄を省いてるだけだわ」



 そう思った矢先。早速現場は険悪なムードに包まれた。たった一言控えるだけなのにどうして一言を付け足さないと気が済まないんだろう。この空気はとても協力関係継続中とは思えない。


 先が思いやられる・・・



「2人とも 喧嘩する為に来た訳じゃないでしょ? それお店にも迷惑掛かるって」


「はは それくらいで目くじらたてる程 格式張った店ではありませんよ いらっしゃいませ皆様方『常闇の奴隷館』へようこそ お久し振りですね」


「この声は・・・確か そう ネイブラ・・さん?」


「おや 覚えていて下さったのですね 光栄ですアネット様」



 僕達の間に入ってきた人物はここの従業員であるネイブラさん。彼は“奴隷さん”と言うスキルさんを操り奴隷契約を施す仕事をしている。


 当初それを聞いたマルティナは最初こそ憤慨したものの、話をしてみるとこの店は奴隷を売るのではなく貸し出す事業を生業とし、ネイブラさんのスキルで奴隷達の精神的ケアも行ってるんだとか。


 接した奴隷達もうつ向く事なく前向きで、様々な経験を詰ませる事により通常の奴隷とはその成長の度合いも雲泥で、過去僕達もそんな彼等に助けられた経緯がある。


 ネイブラさんが居るからこそできる。誰も損をしない画期的な商売となっている。



「ところで 皆様が当店にお越しいただいた理由は ルディア様と同じアーキア人の関与する薬の製造拠点 ないしナイームなる人物の情報 と言う事で間違い御座いませんでしょうか」


「・・・まぁ そんなところだ」


「ふむ ・・・困りましたね」


「何が困るのよ この私が尋ねているのに答えられないって言うの? そう言うからにはよっぽどの理由があるんでしょうね」


「ええ 何故なら今その薬を監督している組織は公爵家に移管しているからです 製造拠点に手を出すのは自らの首を絞めるのと同義ですからね」


「・・・別に 拠点である必要はないわ もう1つの線 公爵家に切られたアーキア人達について知ってる事はない?」


「アーキア人達が根城にしている場所は幾つかありますが 隠れられる場所となると・・・ 仮にナイームなる人物に懸賞金が掛けらた場合 まず逃げ切る事は不可能でしょう それに用済みともなれば既に消されている可能性もございます」


「っ! 何よそれ! それじゃ私の計画が・・・!」


「ふん やっぱ情報収集は足を使ってなんぼだな その肥溜めみたいなアーキア人の溜まり場なら今さっき見てきたよ ただそこから抜け出した連中も居るらしくてな そんな誰にも歓迎されない奴が最終的に行き着く場所は何処にある」


「なる程 それなら可能性もゼロではないですね ただ彼等は神出鬼没 決まった拠点を持たず 絶えず移動していると聞きます」


「・・・あの ずっと疑問に思ってたんですが ここが嫌なら名前なり書いてとっとと出ていけばいいんじゃないですか? 何でずっと街に留まってるんでしょう」


「そんなの弱味を握られてるからに決まってるじゃない この街に名前で管理されてるってだけで足抜けなんて無理 組織は何処までも追い掛けるわ それに私の家は脱獄者を出した事がないのが自慢なのよ」


〔なる程それなら納得ね 街の空気は経営に携わる人の色が濃く出るもの どおりで学園の教室が窮屈に感じられた筈だわ〕


「はぁ~? 自分が公爵家の人間だったのを鼻に掛けて 周りの空気を読まなかったからでしょう?」


〔貴女こそ自分が周囲からどう思われてたのか気付かないから全体の雰囲気を悪くするのよ〕


「もう! 2人ともっ こんな所で喧嘩はやめてよねっ」


「ふん!」

〔ふん!〕



 何だろう。2人の会話は嫌な予感が次々的中していく気分にさせられる。少なくともこの場ではもう彼女達に会話をさせてはいけない気がする。でないと話がおかしな方向に折れ曲がってしまう。



「それよりもだ その動き回る奴をどう探すかだろ」


「まず街から出られないって事と 普通に仕事ができない事を鑑みると 悪さをするしかないよね」


「言うて この街は悪で彩られてるぜ?」

「でも狙う奴は選ぶんじゃね? こんな街だ 間違った奴に手出す事のヤバさは心得てるだろ」

「確かに するってぇと小銭稼ぎにスリとか万引きとかか?」


「ん~ 心情的にはあの場に嫌気がさして出ていった人達なんだよね だったら現状のアーキア人にも思うところがあると思うんだ だから彼等を虐げてる組織を狙うんじゃないかな・・・たぶん」


「志が消えてなきゃな だが確実とは言えねぇ いまいちパンチが足りないな」



 そうなんだよね。あの場を離れたところで拠り所がなければ生活も儘ならないだろうし、出奔した人達は人達で本当に存在してるのかも怪しい。現状雲を掴む話でしかない。


 そんな掴み所のない人達を前に手詰まり感が半端ない。本当に辿り着けるんだろうか。そもそも僕達の目的は彼等ではなく、あくまで姿を眩ましたナイームとその仲間達なのに・・・



〔一ヶ所 現地の事を詳しく知ってるかもしれない人達がいるわ〕


「何とかファミリーとか言ってた連中か? 俺等ぶん殴っちまったぜ?」


〔違うわよ ほら 私達人助けしたじゃない 貸しがあって相手を正しく判断できる良識ある人達が〕


「あいつ等か・・・どうだかなぁ」


「確かミッチとセブラって名前だっけ」


「ふむ ネイブラさん 大通りのカジノ ロイヤルクラブを南に曲がった先のシマは 今はどこが仕切ってるか分かりますか?」


「ロイヤルクラブを南・・・今はユーノス連合と名乗る集団ですね 公爵家派閥に属していて街の中心から南通りの1区画を仕切っています 規模的には大きくありませんが 大通りに近いと言うステータスは彼等の力が弱くない事を示しています」


「なる程 此方の名前が通用したのでもしやと思ったが 話を聞く分なら当たって損はないだろう」


「ふ~ん それ同じ派閥の人達なのね だったら私が直接出向いた方が──────」

「やめとけやめとけ 絶対話が拗れるから」


「だな 相手をイラつかせて仲違いするのが目に見えてるわ」

「何にでも適材適所ってあるっしょ」


「なっ!?」


「差し出がましいようですが 貴族様が直接出向かれるのは控えた方がよい場合も御座います 特にルンドレン家はこの街では名家 要らぬパワーバランスの傾きは新たなトラブルを生み出し兼ねません」


「そ そうだよ 君は今回の作戦の要 貴族の力はここぞと言うところで使った方が効果的なんじゃないかな」


「うっ・・・」


〔そうね アネット言う通り 切り札は最後に切るものよ 最初から隠し球を投げては相手にも悟られる 貴女は歴とした貴族なのだから ドンと構えていればいいのよ〕


「そ そうかしら そうよね ええ そうだわっ 下々の者に私が声を掛ける必要なんてないものねっ」



 うん。取り敢えず目先のトラブルは回避できた。と言う訳でルディアをおだてて別行動にし、僕達はまたまた来た道を引き返して自ら摩擦の坩堝(るつぼ)へと足を踏み入れる事となった。


 それにしてもあんな事があった所へまた戻るなんて。どんな気持ちで向き合えばいいんだろう・・・








「いよぉ 邪魔するぜぇ」


「あぁ? っ! テメェ等さっきの・・・ 何しに来やがった!」


「俺達が助けたミッチの事が心配でよぉ ちょっと様子を見に来たんだよ」


「心にもねぇ事抜かしてんじゃねぇ!」


「おいおいそりゃねぇだろ 人の親切は素直に受け取っといた方がいいぜ? で どうなんよ 助かりそうか?」



 相手の弱味に付け込むとか、どちらかと言うと此方が脅しを掛ける立場なのに、こんな時のユシュタファは何だか生き生きしてるように思う。



「・・・チッ まだ分かんねぇよ ただあん時に止血しなかったら確実に死んでただろうな んで ほんとのとこ何しに来たんだよ」


「ちとアンタに聞きたい事があってよ 仲間を介抱した借り返してくれよ」


「ざけてんのか 何が借りだ んな事で都合良く口が滑ると思ってんのか?」


「アンタ等 うち等んとこと同じ派閥なんだってな この事をよぉ ルディアお嬢様に話したら大層喜んでたよ 良かったじゃねぇか この街の門を預かるルンドレン家に名前を覚えてもらえてよぉ」


「あぁ? 何言ってんだ 何企んでやがるっ」


「別にアンタ等をどうこうしようって訳じゃねぇよ この街の厄介事の処理に ちょいと聞きたい事があるだけだ」


「厄介事だぁ? んなもんそこら中に転がってるだろ」


「俺達が探してんのは この街でも制御が効かない はぐれ者の事だよ」


「はぐれ者? ・・・ああ あいつ等か」


「知ってんのか?」


「まぁな ここにもたまに現れるぜ つっても悪さする訳でもねぇ だからほっといてるが おおかた個人的な繋がり持ってる奴でもいるんだろ」


「へぇ アンタ等でも手を焼く連中かと思ってたぜ」


「噂では狙う奴を絞ってるとは聞くがな 何処にも属さない奴等が何の弊害も無しにこの街で生きてくにはちと厳しい たぶん組織だって動いてるか裏で誰かが助けてるんだろう 無所属ってのは考えようによっちゃ強みでもあるからな」


「だろうな そこまで分かってんなら話は早い そいつ等が狙った場所と揉めた相手 そう言うの知らねぇか?」


「ん~・・・組織通しの抗争ならよく聞くが それ意外となるとなぁ ただこの界隈では聞かねぇ たぶん街の端の方じゃねぇか? 問題起こしてるとしたら」


「外壁の近くって事か 確か外にいく程組織の力は弱くなるんだよな」


「まぁ 正確ではないが 大体そんな感じだ」


「そんな外れの連中は何で生計を経ててんだ?」


「そりゃ人身売買だろ とは言え大っぴらな活動は貴族が許さねぇからな セコく小さく目立たないようにって感じじゃねぇか?」


「人身売買・・・つまり奴隷だな そう言やぁ 俺達と揉めた何とかファミリー・・・何だっけ 名前」


「ブランディーゴファミリー?」


「そう そのブランディーゴファミリーについて教えてくれよ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ