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355・ユシュタファ達の行方

前回のあらすじ


家の立て替えの合間にギルドへとやって来たアネット達は商人の集団を連れたルディアに捕まる。旧市街への意見を聞いてるみたいだが本来の用事はアーキア人のユシュタファ達にあるらしい。

「え・・・」



 ルディアから「ユシュタファ達を紹介して」と言われて直後に過った感情は疑念だった。何せダンジョンでの言い争いでギクシャクしたにも拘わらず彼等に用があると言う。「何だろう」と思うのは当然だ。


 僕と同様、彼女の台詞に「え?」と思ったのはマルティナとミストリアの両者も同じで、心には相手を訝しむモヤモヤを発生させている。



「紹介って・・・ 彼等に何か用でもあるの?」


「用が無かったら会ってはいけないの?」


「そう言う訳じゃないけど・・・」


「ちょっと手を借りたいだけよ 片付けておきたい問題があってね アーキア人の事はアーキア人に任せた方が合理的でしょ?」


「・・・・・・」



 人種の違いによる摩擦は繊細だ。今でこそユシュタファ達とは普通に会話する間柄になってはいるけど、彼等が自らを「アーキア人」と言う度に踏み込めない壁を感じるのは依然変わらない。


 見た目による違いが意味を持たない僕としては気にする事ではないのだけど、視覚から入る情報から彼等もそうでない人達も否応なく溝を隔てるらしい。


 それを軽いノリで「アーキア人」と言うルディアの言葉と心の色には思うところがあるけれど、結局のところ決めるのは当事者通し。


 拒む理由は見当たらない。



「分かった 見掛けたら声を掛けておくよ」


「お願いね さあ ここでの用事も済んだ事だし旧市街だっけ? 新しくなるなら私に相応しい店舗を構える下見にでも行こうかしら」


「それでしたらお薦めの場所が御座います 大通りから程近い所に良い感じの───」

「それよりも少々奥まった場所に町の風情を感じられる物件が────」

「いえいえ それでしたら────」



 自分の言いたい事を済ませるとあっという間にゾロゾロ立ち去るルディア様御一行。残されてシンと静まり返るギルドホールに、僕は台風一過の晴天を目の当たりにした。


 ところで僕達平民の意見はちゃんと反映されるのだろうか・・・








 冒険者の仕事は決められた日にちに行く必要はない。かと言って全く行かない訳にはいかないけれど、時間的自由度はかなり高かい職業ではある。


 そんな自由度のギルドにちょくちょく顔を出してると、見知った顔ならぬ聞き覚えのある声や色達と出会える。つまり仕事熱心な方々だ。


 ではユシュタファ達はどうかと言うと会ったり会わなかったりの落差が激しい。会う時は連日会う。会わない期間は徹底して会わない。それが彼等のスタンスなのかと思いきや、噂で聞くと仕事以外の時間は同胞の為に奔走してるんだとか。


 今はちょうど旧市街の変革の時。「人種」と言う問題が表面化しているこの町で自分達の居場所と権利の獲得に動き回っているのなら、それは会えなくて不思議はない。


 そんな空白の時間も相手を思えば察せるものもあるけれど、短気でせっかちな性格の持ち主にはどうにもそれが我慢ならないらしい・・・



「ちょっと! いつまで私を待たせる気!?」


「そうは言われてもユシュタファ達 ギルドに来てないっぽいんだよ」


「だったら探しに行くなりなんなりしなさいよっ 小間使いだってもう少し考えて行動するわっ!」


「え~・・・」



 プリプリ怒ってギルドにやって来るルディアに罵声を浴びせられる日々が幾日か続いた。


 とは言えユシュタファ達の言動を鑑みれば、僕等の見えない所で問題を起こしている可能性も否定できない。「ギルドに来れない=諸事情」ではなく「来れない=物理的に」かもしれないと考えると心配にはなる。



「分かったよ 僕も心当たりを探してみるから ギルド内で大声出さないでね 変に注目されちゃうからさ」


「ふん!」



 今日は僕1人だけだったから良かったものの、マルティナ達がいたら間違いなく戦場になっていた。僕等の平穏の為にも早々に彼等を見付けないと心休まる日は訪れない。


 さて、町の様相が変化している中で脳内地図が曖昧な僕が今の町を歩き回るのは得策じゃない。となれば知ってそうな人に訊くのが手っ取り早い。ので、ルディアのトゲトゲした感情に背中を突っつかれながら僕は訓練所へ歩く事にした。



「え ユシュタファの兄貴を知らないかって?」


「うん 最近めっきり会わないからさ ルシュディー君も会ってない感じ?」


「そうだな 会ってはないけど・・・」


「何か心当たりある?」


「やっぱ俺達のアジトの事じゃないかな」


「アジト? ・・・あぁ」



 ルシュディー君ことルシュディー少年の在籍していた組織、何とかの狼・・・狼の何とか? は、集落から抜け出したアーキア人や外から来たアーキア人の寄合い所帯、そこを守る人達で構成されたグループを指す。


 彼等は空き家となった旧市街の宅地を無許可で占有してる為、法的に見れば完全にアウト。しかし彼等も生活をしていかなければならない訳で、激動の旧市街でユシュタファ達はそこに住まう同胞の為に駆けずり回っているのかもと想像がつく。



「やっぱり現地に行ってみるしかないのかな」


「・・・なぁ 俺も付いて行っていいか」


「それは構わないけど・・・」


「私は構わないわ 早くお目当てのアーキア人に会えるのならね」


「・・・ルディア? もしかして君も行くつもり?」


「当たり前よ この私をこれ以上待たせるとか平民の分際で配慮が足らないのよ」


「なぁ このネーチャン ユシュタファ兄貴とは絶対ソリ合わないぜ」


「うん 知ってる・・・」



 一抹の不安を抱えつつ旧市街へ歩くルディアに「発言には気を付けて」「事を荒立てないでね」と釘は刺してみたものの、僕の言葉は右から左みたいで、鼻息荒く歩く彼女の存在に正直いつか爆ぜる爆弾としか思えない。


 かと言って「来ないで」と言おうものならギルドが爆心地となる。手に負えない何かを抱えると言う事は、被害を被る事を覚悟しなければならないと言う事なのかもしれない。


 疲れる・・・



「うわ もうここから変わっちまってんのかよ」


「みたいだね」



 彼等としばらく歩いて旧市街に差し掛かろうとした矢先、ルシュディー少年から驚きの声があがった。


 と言うのも以前の地図と照らし合わせてもここは本来道じゃない。僕達は今民家の中を突っ切ってる事になる。更には歩けども歩けども道は狭くもならずクネクネもしない。


 それどころか人や荷が通っても快適なスペースが確保され、僕が思う旧市街のイメージは完全に払拭されていた。


 建物の様相はどうかと言うとルディアが不快に思わない程度には洗練されてるらしい。今まで狭小的な立地に慣れていた住民には少々落ち着かないのではないだろうか。


 新たに整備された旧市街に以前の土地勘は適応せず、あちこち歩く羽目になった僕達だけど、何とか名残を頼りに目的地へと辿り着いた僕達は、そこに漂う空気感に懐かしさを感じた。


 勿論悪い意味でだけど・・・



「空気悪いわね 何なのここ」



 ルディアが不快を示すのには理由がある。まだ日も高い筈なのに建物の外には数名が何をする訳でもなく思う訳でもなく、ただじっとその場でたむろする光景が眼前に広がっているからだ。


 道も広い筈なのに彼等の醸す雰囲気がその幅を狭めてしまっている。



「ルシュディー!」



 そんな暗い空気の中を、少年と同じくらいの年齢と思われる子供の声が建物に反響して聞こえた。トタトタと走ってきた彼等にルシュディー少年はようやく気持ちを晴れやかにする。


 どうやらお先真っ暗にはならずに済みそうだ。



「お前等っ 無事だったか! こここんなに変わっちまって お前等どうしてたんだ?」


「転々としてるよ 家の中に入ろうとしたら兵士に見付かって追い出されたり それで連れてかれた奴もいてさ」

「そうそう あいつ等酷いんだぜ 俺達の事虫ケラみたいに扱いやがってよ!」

「廃墟とか小道なんかも失くなって 隠れられる場所も少なくなったから 座ってるか別の場所に行くしかないんだ」

「でもよ 別の場所って言ったって 元からいた連中とかち合うと喧嘩になるんだぜ?」

「だからこうして動けないでいるやつ等も多いんだ」



 矢継ぎ早に文句を吐露する彼等の現状は思った以上に深刻らしい。


 アーキア人は町の人達からあまり良く思われてはおらず、収入源にも困る人が多いと聞く。加えて差別的言動に晒される機会もあって互いに心は離れてる。


 ユシュタファが捕まらないのもこの状況に収集の目処がたたないからだろう。



「ねぇ君達 ユシュタファの居場所知ってる人いない?」


「そうだ ユシュタファの兄貴見なかったか?」


「いや 最近見ないな」

「あ 俺見たよ 何か・・・顔怪我してたかも・・・」


「え そりゃ どう言う事だよっ」


「近くで見た訳じゃないけど 何か顔のとこ腫れてた気がする なぁ?」

「うん 俺も見たかも 何か近付ける雰囲気じゃなかったよな」

「あっ 後ディゼルって奴もいた 前に町長の息子とかほざいて威張ってた奴!」

「そういやいたな」


「ディゼルが? 何だろう・・・確実に問題が起こってる臭いしかしないんだけど」





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