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353・ルディアの悩み

前回のあらすじ


ルディアの機嫌とりにアネットに試合を挑むロダリオだったが力及ばず負けてしまう。その技巧に感嘆したのも束の間、力押しのユシュタファ相手に簡単に倒されるアネットに複雑な思いを抱くロダリオだった。

「いたた・・・」


「小細工は得意でも 突っ込まれたら弱いな お前」



 以前モンスターの大群がハルメリーに押し寄せた折には、対峙したモンスターに突っ込まれて今みたく押し負けた事があった。あれから幾らかの戦闘経験を経て敵と渡り合えるスキルを会得してきたものの、未だ真正面から相手をねじ伏せるスキルの獲得には至っていない。


 やっぱり人間向き不向きはあるんだろうか。僕の場合、同年代の子相手でも声が上から聞こえてくる体格に原因があるとしか・・・ だとしても、難局を打破できる恩恵をスキルさんは与えてくれるものと信じたい。



「こ 今後の課題にしておくよ」


「ちょっと大丈夫?」


「アネットにも相性はあるんだな あんな素早い剣を披露できても重い一撃の前には押し負けるのか ちょっと安心した」


「言う程速かったか?」

「んー 普通じゃね?」

「てか ロダリオの方が余計な動きしてたけどな フェイントにでも引っ掛かった感じ?」


「フェイント・・・そうなのかもしれないな 何せアネットの姿が2人にブレる程速かったんだ 目で反応できても体が追い付かない」


「え・・・ 僕そんな素早く動いたつもりはなかったんだけど?」


「え・・・」


「ああ 俺も速く動いてる風には見えなかったな」


「私もー」


「んなこったろうと思ったぜ やっぱ小細工だ小細工 おおかた幻でも見せられたんじゃねぇか? こいつスキルで墨まで撒きやがるしよ」


〔アネットを変な軟体生物みたいに言わないで〕


「僕もそんなつもりはなかったんだけど・・・ 盲目さん?」

『アネット最近 自分の短所に思い悩んでたからねー ボクなりに考えながら戦ってみたんだー』


「つまり幻覚でも見せるスキルって訳か」


『でももうちょっと工夫できそうな気がするー 既存のスキルと色々と組み合わせたりしてー』


「だがそんな小細工も俺には通用しなかったけどなっ」


〔そうね アネットは押し倒された時の対処法も訓練した方が良いわ クフフ・・・〕


「だから何でお前はいちいち顔がニヤけんだよ」


「しかし 今までやってきた事を無駄に終わらせない工夫の余地がスキルにはあると思うと 負けてへこんでる暇はなさそうだな」


『自分のできる事って日々の生活の中にヒントがあったりするからねー その経験が気付きを与えてくれるし 下を向いてるのは勿体ないよー』


「人生の豊富をスキルさんから教わる日がくるとは・・・」

「そこはホラ 自分達のパートナーって事でいいんじゃね?」


「ロダリオは戦い方のバリエーションを増やしてみたらどうかな 急に動きが変われば相手もやりにくくなるし 体幹もしっかりしてるから順応できそうに思う」


「戦い方か そうだな お前の苦手な戦法も分かったし 考慮に値するアイデアだ」



 自分にできない事を他人がしていると心の内に焦りのような感情が滲む。けれど無理して相手の真似を続けるだけじゃなく、自分のできる範囲での多角的なアプローチいわゆる工夫が、自身の成長に繋がるのではないだろうか。


 現にロダリオの体幹は音の感じから幼い頃から培ってきたものみたいだし、土台ができているからこそやれる事に幅を持たせる事ができるのだから。


 次戦う時は一回り成長した彼を体験できるかもしれない。



「・・・ねぇちょっと 私はいつまで待たされるわけ? 勇んで挑んだ結果無様に敗けを晒すとか勘弁してほしいんだけど 手続きだったかしら そんなのさっさと終わらせて とっとと帰るわよっ」



 ルディアそっちのけでスキル談義に華を咲かせたら彼女の機嫌を損ねてしまったようだ。元々スキルさん探しをしに来たのに、お目当ての“精霊さん”には会えず、怖い思いをしたあげく服の出費までかさんだとあっては尚の事不快だったろう。


 そんな不満の捌け口を、これから1人で受け止めなければならないと感じたのか、戦いで高揚していたロダリオの感情は、ルディアの後を歩くごとに無色透明になっていった。



 ★



 ふざけんじゃないわよ! 私が直々に出向いてやったのに成果を出さないどころかあんな恥まで・・・っ! やっぱり経験の浅い新人なんかに頼むんじゃなかった!


 そもそも毎回あんなのが出てくるんだったらもっと大勢で挑むべきなのよ。冒険者は驚異に対する見積もりが甘いんじゃないっ?



「────と言う訳なの ハルメリーで大店を自称するカストラ商会の意見を聞かせてちょうだい」


「意見ですか・・・ ルディア様が栄達を望まれてる事は分かりましたが それにしても精霊さんですか そんなおとぎ話を本気で信じるので?」


「魔物さんを連れてたあの子は精霊さんを探していたわ その鍵となってるのがアネットだって言って拐ったんだから」


「そんな事が・・・ しかし双方共にマイナス等級でしょう そのあり方に欠陥を抱える者の言など信用に足るとは いまいち思えませんな」


「そうね そうかもしれないわ でもここに来てそのマイナス等級への認識は変わったわ 大量のモンスターを操ったり 盲が決闘で勝ってみたり 明らかに普通じゃない事が起こってるんですもの」


「・・・フム ルディア様 少し変わられましたな」


「何よ 変だって言いたいのっ?」


「いえいえ 柔軟になられたと言いたいのですよ それで貴女は件の精霊さんを手に入れる為の助言を聞きに来たと そう言う事でよろしいのですかな?」


「・・・そうよ」


「ふ~む 結論から申しますと 無謀 その一言につきますね」


「まさかできないって言うの?」


「現実的ではないと言い換えた方が分かり易いですか 夢やロマンを追うのはけっこうですが 私から見ればそれは道楽でしかありません」


「道・・・! ちょっと 少しは言い方ってものがあるんじゃないかしら」


「在るかもしれないものを追う それはギャンブルと同じですからね 過去 国も冒険者も多くの人間がダンジョンに挑んできました が 未だに制覇したと言う報告はあがっておりません これら組織体が実現できないものを いち貴族が成し遂げられるとは到底思えません


 確かにマイナス等級の可能性には目を見張るものがあります 私も認知するところではありますが 彼等の扱うスキルが国体を凌駕するに至ると思いますか? 仮にダンジョンの奥底に人智を越える何かがあるとして それに到達しうるまで どれ程の時間と労力それに資金が必要となるでしょう


 私も大店の自負はありますが それは1つの町の中だけの話です 国費に匹敵する財を有している訳ではありませんし できる事にも限界はあります」


「まさか諦めろって言うの?」


「見切りは早い内につければダメージも少なく済みますからね ルディア様には精霊さん等と言う幻ではなく 自身に見合ったスキルさんをお薦めします それが堅実と言うものです」


「・・・ダメよ そんなの特別じゃないわ」


「特別ですか・・・ これはとある知人の話ですが 彼は冒険者になりたての頃 強さに憧れ たいそう大きな剣を振り回していました それが先日あった折りに腰にぶら下げられていたのは細身で刀身も短いショートソード


 昔話のついでにその理由を尋ねたところ 冒険者としての生活が今の自分を作り上げたと 笑いながら話してましたよ


 しかしそれは理想に屈したからではありません 現に彼は高ランク冒険者にまで上り詰めましたからね つまり自分らしさを確立したからこそ成し得た偉業とも言えます」


「つまらないわね どいつもこいつも精神論とか結果論でしかものを言わない もっとこう あるでしょ これこそは! ってやつが」


「ハッハッハ それはもはやルディア様の気質の問題ですな 目の前にある果実が欲しくて欲しくて仕方ない様に見えます しかし現実は日々の積み重ねなのですよ 蓄積された経験と知識が状況を打開する 今の貴女に必要なのはそれだ


 それにスキルさんに理想を見ているようですが 才能とは自身の望みを叶える為の道具に過ぎません 幸いこの世は望めばスキルと言う恩寵を得られる訳ですから 精霊さん等と言う特別に振り回されるのではなく 貴女の理想を支えるスキルさんをお探しなさいませ」


「理想・・・そう言われたって 分からないわよ 私はただ・・・周りより下じゃダメなの」


「なる程 具体的なイメージが湧かないと言ったところですか ならばスキルさんはいったん置いといて ルディア様にしかできない事を致しましょう」


「私にしかできない事? それって・・・」


「貴族としての格を上げるのです その為にはまず自身の手札の確認ですね その立場を使って何ができるのか それが肝要です」


「そんなの簡単に思い付くならとっくにやってるわよ ここに来たのだって権限使って人動かしてダンジョンに行くつもりだったんだから」


「それは賢明とは言えませんな 無謀に巻き込んで人を死なせては信頼も地に落ちます それは国とて同じ 今は大手柄をたてるよりコツコツ地盤を固めるべき時 それにつきまして1つご提案が────」





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