表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
351/353

351・ルディアの鬱憤

前回のあらすじ


1人逃走を試みたルディアの元に駆け付けたアネットは、そこにいたウォルガルと接敵する。グニャリと姿を変えたウォルガルは、しかし善意の忠告をするとあっさりその場から姿を消すのだった。

「アネット! ・・・良かった・・・ ・・・遅かったじゃないっ 心配したんだからっ」


「ごめんねマルティナ ちょっとあって時間掛かっちゃったんだ」



 ダンジョンから戻る事自体さほど時間は掛からなかった。でも出口付近に近付いた瞬間、真っ先に駆け出したルディアが向かった先は服を取り扱ってる店の中だった。


 着替えの為だから仕方ないと最初こそ思っていたけれど、興が乗った彼女は本格的な服選びへと趣旨が変わり、今では購入された大量の包みで僕の手は塞がれている。



「って その荷物は何なんだ? それにその服も・・・ あまりに遅いから こっちは探しに行こうか話し合ってたんだぜ?」


「えっとこれは・・・ に 逃げてる時にルディアの服が汚れちゃって・・・ すぐ出口に向かったんだけど着替えに時間掛かっちゃったと言うか──────」

「貴族であるならどんな時も余裕を失くしてはいけないものなの ダンジョンでは不甲斐ないところを見せてしまったけどホラ お陰でこの通り私は怪我もなくってよ」


「依頼主が無事なのは良かったけど・・・」


「しかし良かった 貴女にもしもの事があればルンドレン伯に申し訳がたたないところでした」


「まったくよロダリオ・ウィンスター 本来なら貴方が真っ先に窮地に駆け付けなければならない立場なんですからね」


「だからってよ普通 悠長に買い物なんてするか? 優先順位が違うだろ まずは仲間の安否の確認が先じゃないのか?」



 ですよね・・・僕も「早く皆のところに向かった方がいいよ」と言ったけど、貴族として顕示したい何かがあるのか、彼女のプライドは人の心配より優先されるらしい。スキルさん探しと同等の熱の入れようだったもので・・・



「仕方ないじゃない 土埃で服が汚れてしまったのだもの 淑女たるもの身だしなみは常に気を払うものだわ」


「はぁ~!? お前なぁ!─────」

「ユ ユシュタファ達こそ無事で良かったよ モンスターの相手は大変だったでしょ」


〔実際そうでもなかったわ 逃げに徹して走ってる間に いつの間にか後ろを追ってこなくなってたし 向こうも本気じゃなかったみたい〕


「そーそー 何か普通の2階のモンスターと違う感じがしたよねー 統率されてる感じー?」



 なる程、ルディアも含めて僕達はウォルガルに遊ばれたらしい。彼にはもろもろ言いたい事もあるけれど、彼女に粗相させてくれた事だけは礼を言いたい。維持を張ったルディアを止める抑止力は僕には無かっただろうし。



「でも良かったのか? 冒険者は獲物を狩って報酬を得るものなんだろ? 折角の獲物が・・・」


「ん? ああ 外の人間には分かりづらいけど ここの連中は基本毒持ちだからな 毒の類いは出る時に検閲で引っ掛かるんだ それに素材と言うならモンスターより鉱石メインだから コドリン洞穴でのモンスター討伐は深層攻略か採掘師の護衛くらいだ 後は修行って名目の戦闘ってところか?」


「ま 今回は護衛って事だしー? 報酬さえ貰えれば私的にはいいかなー」


「冒険者としてはこれが通常業務かな もっともアネットのこの大荷物じゃどの道今日はここまでだが それで? 今後はどうすんだ? 特別なスキルさん探しってのはさ」


「・・・と 取り敢えず保留よ これからの事はこれから考えるわ」



 流石にすぐさまリベンジと言う気にはなれないよね。でもそれは恐怖からと言うよりも思い悩んでる・・・そんな気持ちがルディアの心に広がっていた。ウォルガルとの邂逅に思うところでもあったのかな。


 ともあれ猪突猛進に突っ込んでいかれるよりはかマシだ。深く悩んだ末、彼女には是非とも身の丈に合ったスキルさんと巡り会ってほしい。まぁ本人は頑なに認めないんだろうけど。


 さて・・・


 どんな結果でも引き上げなければならない潮時と言うものはある。今回依頼主のご期待には添えなかったけど人間動けば疲れるし腹も減る。と言う訳で僕達は報告も兼ねてギルドに戻る事にした。



「でもさー ミストリアの水魔法凄かったねー あれが無かったら私達逃げられなかったかもー」


「だな ああ言う場合やっぱり遠距離で対処できる手段が欲しくなるよな」


「その為のパーティーでしょ?」


「そうだけど 個人的にって意味でさ」



 スキルさん探しが仕事と言う事もあって帰還中みんなスキルさんの話題に終始した。僕もそうだけど、それぞれ自分の扱えるスキルの幅には思うところがあるようで、無い物ねだりがちょくちょく会話に挟まっている。


 思うと事は同じなんだと思うとちょっと安心した。



「やっぱ武器は色々持ってなんぼだぜ どんな状況にも対処できるからな」

「でもユシュタファ 狭い場所では一気に動けなくなるよな」

「そうそう この前も邪魔とか言って背負ってる武器放るし ぶっちゃけ後で探すの面倒なんだよな それに敵に利用されたらどうするんだって」

「あっはは やっぱお前等もそう思ってた?」

「う うるせーな! これが俺のスタイルなんだから良いだろっ!」


「・・・・・・・・」


「でも自分の姿を自在に変えるスキルとかブッ飛んでたよな 普通に生きてたらあんな発想しねぇだろ 体の大きさ変えるって痛くねぇのかな てか人間には無理じゃね?」


「だねー でもたまに思わない? 今のスキルさんを選んでなかったら どんな人生になってたんだろうって それともやっぱり人生を選んだからそのスキルさんなのかなー?」


〔そう言うのって意外と自分の意思じゃなくて 周りの環境が方向性に影響を及ぼすんじゃないかしら 自由であるようで意外と選択肢は少ないのかも〕


「俺は自分の発想次第だと思うぜ? 要は創意工夫だ」


「私はこれっきゃないって感じで冒険者を選んだわね 誰かさんが無謀にも冒険者になってくれちゃったからさ」


「そ その節はどうも・・・」


「・・・・・・・・」


「俺達は必要に駆られてって感じだよな それしか道無かったし」

「ま 生きる為だし しゃーねーよ」

「でもそうなると俺等って意外と真っ当だったんじゃね? 小狡い事やってきたけどさ 自分にできる事の延長線にあるスキルさん選べた訳だしよ」

「確かにそうだわ」

「そうなるとアネットはどうだったんだ?」


「え 僕? 僕は・・・」



“盲目さん”との出会いは彼等のように必要に駆られてでも焦がれた先の出会いでもない。でも結果として冒険者になれた訳だし否定文でお茶を濁すのは野暮と言うもの。


 それに僕のスキルさんが“盲目さん”じゃなかったら、たぶん別の道を選んでたのかもしれない。そう考えると・・・



「運命の巡り合わせだったと思う」


「ま 盲目さんに魅入られるとか 運命とでも言わなきゃ割り切れねぇよな」


「ひっど でもアネットちゃんと冒険者になれたじゃーん」


「弟分が難聴さんに憑かれたんでな 前向きには受け取れねぇんだよ」



 日常生活にまで影響を及ぼすような状態にされるのだから一般に「マイナス」なんて呼ばれるのだし、大切な人がそうなれば「許せない」って気持ちになるのも分からないでもない。


 実際僕の家族もミストリアも多大な影響を受けている訳だし・・・


 そんな暗い話になりつつも僕達一行はギルドに到着すると早々にギルド長室に連行される事となった。理由は言うまでもなくウォルガルの存在だ。


 ダンジョンで異常があれば報告するのは冒険者としての義務でもある。取り分け喋るモンスターの情報は秘匿性の高いレベルとしてギルドでは扱われているらしい。



「ここがギルド長の部屋なんだ・・・」


「意外とフツーなんだねー」



 今回のパーティーではギルド長室に入るのが初めてのメンバーもいて緊張に固くなっているのが目に見えて分かった。まぁ普通に冒険者やってたらギルド長の部屋のお世話になる人なんてそうそう居ないのだし仕方ない。


 ちょっと重たい空気にまいってる僕達の中にもう1人、緊張でコチコチになっている人物がランドルフさんの指示で部屋に通されていた。


 その1人と言うのがクリスティー。



「ではお主等の見たウォルガルとやらの外見を絵に書き起こすとするかの」


「外見って言われても細かくは覚えてねぇぜ」

「でかくなったくらいだよな実際」


「でも見た事ないモンスターだったのは確かだ」


「もしかしてダンジョンのもっと下層のモンスターだったりー?」


「それにウォルガルは人にも化けられますよ 現に僕が彼女・・・ルディアの元に駆け付けた時には2人で会話してましたから 彼の変身スキルは側にいて正体に気付けない程の精度だと思います」


「げ マジかよ」

「悪い事し放題じゃん」


「スキルさんってそんな事もできたのか って事は俺達が見た姿はウォルガルの本当の姿じゃなかったって事か?」


「あ・・・それならルディアが見たかも 僕の前で姿を変えた時にはスキルさんを纏っていなかったから その時が本当の姿だと思う ルディア その時のウォルガルの姿思い出せない?」


「きゅ 急にそんな事言われても困るわよっ 大体咄嗟の事だったし 大きかったのは覚えてるけど・・・」


「ギルドとして驚異に対する備えはしておかなければならん すまんが記憶が曖昧にならん内に描きださねば今後に支障をきたすやもしれんのでな 暫く付き合ってもらうぞ」


「ぐぬぬ・・・」



 自分に毒水飲ませようとした相手の姿を思い出せと言われて良い気分じゃないのは分かる。けど色々思い出してる内に嫌悪と憎悪を(たぎ)らせたルディアの内面はおどろおどろしく濁っていった。騙された事がよっぽど腹に据えかねたのだろうか。


 そんな感情をぶつけるように絵に叩き付けて完成したウォルガルの姿絵だけど・・・



「ん~・・・モンスターって言えばモンスターだけど こんな姿のモンスターいるか?」


「適当描いてんじゃね?」


「失礼ね! ちゃんと思い出して描かせたわよ! 絵が下手なんじゃない!?」


「絵は下手って感じじゃないけど 何て言うか今一特徴が無いって言うか ・・・適当? って感じに写るのは確かだな」


「そうだね 実際のモンスターは見た事ないけど 僕が想像してたのとはちょっと違うような でもモンスターのような・・・ 一言で言うなら無個性?」


「てかアネット この絵見えるん?」


「うん クリスティーの描く絵なら僕も見る事ができるんだ 彼女の持つスキルだよ」


「へぇ お前と言いミストリアと言い マイナス等級って言われてても ちゃんとスキル使えるんだな」


「あ この絵のタッチで思い出したんだけど 確か資料室に置いてあった絵と同じじゃない?」


「この娘はギルドの資料作りに従事しておる 特に植物の特徴を正確に描いてくれるから ギルドとしても助かっとるわい」



 初めは奴隷として絶望色をしてたクリスティーだけど、今は普通に人生のレールに乗れて普通を謳歌できている。まだまだ周囲からの偏見はあるだろうけど彼女の心を見ていると居場所はちゃんとあるようで、この町に招待した身として安心できる。



「・・・・・・・・」



 ・・・できるんだけど、不安要素と言うものは完全に拭えるものではなく、僕達がスキルさん談義に花を咲かせたところからルディアの不満が鬱積していた。


 ここに来て自分が見下してただろうマイナス等級が、誰かに必要とされてた事実に彼女の自尊心は傷を付けられてしまったようだ。



「不愉快ね! 私は見たままをちゃんと証言したわ! 信じないなら信じないで結構! 用も済んだしこれで失礼させてもらうわっ!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ