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349・特別を求める理由

前回のあらすじ


ウォルガルと出会したアネット一行は約束通り薬の売人達を捕らえた事を報告した。しかし相手をザコ認定したルディアは強い口調で挑発してしまう。それに反応したウォルガルは正体を表し周囲のモンスターを呼び寄せてアネット達にけしかけるのだった。

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・ 何処よ ここ・・・」



 もしかして・・・迷った? どうしよう・・・にしても、どうして誰も付いて来ないの。ロダリオは? 他の皆は?



「チッ 使えないわね・・・」



 モンスターからは・・・逃げ切れたみたいだけど、出口は何処かしら。 



「どっち行けばいいのよ こんな事ならあんな素人連中じゃなくてお金詰んでベテラン雇えばよかったわ」



 まぁアネットは連れてくとしても残りはダメね。全員クビよクビ。ここの冒険者ギルドにも解雇するようにキツく厳命しとかないと。


 それにしても・・・



「走ったら 喉が渇いたわね 自分で水袋 持っとけばよかった・・・そう言えば 水はミストリアが出してたんだっけ 忌々しい」



 ロダリオ・ウィンスター。主人の窮地にいないなんてほんと役に立たない従者だわ。帰ったら折檻して分からせてあげないと。


 でも今は出口よ。下って来たんだから帰りは上ればいいのよね。前もダンジョンは歩いたんだし、モンスターにさえ気を付ければ余裕よ余裕。


 タッタッタッタッタッタッタッタ・・・


 !! 足音!?



「だ 誰よ・・・っ」



 モンスター? モンスターなの? それにしては聞き慣れた足音。これ人間の・・・



「良かった・・・はぁ はぁ はぁ やっと見付けた・・・はぁ はぁ」


「アネット!」



 ああ・・・良かった。来てくれた。アネットが来てくれた。やっぱりアネットは特別なんだわ!



「遅いじゃない! 私を1人にしてどう言うつもりっ? 従者失格よ!」


「ご ごめん でも勝手に走って行っちゃうから」


「口答えしないの! それよりも出口・・と その前に喉が渇いたわ 水持ってない?」


「・・・ごめん 逃げるのに必死で落としちゃったみたいで」


「はぁ~ 抜けてるわね 従者はいつもご主人様を第一に考えるものよ」


「あ でもここに来る途中で水の湧いてるところを見付けたよ ちょっとだけ歩くけど・・・大丈夫そう?」


「・・・ ・・・仕方ないわ できればとっとと戻りたいけど 喉カラカラだし・・・ そこまで案内してちょうだい」


「うん こっちだよ」


「ところで 他の人達はどうしたの?」


「・・・あの後モンスターの大群が押し寄せてきてさ 君を追って走ってる内にバラバラになっちゃったみたいなんだ」


「そう それなら仕方ないわね 私を優先したって言うなら許してあげるわ」



 でも居ないんなら何の役に立たない事に変わりはないんだけどね。これならあの子のモンスターが近くにいた時の方がよっぽど安全だったわ。



「それよりも貴方耳が良いんでしょう? ちゃんと私を安全に脱出させるのよ いいわね」


「分かってるよ 仕事だしね」



 目も見えないし見た目にも頼りないけど「音に敏感だ」って冒険者達は太鼓判押してたし・・・大丈夫・・・よね。うん・・大丈夫。そう言う事にしておこう。



「これじゃ私だけの特別なスキルさんを手に入れるのにどれだけ時間かかるか 分かったものじゃないわ」


「・・・ ・・・個人的にはスキルさんに特別ってないと思うんだけどね どんなスキルさんだって使い方次第で面白い力を発揮すると思うし」


「私は見せ物のお人形になるつもりはないの 言ったでしょ」


「僕は 特別って自分の資質を発揮した先にあると思うんだ 己を知って できる範囲からアイデアを絞った方が 特別に近付けると思うんだけどなぁ」


「私は貴族の家の一員なの 希少価値って意味でも相応しいスキルさんであるべきなのよ」


「なる程ね 要は自分がどうあるかよりも 他人からどう見られたいかの方が重要って訳だ」


「・・・引っ掛かる物言いね」


「他意はないよ それだったら君にピッタリなスキルさんに心当たりがあるんだ」


「何よそれ 言ってみなさい」


「裁縫さんだよ」


「ふざけないでっ あんなものお人形の代名詞じゃない 私達の間でどう言われてるか知ってる? 服で着飾るだけの置き物 貴族の娘として無難な選択 田舎貴族の家長が自分の娘に付けたがるスキルさん候補筆頭だわ 私の家は伯爵家 上級貴族なの そんな底辺共と同じじゃ許されないのよ!」


「そうかな お似合いだと思うけど 裁縫さんってどんなスキルさんか知ってる? 自分の置かれてる状況に合わせて似姿を取り繕えるんだって 今の君にピッタリだと思うんだけどな」


「バカにしているの?」


「してないよ 僕なりの率直な意見ってところ」


「・・・フン 所詮は庶民ね 貴族社会ってものが分かってないんだわ」


「僕は周囲の潮流の変化に対応できるスキルさんとして推したつもりだったんだけど 結構便利みたいだよ?」


「そう言う役目は付き人の仕事なの 主は優雅に構えるものよ」



 忠告のつもりなんでしょうけど(めしい)だから社会と言うものまで見えなくなっているのね可哀想に。盲目のくせにたまたま冒険者になれたからって世界が分かったと勘違いしてるんだわ。


 口の達者な小間使いとでも思えば見た目と合わせて可愛気もあるからまだ許せるけど。触れてはいけない部分まで踏み込んでくるのは問題よ。


 帰ったらちゃんと仕付けてあげないと。



「ねぇ・・・まだ着かないの?」


「もうちょっと すぐそこだよ」



 道がこうも入り組んでちゃ、どっちが出口か分からないわ。地面はデコボコしているし道も上がったり下がったりで。これ一人だったら完全に詰んでるやつじゃない。



「そう言えば その特別なスキルさんを手に入れて 君はどんな特別になりたいの?」


「はぁ? 特別は特別よ 特別なスキルさんを手に入れて私は特別な存在になるの そうすれば誰もが羨望の眼差しで私を見るわ 誰からも認められて誰もが私を求めるの 最高じゃない」


「でも求められるって事は それに応えなきゃいけない訳だけど 大丈夫?」


「私の家は上級貴族よ? できない事なんかないわ」


「ふ~ん どこまでも他人任せなんだね」


「さっきからトゲのある言い方するわね」


「そんな事ないよ ちゃんと自分のできる範疇を考慮してる事に感心してるんだ 僕達冒険者がパーティーを組むのと同じで 自分に必要と思うパーティーを集めるのは良い事だよ 要は優秀な人材を欲してるって事でしょ?」


「・・・そうね 要約すればその通りよ」



 そうよ。私の一言で皆が動けば生意気な口を利いてくる奴もいなくなるんだわ。学園でも社交の場でも私の立場は磐石になるの。誰にも脅かされる事のない地位。絶対に手にいれてやるんだから。私だけのスキルさん“精霊さん”を。



「あっ あったよ ホラあそこ」


「ふぅ ようやく水が飲めるのね でもこんなに歩くなら素直に出口に向かえば良かったかしら・・・ ・・・ねぇ これ ホントに飲めるの?」



 ダンジョンから涌き出てるのは水だけど、その回りの壁やら地面やらはヤバげな色に変色してる。これ喉を潤しても大丈夫なやつかしら。でも本当に喉乾いてるし・・・う~ん。



「どうしたの? 飲まないの?」


「いや だって ねぇ・・・ ア アネットは飲まないの?」


「僕は喉乾いてないし平気だよ」


「う・・・ そ そう・・・ ・・・」



 これに口つけるのは正直勇気がいるわ・・・



「こう言う時に 飲んでくれる人がいればいいのにね」


「まったくその通りよ」


「さっきの話の続きなんだけど 裁縫さんって他人との関係を深めるのに最適なんだって 人って見た目とかが重要らしくてさ 好意を抱いた相手の言う事ならなるべく聞いてあげたいって気持ちが働くんだって


 だから君を見て誰もが振り向く容姿をしていれば 今ここにいるのは僕だけじゃなかったかもしれないね だって何を置いても君を優先するんだからさ」


「・・・最もらしい意見だけど前提が間違ってるわ 私が周りに合わせるんじゃないの 周りが私に合わせるの 私が求めるスキルさんは ただそこに居るだけで皆が私を称えるスキルさんなんだから」


「それは平たく言って洗脳ってレベルじゃ・・・ でもそれだったら尚更君にピッタリだよ 人を惹き付けるって事は心を支配するのと同じなんだから


 ゴクゴクゴク・・・ふぅ


 ほら 飲んだよ? 何も問題ない証明になったかな 僕は君が望んだから飲んで見せたんだ 人の気持ちが君に傾いてさえいればおかしな特別なんて必要ないんだ スキルさんじゃない君自身が誰かの特別になればいいだけなんだから」


「な・・・何言ってるのよ で でもまぁ 誰かの特別になるってところは悪くないわね」



 盲に言われても嬉しくないけど嫌な気はしないわね。従者として及第点はあげとこうかしら。


 それにしてもこの水・・・ アネットも飲んでたし大丈夫・・・なのよね・・・


 ドキドキ・・・










「それを飲んじゃダメだ!!」


「はぁ? 大丈夫って貴方が言ったんじゃなぃ・・・ っ!? ・・・は? ??? アネット? え アネットが・・・2人?」





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