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347・冒険者一行の不穏な空気感

前回のあらすじ


ルディアの「特別なスキルさん」探しにコドリン洞穴へやって来たアネット一行。しかしダンジョン探索に乗り出す前に増築されたダンジョン街に魅了されたルディアは探索そっちのけで買い物を堪能するのだった。

「このモンスターはコドリンウォーボルグって言って このダンジョンで一番最初に出てくるモンスターなんだ」


「ふ~ん いわゆるザコってやつね ・・・グロいわね 気持ちわる」



 サクッと倒されたモンスターを前に率直な感想を述べたルディアだったけど、軽薄な言葉の裏に途轍もない嫌悪感が隠れていた。モンスターの死骸に嫌な思い出でもあるんだろうか。


 うん・・・そう言えば少女が“はぐれモンスター”を創る際に凄惨な光景を目にしたんだっけ。なら仕方ない。



「お嬢様にはお目汚しさせちまったみてぇだな 嫌なら清潔なお宿で待っててもらっても構わないんだぜ?」


「このくらい大した事ないわ さあ とっとと先に進むわよ」



 でも自分の行動を反省したのか、先頭ではなく中列にいてくれるのは助かる。とは言え「先に」と言われても深層に向かう訳ではないので彼女の要望には応えられない。問題はこれでルディアを誤魔化せるかだけど・・・



「そう言えばさー スキルさん探してるって言うけど どんなスキルさん探してるのー?」


「そんなのこの私に相応しい 特別なスキルさんに決まっているじゃない」


「それは・・・随分とアバウトだな うちのじっちゃんも言ってたけど 特別を追ってる内は特別には辿り着けないんだと」


「貴方のお爺さんと比較されても困るわね 私は貴族であって庶民ではないわ」


「庶民って言っても うちのじっちゃんは名工のオルソンだぜ?」


「誰よそれ」



 服やアクセサリーに興味はあっても、それに携わる人間には無関心らしい。でも人って意外とそう言うものなのかも。僕も英雄像には憧れるけど、実在する英雄には興味なかったりする。



「ダンジョンに来る時にスキルさん寄ってきたけど あの子じゃダメなのー? 確か裁縫さんだっけ スキルさんの方から来てくれるのって相性いい証拠だと思うんだけどなー」


「服とか見た目に拘るなら 俺もありだと思うけど」


「ダメよ! そんなありきたりなスキルさん 何の自慢にもならないわっ」


「てかスキルさん自慢してどうすんだよ 肝心なのは中身だろうが」


「ふん 庶民には貴族社会と言うものがどう言う世界か分からないでしょうね」


「知るかよ こっちは産まれた時から集落の中に閉じ込められてたんだ なに不自由ないお貴族様の生活なんざ 分からねぇし分かりたくもねぇよ」


「だったら仕方ないわね 分からないなら 口を挟まないで下さる?」


「ああ!? こっちはテメェの我が儘に付き合ってんだろうがよっ」


「こっちはお金を払ってるんだから 口答えしないで仕事なさい それが嫌なら帰ってもらっても構わないのよ?」


「上等だごらぁ!」


「ちょっと ダンジョンで喧嘩はやめてよねっ」

「ルディア様も 貴族にあるまじき言動ですよ」


〔・・・先が思いやられるわ〕



 ダンジョンの淀んだ空気がパーティー内にも入り込んだらしい僕達の距離感を汚染する。ギクシャクした関係がまるで音をたてた擬音のように足音だけを僕等の周囲に響かせた。



「俺・・・護衛の仕事向かないのかもな」


「こればっかりはクジみたいなものだよ 肝心なのは悪い結果が出ても前向きに切り替えて考える事だと思う」


「あんなのどうやったら前向きに捉えられるってんだ とんだ厄日だぜ」


「アネット 私のスキルさんは何処かしら 歩き通しで疲れたわ」


「そんな直ぐには見付からないよ ・・・何たって 特別 なんだから」



 此方もはぐらかす為に歩いてる訳だけど、距離を稼ぐ度にルディアとユシュタファの不快度指数が蓄積されてきそうで怖い。それに皆には「特別なスキルさん」なんて言葉で誤魔化したけど“精霊さん”なんて一言も言ってない。


 言えば「何言ってるんだ」と言われるだろうし、そもそも手伝ってはくれなかったろう。なので騙してるようで申し訳なくなってくる。


 パン!


 突如隣で歩いてたユシュタファは両の手で自分の頬を叩いた。



「よし 気持ちを入れ換えよう これは仕事これは仕事これは仕事・・・」



 自分に言い聞かすように同じ言葉を繰り返す彼女は、ルディアの存在を切り離すようにみるみるいつものユシュタファを取り戻していった。どうやらそこまでしなくてはいけない程、彼女にとってルディアは心の弊害となっていたようだ。


 思えば僕も最初はあまり受け入れられてなかったっけ。なのでルディアとも時間を掛ければ普通に接する仲まで進展するのだろうか。


 ・・・。



「なぁ 折角みんなでダンジョン歩いてるんだ 別々のパーティーでの連携を意識して戦ってみないか?」


「それはいいけど どうしたの? 急にー」


「ん? 仕事ってなるといつも固定されたパーティーばかりだろ? だから違うやつとも息を合わせられるようになっとくのもいいかなと思ってな」


「へぇ 面白れぇ やってみようぜ」



 ルミウスの発案に空気の変わった冒険者一行は、道行く度に現れるモンスター目掛け、入れ替わり立ち替わりメンバーを交替しながら戦闘を繰り返していった。



「マルティナ ナイスブロック! ターヒルは右の1匹を頼む!」


「おい牛チチ! お前は水撒きすぎだ! もっと水量調整できなねぇのかよ!」


〔ダメージを入れるにはある程度の水量は必要なのよっ それよりもちょこまか動かれると水が当てづらいわ〕


「俺は臨機応変に立ち回ってるだけだ! 水打つだけなんだからおめぇが合わせろ!」


「はいはい喧嘩しないのー アネットが後ろから2匹来るってよー」


「奇襲なら俺に任せな」



 戦闘が得意分野の彼等は自分のスキルを活かす事に血が騒ぐのか、みんな前のめりに戦いを繰り広げていく。ぎこちない部分もあるけれど、それぞれが互いの持ち味を理解して立ち回ろうと試行錯誤している事が感情の移ろいから見えた。


 例えは奇襲が得意なターヒルはマルティナが戦っている隙の部分を補うよう立ち回り、間が生まれた部分をエデルが強力な一撃で埋めると言った風に。


 逆に猪突猛進気味なユシュタファが後方から適宜必要な装備に持ち替えて臨機応変に対応したりと、それなりに戦闘行為を日常化している彼等は、扱う道具が違ってもきちんと調理できる腕前を養っていたようだ。


 順調にさばけているこの結果に手応えを感じていき、士気も高まって危なげなくモンスターを倒していく。これも一重に成長の成せる技だろう。



「おい ロダリオっつったっけ? お前も混ざれよ その剣は飾りじゃないんだろ?」


「当たり前だっ ウィンスター流を愚弄してくれるなよっ」



 発破を掛けられたロダリオは、ユシュタファに促されるまま戦闘に加わっていった。目の前で繰り広げられる冒険者達の勇壮に、堪えていたものがその一言で爆発したみたいだ。



「ちょっと! 戦いに夢中になってないで私を側で守りなさいよ!」


「大丈夫 僕がいるので・・・」


「はぁ~? 頼りないわねっ」



 面と向かって言われるとしょんぼりする。やっぱり見た目なんだろうか。皆が活躍しているのを目の当たりにしていると「僕も何かやらなくちゃ」と言う気持ちにせっつかれて焦る。けれど誰かが護衛対象を護衛しなくちゃならない。


 そんな焦りを覚えたのは僕だけではなく、隣で佇むルディアも同じなようで、スキルを駆使して活躍する皆の姿に焦燥感を駆られたようだ。


 戦闘も終わり満足気に戻ってくる彼等に対して彼女のイライラは終に爆発してしまった。



「ちょっと! 私を蔑ろにしてなに勝手な行動してるのよ! 主役は私なのよ!」


「はぁ~!? 勝手ってなぁ こっちは戦闘してんだよ それとも何か? テメェの指示があるまで動くなってか? 初動が遅けりゃ囲まれるかもしんねぇダンジョンでか? ふざけんじゃねぇぞ」


「ルディア様 さすがにそれは・・・」


「な 何よ ロダリオまで・・・貴方は私の従者でしょう! 少しは主を立てなさいよ!」


「・・・・・」


「そもそも 目の見えない人間が近くにいたって盾変りにもならないじゃないっ」


「ちょっとアンタ! アネットを盾呼ばわりしないでよっ!」


「なぁ この中で音の変化に一番敏感なのはアネットなんだよ それは敵が近付いて来た時 真っ先に動けるって事なんだ つまりアネットの近くにいりゃ危険から逃げやすいって意味でもあるんだぜ?」


「し 知らないわよっ そんな事・・・」


〔分からないなら学べばいいわ 先ずは自分にできる事とできない事を把握するの できる事は伸ばしてできない事は学ぶ 知れば人が何故そう動いてるのかも理解できるわ〕


「上から目線で偉そうにしないでっ! ・・・そもそも私のスキルさんを見付けられないのが問題じゃない! こんな場所をグルグル回ってたって意味がないのよ! 下層・・・そう下層へ行くわよ! そこにならきっと私の為のスキルさんが待っている筈だわ!」


「こんな空気でよく下行こうなんて言えるなお前」


「お金を出してるのは私よ! 雇い主の言う事聞くのは当然じゃない!」


「・・・はぁ まぁいいぜ そこまで言うなら行こうじゃねぇか」

「え マジ?」

「大丈夫なのかよ」

「ま 俺達ってダンジョンとは切り離せない職業だし 腕試しって事でいいんじゃね?」


「此方も問題ないぜ ・・・別の意味で問題はあるけど これも冒険者の宿命だしな」


「皆が行くなら私もそれで構わないわ 仕事だし・・・」



 ユシュタファにはちょっと含むところがあったけど、他の皆もおおむね同意したみたいだし僕もそれで構わない。と言うより途中で仕事を投げ出す方が「冒険者としてどうか」と言う思いが強い。ここはまだ命の危険も低い階層だしね。


 またまた微妙な空気になった僕達だけど表層1階から2階へ黙々と下りていった。


 ここの階は1階に比べて敵も若干強くなる。身体的にと言うよりは知能をつけると言う意味で厄介度合いが増す。


 まぁそれでも装備を充実させ、連携もとれて経験も積んだ僕達の敵ではないのだけども。それでも2階以降下りるつもりはない。


 何故なら3階には大きな障害が待ち受けてるからだ。誘因剤を持ち込んでただろう人達が捕まった事で、ダンジョンにも平和? が訪れた筈だから、彼の気も治まった筈だけど・・・


 けど、そんな思いは見事に裏切られ、杞憂のまま終わってはくれなかった。



「いよぉ 待ってたぜ」



 以前は表層3階で薬物使用者を狩っていた筈のウォルガルが、何故か2階で僕達を待ち構えていた。





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