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344・ギルドの頼まれ事

前回のあらすじ


あの日ギルドにやって来たアネットはポリアンナにギルド長の部屋に行くよう促される。入った部屋には何故かルディア・ルンドレンが居り、自分のスキルさん探しを手伝えと言ってきた。

 何でこんな事になったのか。僕がホールに戻る前の部屋でのやり取りを思い出した。


 実はあの後、ルディアさんは書類上の手続きをするため部屋に残る事になったのだけど、僕が帰ろうとした矢先「従者は側にいるものよ」と、いつの間にやら付き人認定された僕は、権力と言う名の鎖で繋がれる事になってしまった。


 どうやら彼女の言う「お手伝い」は、この瞬間から始まっていたらしい。


 その後、正式な契約と言う事でランドルフさんの部屋には3人の人達が訪れた。1人は町の管理者である町長のデュダルさん。もう1人は町の商会を支配したと言っても過言ではないカストラ商会の商会長バードラットさん。そしてギルドからはランドルフさんと、何故かコルトアが出席している。



「・・・あなた方なら立場上納得できるのだけど どうしてマイナス等級が同席してるのかしら」


「そやつは気にせんでくれ ちと知人から頼まれての しばらくギルドで預かる事にしたんじゃ 何せ個人的な要件じゃからな 職員に押し付ける訳にもいかん まぁ(めしい)が1人増えたところで問題なかろう?」


「まぁいいわ でも もう少し可愛気があれば置物としても見れるでしょうに 貧相な顔立ち 庶民感が漂ってますわね」



 確かコルトアも彼女と同じ学園に通ってた筈。でも人も多ければ全員の顔を覚えてるとは限らない。少なくとも部屋に入ってきた時からささくれてたコルトアは、彼女の性格を知っていたのだろう。


 既に心が磨耗している・・・



「それで? 私は書類にサインすれば良いのかしら」


「はい ではこれとこれと あとこれ それからこれも・・・」


「・・・結構あるのね」


「本来であればご当主様本人が契約されるのが通例なのですが 今回はルディア様に委任されると言う事ですので 手続き上の書類が多数含まれているのです それとこれも歴とした契約になります 熟読した上でサインなさいませ」


「分かっているわ」



 他人に対して高飛車なところはあるけれど、こと契約となると彼女は真剣だ。書類に記載されてる事を随時アドバイザー役のバードラットさんに聞いている。


 なる程。彼はそう言う立ち位置に収まった訳か。


 書類にサインし終わった後は質疑応答の時間となった。まぁ言ってみれば注意事項みたいなものだけど。内訳として権力で諸々私物化しないとか、トラブルを起こさない持ち込まないとか、ダンジョンから規定以上の鉱物を持ち出さないとか。


 まぁハルメリーで波風たてない為の基本だよね。



「もちろん誓うわ」



 なんて即答してたけどその心、笑ってるね。うん。誓う? 残念ながらそんな事微塵も思ってない。彼女の答えを聞いたコルトアも、声色と内面とのギャップに辟易としていた。


 チラリと彼の様子を窺ったランドルフさんも、何かしらのジェスチャーがあったのか似たような色をしている。コルトアが同席した理由はこれか。権力の権化たる彼女の真意を確かめたかったのだろう。


 でもこの場で1つ良い事があるとすれば、コルトアは確実に成長している点。ランドルフさんの晴眼は間違っていなかった訳だ。



「ところでここに根を下ろすとなると 住まいはどうするのじゃ? 貴族街に屋敷を持つのかの」


「いいえ そこまで考えてはいないわ まだ生徒の身ですもの まぁ先々の事は卒業してからね」


「ルディア様がご卒業されるまで当面の間は 私の方でお住まいを提供させていただく事になっております スプリントノーゼとは勝手の違う部分も多々御座いますので そこら辺りのサポートもカストラ商会が請け負うと言う形で」


「そうじゃな とは言えダンジョンに関しては冒険者こそ経験豊富 もし貴殿がダンジョン関連でお困りのようなら ギルドから人員を貸し出してもよいぞ?」


「まあ素晴らしい あなた方の先見性がこの町をダンジョン街として成功たらしめてきたのね」








 何て事があった訳だけど。一言で言えば監視だよね。町の掟とか暗黙のルールとか、そう言ったものことごとくを踏んで歩きそうな気がするし。


 なので僕としても彼女が暴走しないように立ち回らないといけない。ランドルフさんが僕を付けたのもそう言う意図があるからだろう。


 とは言えそんな事、表だって言える訳ないんだよね・・・



「ごめんねミストリア これもギルドのお仕事だから」


「そう言う事よ 聞き分けてちょうだい」


〔・・・私も付いてくわ〕


「はぁ? いらないわよ貴女なんか」


〔ギルドの仕事なのでしょう? なら冒険者が立候補しても問題ないのではないかしら〕


「下らない そんな理屈とお・・・ いぇ・・・ いいわ 同行を認めましょう 自ら進んで志願するだなんて なんて献身的な方なのかしら よろしくねミストリアさん」


〔よろしく ルディアさん〕


「ダメよ言葉遣いがなってないわ 私は貴族なの ()()()ミストリアさん 敬称には 様を 付けなくちゃ」


〔・・・ル ルディア・・様〕


「はい良くできました」



 何だろう彼女のこの心模様は。至福と高揚と充足感に満たされながら、支配欲と憐愍の情に少量の罪悪感を混ぜ合わせたような色してる。


 前途多難だ。今から苦悩する未来しか見えない。



「そ それでルディア 様 スキルさん探しと言う事だけど 具体的にはどんなスキルさんを求めてるの?」


「あら 貴方はそんなに畏まらなくてもいいのよ? 共に苦難を乗り越えた仲でしょう? 今まで通り いいえ 親しみを込めて ル ディ ア って呼んでちょうだい」


「ル ルディ・・ア」


「ウフフ なぁに? アネット」



 まるでミストリアに見せ付けるように振る舞うルディアは、そもそもが他者を見下す事に余念がない。通り過ぎる全ての人に対して自意識を過剰に振り撒いて悦にいっている。


 もうこの時点で周囲に溶け込む意思はないのだろう。とてもじゃないけどここで上手くやってく事は不可能だ。それどころか敵しか生まない気がする。



「取り敢えず外に行きましょう 折角別の町に来たのだもの 先ずは散策から始めるわよ」



 そう言うとお目当てのスキルさん探しは後でもよいのか、僕達を連れて強引に街へと繰り出した。


 彼女の事だから自分の育ったスプリントノーゼと比較してあれこれ罵詈雑言の嵐と思ったけど、意外と純粋に楽しんでるようで、こうしていると普通の女の子が休日に町歩きを満喫しているように思える。


 相手が何者であるかは別として、僕的にも自分の育った町を気に入ってもらえたのは素直に嬉しい。もっとも会話の節々でミストリアを突付かなければ・・・だけど。



「何か閉まってる店が多いわね 不景気なのかしら」


「この前の薬物騒ぎで色々あって 商人達にも波及しててそれで・・・」


「ああ そう言えばそうだっけ」


〔誰かさんの出資で暴走した商人達が 慣れないものに手を出したせいでもあるのよね〕


「それは個人のレベルの話でしょう? 犯罪に手を染めた連中も含めて その取り締まりも録にできなかった領地の質の問題じゃないかしら」


〔そうね でも隣の街ほど汚れていないと自負しているわ 私も一度行った事があるけれど あの街の 他人を出し抜こうとするギラついた目はとても印象的でしたもの〕


「それこそ そんな輩を取り纏めてる私達の手腕よね」


〔ものは言い様とはこの事ね 悪行を束ねても自慢にはならないわよ〕


「力は正義って言ってちょうだい」


「ふ 2人とも こんな場所で言い合ってないで ほら あの店なら人の出入りもあるし 折角だから行ってみようよっ」



 本来楽しい筈の町の散策ってこんな刺々しかったっけ。2人の間に挟まれてる訳ではないけども、矢面に立たされてるみたいに心が痛い。


 入ったお店は洋服屋さんのようで客の入りもそこそこあった。高級嗜好なのか僕達が普段行くようなお店とは違った香りがする。その中においてもルディアは人目を引くみたいで、お金の臭いを嗅ぎ付けた店員の人が即行ですり寄ってきた。



「ようこそおいで下さいました 本日はどの様なお召し物をお探しに?」


「別にないわ この町に来たばかりだし ちょっと寄ってみただけよ」


「左様で御座いましたか お客様のような見目麗しい方のご来店ともなれば この店にとっても誉れ さぞ高貴な家のお生まれなのでしょう」


「うふふ 口だけは達者ね まあルンドレン家ともなれば この町にも周知されているでしょうけどね」


「おおっ! 大量のモンスターの討伐に貢献し ハルメリーの膿を取り除いて下さったあのルンドレン伯爵家の方でしたかっ この度はあなた様方のお陰で真っ当に商売している者達の どれ程の救いになった事か」


「それ程の事でもなくはないわ 上に立つ者として当然の義務を果たしただけよ」


「ささ 此方へお掛けを 今回は当店自慢の逸品をご用意させていただきます」


「当然ね 私に相応しい品を用意なさい」


「ははー 今まで誰も見合わなかった至極の品々 貴女様ならさぞ栄える事でしょう」


「気に入ったら贔屓にしてあげてもいいわよ? ハルメリーのダンジョン権を得たからこの町との繋がりもできた訳だし」


「何と それは目出度いですな ルンドレン家の方が来て下されば ハルメリーも益々の繁栄を遂げるでしょう」


「当たり前じゃない 数々の功績もこの私 ルディア・ルンドレンの活躍があったからこそ 私が来たからにはハルメリーの躍進は約束されたも同然なのよ」


「素晴らしい 今日はこの町にとって記念日になりますなっ」


「その通りね オホホホホ」

「ワハハハハ」



 何を見せられているんだろう。ルディアの高飛車度合いがうなぎ登りだ。店の人も店の人で気に入られようと一所懸命に持ち上げている。表面上はとても気さくなんだけど中身が伴ってない彼を見てると、僕に商人は務まらない事だけは理解できた。





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