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339・イザルスの決意

前回のあらすじ


ギルドに連れてこられたアネット達を前に、今後どうするかを議論する職員達。その渦中の中ミストリアが1つの案を提示した。それは囚われのイザルス達の手を借りると言うもの。しかしランドルフの一声でその作戦は決行する運びとなった。

「おはよう」

『はよー』


「アネット・・・おはよう」


「・・・だ 大丈夫?」


「ああ 何とか・・・な」



 僕達は今、町中の門の前で偶然出会いましたの体で話してる。昨日ギルドと騎士団とで話が纏まった事でイザルス達は解放される運びとなった。


 とは言え、それまでに掛かった時間はお世辞にも早いとは言えず、これは予想だけど帰宅が遅れた事でイザルス達は犯人の1人であるご家族にこっ酷く怒鳴られたのかもしれない。これから作戦結構だと言うのに心に覇気がなかった。



「ごめんね こんな事頼んじゃって」


「いいさ 俺も覚悟決めたからな」



 精神的に疲れてるイザルスだけど心の奥底には小さくても眩い光が灯ってる。彼等の今後の為にも完遂しなくちゃいけないね。作戦決行までは少し時間的に余裕もあるので、手筈を始め諸々の会話をしながら暇を潰した。



「それじゃ お願いね」


「ああ 撒かせとけ」



 イザルス達を見送って僕は今回行動する仲間達と合流する。作戦の主軸となるのは森の主人公狩人達。その中でも追跡に特化した人物に依頼をお願いした。



「アネットー エヘヘー!」


「カルメン 今日はよろしくね」


「ちょっと 何でいちいちアネットに抱き付くのよ! 離れなさいっ!」


「やでーす!」



 カルメンは狩人としてのお手本を自分の母親に見ていたけど、1つスキル構成において独自の路線に舵を切ったそうな。それは追跡能力。


 多くの狩人はスキルさんを空高く舞い上げ、上空から広域をサーチする方法で獲物を見付ける。これが現在の狩人のセオリーだ。


 しかしカルメンは「そのやり方だと相手に自分の位置バレちゃうよねー」と思い至ったらしく、追跡するスキルさんを周囲の背景に溶け込ませる「模倣」と言う手段を会得した・・・と、今回の作戦に推した人物でもある彼女の母親ミスティラさんから聞かされた。



「もちろん上からでも探せるけどー ダンジョンだと無理じゃない?」


「すまないね 公私混同は良くないけど この子には経験を積ませたいんだ 狩人の獲物は動物だけじゃない 同業者って事もある」


「いえ カルメンも色々考えてるみたいで安心しました」


「私に任せてねアネットー」


「気ぃ抜くんじゃないよ 狩るだけが狩人のスキルじゃないんだ 相手も捜索のプロなんだからね」


「分かってるよー!」


「しかし騎士団まで動くとは思わなかったよ あの鎧みたくケツも重いと思ってた」


〔指揮者の英断でしょう 号令を出す人間で組織の色は変わるものですわ〕


「尾行はウチの子がするとして 私等は後から追跡と聞いてるんだけど その後はどうすんだい?」


「はい ギルドが伝書で各員に伝達して 一気に強襲をかける予定だそうです その為にも相手側の人数は正確でなくても知っときたいと」


「これから捕り物ってのに 集まった連中が私等だけってのは相手方に動きを悟らせない為かい? 徹底してるね で・・・あんた等もそれに参加すると」


「はい 僕とミストリアのスキルは役立つかもと 無理やり作戦に組み込まれました」


「ふ~ん マルティナはー?」


「わ 私はアネット達の護衛よ!」



 アジトと人数と場所はどれも未知数だけど、イザルス達とコンタクトをとっている人達の情報は各員に共有されている。人数は日によって5から10人。荷台にモンスターを乗せて森までやって来る。


 会話らしい会話もなく淡々と引き継ぎが行われ、言葉もなくゾロゾロと帰っていく。構成員も冒険者がパーティーを組むのと同じ様に前衛と後衛に斥候と言う案配だそうだ。


 門番の話も擦り合わせるとモンスターを運び込んでるワーカーは他にも数組あるらしく、想定される組織の規模は薬の製造者も含めると100人はいるんじゃないかと予想された。


 流石にこの規模の戦闘経験はない。いくら役立ちそうだからと僕等が混じって大丈夫なのか・・・



「ねー そろそろ行こー ちょっと距離離れちゃってるよー」


「うん そうだね」



 イザルス達の後を追うのは僕とミストリアとマルティナ。それと追跡役のカルメンにお目付け役のミスティラさん。それからギルドの伝達鳩を飛ばす職員が1人の構成だ。


 門前の広場には人が疎らでも、此方を注視する感情が建物の節々からちょくちょく顔を覗かせる。突入組も準備は万端なのだろう。


 僕達は「これから狩りしてきます」の風体を装いながら先行の足取りを辿った。



〔イザルス達元気なかったけど 遅くなった事をどやされたのかしら〕


「それもあるだろうけど 家族との決別でもあるからね 心が患わない訳がないと思う」


「自分をとるか家族である事を選ぶかの違いさね 残酷だけど病気や怪我した個体は群れから外される でもそれが自然なのさ」


「でもさー 人はそれを助ける知恵があるじゃん 優しくしてあげれば良いのに」


「知恵は知恵であって 感情とは別だよ 周りの大人達が自分の面倒を見るのが当たり前と思わないこったね だから自分の足で立って歩く術を身に付けなきゃいけないのさ」


「出発するまでの間 彼とちょっと話をしたんですけど 妾腹の子 なんだそうです 自分は労働力以外望まれていないんだって言ってました」


「ひっどー!」


「覚悟を決めたと言ってたけど これからの事を考えると心配になります」


「・・・大丈夫よアネット! 戦士さんが強くするのは体だけじゃないわ 立ち向かう気持ちが私達とスキルさんを繋げるの! 家族と向き合うのだって同じ勇気よ」


「・・・うん そうだね」



 きちんと決断ができる人間が弱い訳ないか。その選択は新たな道を進む一歩なんだしね。勇気がその道を選ばせたなら心配より応援した方が良いだろう。


 状況は森へと移り変わり、ここから無駄口は厳禁。風の流れに注意を払いつつモンスターとの戦闘も、これを避けなければならない。


 とは言え、森と言っても藪に覆われた場所での受け渡しではない。何せモンスターを積んだ台車であるのだから、人為的に慣らされた道端でのやり取りとなる。


 が、僕達は相手方に見付かる訳にはいかず泣く泣く藪を掻き分ける事となった。頭上の木々が相手方の“狩人さん”のカモフラージュになるもので・・・



「接触したみたいだよー」



 カルメンの“狩人さん”はそんな森の中を縫うようにイザルス達を尾行しているのだそう。どの程度距離が離れてるのかは分からないけど、少なくとも僕の目に色付く箇所は見当たらない。


 きっと木々を超えた更に向こう側でそれは行われているのだろう。僕の知るカルメンからは想像できない能力だ。この子も日々成長してるらしい。良い事だ。



「1羽目の伝書を飛ばしな」


「了解」



 職員の人は言われて伝書を鳥の形で羽ばたかせた。そしてもう1羽を作ると木の枝にとまらせる。



「俺の伝書は対でね 互いに位置を追跡できるんだ」


「ここからは慎重にいくよ 相手は警戒を密にするだろうからね カルメン 分かってるね」


「うん 音に紛れる 自然と同化する 付かず離れず だよね」



 狩人の掟にしたがって前進を続ける僕達。中間地点を経て方向は更に森の中へと進路を変えた。そんな悪路を荷台を引いての移動は不可能だろうから、道の近くに荷台を隠しそこまで担いでモンスターを運ぶのだろうと予測する。


 その予想は正しいようで、明らか道など存在しない森の奥へと僕達は誘われた。アジトは森の中に設えているらしい。スプリントノーゼまで歩かずに済んでよかった。



「あ 洞窟みたいなとこ入ってった」


「気取られるんじゃないよ 誘引剤はモンスターを呼び寄せる効能がある でもこの辺りでモンスターが蔓延ったなんて話はウチ等の間でも聞かないからね つまり内部はかなり綿密に管理されてる筈だ」


「外に見張りはいないみたい 中・・・入ってみるね」



 “狩人さん”越しに景色を捉えてるのか、内部の状況報告が始まる。僕達はまだ森の中だと言うのに、あたかもその場にいるような感覚で話すものだから、目の見えない僕はカルメンの言葉1つで彼女の世界に埋没させられる。



「わっ 凄っ 中は人の手が入ってる感じ 扉があって・・・部屋もあるよ 粗削りな手作業感でてるけど へぇ~ 結構広そうかも」


「人はどの程度いるんだい?」


「入り口から入って通路があって 右側に部屋があって そこまでで大体10人かなぁ 追い掛けた人達だねー 奥に行くみたい」



 カルメンの話だとそこからどんどん奥に続き、途中に幾つもの部家が作られてるとの事。用途別に拵えたらしい部屋には、簡素ながら調理場や食堂、果ては寝室まであるらしい。


 本丸は更に奥で、厳重に閉じられた扉の先からチラリと見えたそこには、彼女達にとって見覚えのある解体所と、薬を調合してそうな器具類があちこち置かれていたそうだ。



「アーキア人の人も何人かいたね 後はここで普通に生活してるみたい 調べてみた感じ寝室は3部屋あって 多分だけどここで生活してる人と外で動いてる人とで住み分けられてる感じかなー 全体でだけど 今いるだけでも30人はいると思う」


「なる程 交代制で動いてる訳かい」


「確かに モンスターを見付けて狩って ここまで運んで処置して荷台までだなんて 1グループじゃ無理ですもんね」


「一網打尽は無理そうだね・・・さてどうするか 取り敢えず伝書で今の状況を伝えとくれ」





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